豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 週刊アスキーにインタビュー記事


先週末、発売されたばかりの「週刊アスキー」(通巻610号)に、なんと細川智栄子&芙〜みん両センセのインタビューが出ていると聞いた私は、速攻買いに走った。


あった!ひゃ〜載ってる!しかも近影つき!
お二人は『進藤晶子の「え、それってどういうこと?」』なるコーナーの第291回ゲストで登場されていた。4ページ、正味3ページ分みっちりのインタビューである。冒頭にインタビュー取材を受けるのはたぶん20年ぶりです、という旨のセンセの回答があるのだが、プリンセス付録につく王家別冊収録の一問一答集は除いて、ということなのだろう。あれは書面回答だしね。上手にお話できないのでずっとお断りしていたんですよ(その後「もうトシですし(笑)」とお茶目な一言あり)、というのを読んで、ああ、なるほどそれでNHKBSのマンガ夜話とか少女マンガ特集とかにも全然登場されないんだなぁと納得したワタシである。キャリア・知名度・人気から考えても、取上げられられないはずがない作家なのに、どうしてなんだろう?とずっと不思議だったのだ。


私は、下手なルポよりインタビュー記事を読むほうが好きだ。
もちろん、インタビュアーの力量が大きく記事の出来を左右することは確かだが、なんとなくやりとりを読んでいると、取材相手はこんな人か〜?と印象くらいは掴むことが出来そうな気がするのである。無論、作家なら作品を読むに越したことはないだろうが、「王家の紋章」の場合、本編が長大なわりに作者の肉声があまり伝えられないので、最終回予想も、謎解きも、キャラ萌え談義にも、ファンフィクションにもとうに飽きてしまった私は、逆にそっち方面にそられるようになっている。要するに作者の語りに飢えているのだ。毎号の連載につく例の「おしゃべりタイム」ウォッチも胸が躍るが、あちらはいちおうファンレターが主なので地雷めいた(?)エリアだし、柱のコメントも私が知りたい方面、つまり創作背景とかの話題にはあまり触れられない。自分は王家ファンなのか、オタク的好奇心で王家の世界を極めたいのか、そのために細川センセたちが気になるのか、我ながらわからなくなってきた。少々危ないかも。あっは〜ん。

インタビュアーの進藤アナも久しぶりに見たけど(このごろめっきり民放のニュース見なくなったので、今どこに出てるのか知りませず…「ニュース23」の後はどこに?)、あとがきによると、何でもお二人は「熱烈なラブコールに応えて取材を受けて下さった」そうである。もしや、進藤さんも王家ファンなのか。いや、きっとそうだろうなぁ。どことなく、全体的なムードがキラキラほわ〜んとしているかんじのインタビューである。でもそれでいて、姉妹の仕事の役割分担がどうなっているかとか、生い立ちや亡き両親の話、マンガの仕事を始めたきっかけ、仕事に対するスタンスや、仕事を長く丁寧に続けるコツは何かなど、きちんと大人の鑑賞に堪えるレベルの内容を聴きだしているところに感心しながら読んだ。プリンセス誌の主催だと、どうしても対象が女子ども(私のことだが)であるせいか、通り一遍等のことしか質問しないから、私が知りたいことは聞いてくれないのだ。それに、姉妹のやりとり、掛け合いの間合いなどを読んでいると、行間から性格の違いや場の雰囲気の変化なども感じられるようで、とても面白い。


今回、いろいろ、ああそうだったんだ〜と思った事は多かった。
例えば、たいそう尊敬していらっしゃるらしい亡きお父様のこと。幼い頃亡くなった父上は、新聞社で報道に携わっていた方だったそうである。だから、「私もその娘として、世の中を正しいほうにいいほうに導こうとしていたわけなのです」と仰るのもなるほどねというかんじである。「もともとは、まっさらで生まれてくる少女に“いいこと”や“悪いこと”を物語の中で選別できるようなお話になればうれしいなと思って描きはじめたんです。道徳的に教え込むのではなくてね」「要するに、本を読んでくださった方が、いいこと悪いことを選別していって、そして人間ってこういうふうにしたほうがいいなとか、こういうことをしたら自分に返ってくるものなんだとか、いろんなことを知ってくださるように。」「私は、やさしさ、愛、思いやり、そして誠実さ、夢を届けたいの。いまの時代は夢がないって言いますけど、それをぜひ読者にも抱いてもらいたいという心願を持っています」とも。
最後の読者へのメッセージは、前に読んだことがある回答とほとんど同じである。ということは、細川ワールドを語るにおいて、思いやりの心・人を愛すること・誠実さは大事なキーワードなのであろう。私は作者のこういう生真面目ともいえる発言を読むたびに、作者のいい意味での永遠の少女らしさ、時代や場所に関係なく少女たち、かつて少女であった女性たちが支持するであろう美徳の持つ力を強く感じるのである。だからこそ、この作者が生み出した「王家の紋章」という物語は時代や地域を越えて揺るぎなく読者に訴えかけるのではないか。心優しく、愛情深く、そして勇敢なヒロイン像(細川マンガの場合、時にオッチョコチョイで、迷惑な存在であったりするが)を譲らなかったからこそ、キャロルはあれほど強く輝き、私を感動させたのだろうと思う(叶うなら過去形でないことを願うが)。

確かに、昨今の王家展開・キャラ造形にはそれってどうよ?と言いたいことは沢山ある。
このへんは私の好みではないかもという点も沢山見えてきた。
もどかしさも、落胆も、憤激も悲哀も味わった。
単行本はとっくに処分して実は一冊も持っていない(胸張り)。
しかし、生まれて初めて夢中になったこの「王家の紋章」というこのマンガ、この物語が、少女の頃の私にくれたあの幸福感を何と引き換えよう。后の位も何にかはせむ、と書いた平安の少女も味わったであろう気持ちを知らずに生きたくはない。現状がどうあろうと、この先どうなろうと、あの思い出だけは、私を裏切らない。私は私のために、この物語を読み、何か感じたらここに書くこともあるだろう。
虚しくても、馬鹿馬鹿しくても、書かずにいられないから。
それ以上でも以下でもない。
今の時代、あまりにも安易に「純愛」が消費されているような気がするが、やさしさや、愛や、思いやりや、誠実さがどれほど壊れやすいか、実現が難しいか、実は女が一番知っているからこそのブームなのかもしれない。リアリストを気取るほうが上等なような馬鹿げた錯覚をして、昔夢見た憧れから必死に目を逸らそうとしている、かつての女の子たちよ。あなたはただ傷つくのが怖いだけじゃないですか。怖い怖いと影に怯えて、ずいぶんと世界を狭くしていないだろうか。
嗚呼。もっと素直な人間になりたい。
長いキャリアにはそれなりの御苦労も、語りえないこともたくさんおありだと思うのだが、今でも愚直なまでに少女の憧れを語り続けようとする姿勢は驚嘆に値する。王家ファンには一読に値する貴重なインタビューだと思う。どこかで見かけたら読んでみて欲しい。そして最後の今後の展開についての智栄子センセの意味深コメント読んで、腰抜かすべし。