豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2006年11月号プリンセス連載分雑感

月刊 プリンセス 2006年 11月号 [雑誌]■今月ネタバレあらすじ
東方のインダスから太子来訪との知らせを受け、メンフィス王と王妃を乗せた御座舟は大緑海を急ぎ南下。海上ですれ違ったカナンの商船も、噂に高いナイルの姫とエジプト王の姿を思いがけず目にして驚きを隠さない。キャロルの体調は回復しつつあったが、太子が自分を名指しして面会を求めていると聞かされては心急き、何とか王宮に帰りつくまでには歩けるようにならなければと起き出して、周囲を慌てさせるのだった。キャロルの身を案じるメンフィスは、ミノア海域で囁かれている怪魚の噂が妃の耳に入らないようにと、ミヌーエ将軍に緘口令を命じる。

その頃、エジプト王宮門前にインダス国の太子が到着していた。太子は王弟ネバメンはじめ宰相以下エジプト政府首脳から歓迎の挨拶受け、国王夫妻が帰国するまで王宮に滞在するよう要請される。このとき、調子づいたネバメンが王妃拉致事件について口を滑らせ、イムホテップがその場を取り繕って事なきを得るが、このことは宰相の王弟に対する不信感を改めて呼び起こすのだった。一方、太子は想定外の「王弟」の存在に疑問と違和感を抱き、部下に更なる情報収集を命じる。
翌日、ネバメンの命で太子歓迎の宴が開かれることになり、宮殿は準備でざわめき立っている。そこへナイル河から時ならぬ歓声が沸き起こった。
みるみるうちに近づく船影、舳先に立つ人物を見て、ネバメンは驚く――
王と王妃を乗せた早舟が到着したのだ!


⇒来月号休載につき、この続きは1月号で。




■今月のお言葉

「うわわっキャロル!
 お おい 病気がぶり返したらどうする 寝てろ」

*1



■例によってだらだら。
辞める辞めたい辞めるときと呟きながら、店頭でぴらっと開けたら「ハエ―――!!も もう帰ってきやがった!」なネバショットだったため、仰け反るワタシ。で、結局購入。
やっぱ「王家の紋章」は面白いワ。いろんな意味で。
世に名作傑作マンガは沢山あれど、やはり私がついつい王家を読み続けてしまうのは、「余人を持って換えがたきこの細川ワールド」が好きだからということに尽きるのである。
こんなレトロな絵、こんなトンチキ展開、こんな力技進行、こんな大ボケ仇役、こんな読後脱力マンガ、他にあるか!?
おおジュテーム、君を愛さずにいられない。。。。。
そしてこの道は地獄へ続くのである。あ、よいよいよいやさっとアホレホレ(壊れ中)。



30周年祝賀関連なのか、最近エジプト陣営の秘密兵器が披露されてるのが気になるのである。先月号ではエジプト軍伝書鳩部隊の存在が明らかになり、今月号では、「王の早舟」がお披露目された。早舟と御座舟のどこが違うかというと、まずは大きさ。次に帆の有無。要は早舟というのは、ひたすら兵士にオールで漕がせるボートに見えるんだが、それにしたって、大型船でもツロからガザまで数日かかっているのに(カレンダーめくるみたいに白い紙がコマ間を飛んでることから推測してみた)、一体どこで早舟に乗り換えたら下エジプトから一日でテーベに着くんだよ?(宰相も寝耳に水のご帰還って、鳩はもうクビですか?)6巻でルカがテーベから下エジプトへ船で下ったときでも一晩はかかってたはずだが、あれは帆を張ってたし、サイズも二人乗り。どうみたってあの早舟は15人は乗ってる。どんなエンジン搭載しとるんじゃ。
んでもまぁ、3000年の時空を軽々超える世界だし、高々数百キロワープの謎を云々してもはじまるまい。ハァ?と思っちゃったのは、あまりに唐突なご披露だったせいですな。
唐突といえば、太子のお名前が明かされていた。シンドゥ太子と申されるそうな。
確か、インドの古名ですな、シンド。(「アルスラーン戦記」でインドがモデルのシンドゥラという国が出てきたはず。ラジェンドラ王子とかショラ・セーナニーとか…今ふと思い出した)。
あぁ、ほんとこの先シンドゥラでモヘンジョダロハラッパー展開が待ってたらどうしてくれよう。



さて、本題に入ろう。
先月もちらと書いたが、なにゆえネバはあそこまでコケにされなければならんのか、について。
前々から私には腹立たしい点ではあるのだが、今月のは特に酷かった。何せ、エジプト留守部隊としては、王妃様は先日王宮内に侵入した敵兵に拉致されまして、ただいま王が捜しに行ってましてなワハハハ…とは王国の体面上口が裂けても太子に釈明できないものだから、イムホテップがそれとなく誤魔化していたのに、王弟ごっこに夢中になったネバがペラペラそのへんを吹聴しはじめちゃうのである(ペラペラ手書き効果音つき!)。で、またここでイムホテップが話の腰を折って入り、ムッとしたネバも我に返ってやべぇと青ざめるという展開。インダスの太子が優男なのを見て取るや軽く見、ボロボロとボロ出しまくり。ネコもかぶれないらしい。
また、ネバのこういうセリフもある。
「おれの言葉、命令ひとつであの大臣たちや……召使たちがみんな動く。たまらなくいい気分だぜ」


おいこら、ネバ、そこ座れっ!!(とワタシは吼えるのである)
お前の価値判断基準は、相手がマッチョかどうかだけかい!!!
そのくせ政治を子どもの遊びくらいにしか考えてないのに、周囲が偶々マヌケぞろいだったからボロを暴かれずにきただけやったんかい!!
ちょいとは頭が回るのかと思ったが、行き当たりばったりのアホ極まりなし!!
つまり、お前はタダ飯喰って人をアゴで使いたかっただけか!!
なんて陳腐な悪役!!


