豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 宮部みゆき「孤宿の人」

孤宿の人 上孤宿の人 下去年のベストセラー本である。んが、例によって図書館予約待ちをすると、だいぶ待たされてやっと読了。宮部さんが書きだす「子ども」には定評があるらしいのだが、この小説に出てくる「ほう」という幼い少女のけな気さ、いじらしさときたらどうだ。天涯孤独の「ほう」は江戸から流されるようにして四国の丸海藩へ、つまり本書の舞台となる讃岐国の小藩に身を寄せることになり、彼女の生い立ちと丸海での新しい生活が淡々と、しかし滋味豊かに語られてゆく。タイトルロールである「孤宿の人」とは、丸海藩へお預かりとなった罪人であり、勘定奉行まで務めた幕府の高官という経歴を持つ、通称「加賀どの」のことなのだが、この人が下巻の途中まで全く登場しない。しかし、加賀どのが幽閉されている屋敷に、紆余曲折を経てほうが奉公に上がることになり、二人が実際に出会ってしまうと、ああ、これまでの長〜い前振りはすべてこの二人を会わせる為だったのだなぁと、妙に納得してしまったのだった。この「孤宿の人」は説明しにくい小説だ。ジャンルとしては「時代小説」に入るのだろうが、やはりこの、まっとうに誠実に真摯に、なにより地道に生きてゆくことの肯定、無償の心の宝石のような輝き、人の愚かしさ、屈折、温かさの描写、ラストの哀切ながらも爽やかな読後感は、宮部作品ならではの味わいという気がする。宮部原作小説はよく映像化されるので、これも是非映像化して欲しいけれど、役者がぱっと思いつきそうで思いつかない。最近邦ドラ見てないからなぁ。とりあえず、加賀どのは中井貴一あたりか?丸海藩というのはもちろん架空の藩であるが、モデルは香川の丸亀とか。そのせいか、ほうが見下ろす瀬戸内海の描写が、私には懐かしいものであった(といっても、あんなに雷は落ちないが)。


全然関係のないことだが。

私は小さい子どもと目が合うと、なぜかにこっとしてしまうことが多い。それを傍で見たらしい友人から「子ども好きなのね」と言われた。

いやぃゃ、全然そうぢゃないんだよ。
なんというか、一種の郷愁というやつなのですよ。
無知なもの、無力なもの、無垢なもの(あくまで外見の話)に対する、個人的感傷にすぎない。
幼いものは、ただ幼いというそのことだけで、未来への無限の可能性を感じるせいかもしれないね。