だってネバメンだからさぁ…ブサイクだからしょうがない〜で流すにはワタシはどうもひねくれすぎているらしい。
出来レースにしたって、出来が悪すぎる。
確かに、見た目も、言動も判りやすい≪悪≫ではある。単純ゆえに面白いともいえる。でも私は少しも笑えない。王家のこういう極端な善悪二分論的世界観は、どうしても好きになれない。
はっきりいって不気味だ。それはきっと、敵役に注がれる作者の視線の冷ややかさがうすら寒いからだ。そして善にあたる主役キャラは、たいてい賛美者に囲まれて自己完結してる描かれ方をする点も怖い。私が今まで読んだ細川マンガのなかで、多少なりと共感できた敵役はたぶん「伯爵令嬢」のアンナだけだ。アンナは狂気じみたルサンチマンの持ち主だったが、その奥底に母への思慕を秘めていたことはちゃんと描かれていたし、だからこそコリンヌはアンナの妄執の根っこ“寂しさ”があったことは理解したはずだ(アンナを赦すことは絶対にないとしても)。アンナが伯爵邸に忍び入って、故マドレーヌ夫人の肖像画の前で幻影に怯えて自白するシーンは、中学生だった私にも強烈な印象を残したものだ。アンナは怪物ではない。心弱い、私たちのひとりなのだと。


今の王家には、ああいうふうに悪役の切なさを通して物語を語ろうという姿勢が皆無なんじゃないだろうか?
単に見た目も悪い人が悪ぶって騒いでバカを晒すだけで、善側は何の痛痒もなくラブラブ満喫。二者の間にはろくな対話もなく、必然的に読者の心に理解しようという気持ちも共感も呼び起こさない。善と悪はどこまでも異種であり、排斥しあう。索漠たる断絶があるだけ。
はて、こんなとこにも格差社会が出現か??
アイシスやイズミルの「切なさ」は、作中で切ないキャラたるべく、「描かれた切なさ」でしかないような気がする(わかりにくい文章だ)。つまり、二人はおお姫〜とかああ弟〜とか言って夜空とか見上げてりゃ絵になる美人なので、その絵のためだけに生かされているんじゃないか?と私は感じるわけだ。まさに不幸デフォキャラ。創造神様にとって彼らが不幸から抜け出すことが予定されていないとしたら、彼らが相手と腹を割って対話する新展開もありえない。中身のある対話が許されないから、彼らは自己弁護と、自己憐憫と、被害者感情を一方的に撒き散らすだけのキャラに終わり、そのくせお無責任な取り巻きが追従するから更に強調された不幸感で自家中毒になる。最近では二人の切なさを強調すればするほど、不条理展開になってゆく気がする。
彼らはもう陳腐ですらない。道化だ。
だから見ているのが辛いのよ。


来月号オマケ、イズミル王子とキャロルとメンフィスの絵が入ったクリアファイルなんぞで読者を釣るヒマがあるのなら、王家の愛とやらで物語を終わらせてくれませんかね。
このさき、すっきりしたりりしい美形のシンドゥ太子が悪役豹変してくれると面白いなとか、寝言をほざいてみるのだが、たぶんあの方もキャロルに惚れてメタメタになってゆくのだろなぁ。



最後に、今月告知されていたニュースに驚いたのでつけたし。
青池保子さんが、中断していた「アルカサル―王城―」の完結編を来年早々描かれるそうである。おおっついに!と嬉しくなってしまった。まぁ、たぶんドン・ペドロもエンリケもずいぶん馬面になるだろうなぁとは思うが、あのシリーズをきっちりと終わらせてくれるんだと思うと感激もひとしお。何年ブランクあったんだっけ…10年は空いてるか。待ってた甲斐があったというものだ。ついでに、復活といえば、冬木るりかさんの「アリーズ」が再開されるそうである。え“え”え“マジですか?これまた15年は経ってないか?しかも終わってたはずだけど(最終回読んだおぼえあるんだが)。予告カットを見るかぎり、ハデスもベルセフォネーもポセイドンも全然別人だったのに年月を感じる。

プリンセス系のスパンは、どうも10年20年単位なのかのもしれぬ。だったら、一ヶ月ごとにあーだこーだと一喜一憂してツッコミまくり悲憤慷慨しても仕方が無い。所詮時間軸が違うのね(泣)


アルカサル-王城- (1)

*1:エジプト王メンフィス陛下

「うわわっ」も、「お おい」もアレだが、高貴の御身が「い抜き言葉」を喋らないでください。せめてこれくらい気取ってくださいよ・・・

「なにをするっ!
病がぶりかえしたら何とするぞ、キャロル!
寝ておれというに。おのれ、わたしの命令が聞けぬのかっ!」
くらいでお願いします。
だって、「王家の紋章」でしょう?
ビラビラでキラキラのキャラなら、これくらい大仰なセリフで啖呵切らんでどうするよ。