豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

第一部  ローマ 出会い編(1巻)

1.留学生活

東京都立若葉高校に通う藤井朝子(一年生)は、画家志望の明朗快活少女だ。
ある日、彼女はローマ交換留学生の一人に選抜される。なんと半年間もローマで学べるという。しかし、朝子の家庭は父の死後、母が女手ひとつで朝子と弟しげる(小学3年生)を養っていることもあり、朝子は留学費用のことで母に負担をかけまいと辞退を考える。だが、話を聞いた母は逆に朝子にローマに行きなさいと励ます。画家だった朝子の父親は、10年前ローマで認められ、その後妻子を呼び寄せようとした矢先に交通事故で死亡していたという。
「朝子 ママはね、あなたをどうしてもローマへ行かせたい!!パパが死ぬまで愛したローマ!ママはパパと同じ画家志望のあなたにローマの町を見てきて欲しい」
母の切ない親心を打ち明けられ、朝子の心もまた決まった。
そして、朝子たち留学生5名はローマへ旅立つ。太陽と歴史と芸術の都ローマへ!!

留学先の聖マリア学園で朝子たちの寮生活がスタートする。
同じく若葉高校からの留学生の中に、山田亜季という少女がいる。美人で家が裕福な彼女は、それを鼻にかけた高慢な性格の持ち主だ。加えて父の会社が朝子の母の勤務先であることから、朝子のことも「使用人の子のくせに」と何かと見下す言動をとる。ローマの学生が何かと朝子に親切なことすら、彼女は気に食わないらしい。留学早々、朝子の荷物から弟が餞別のつもりで忍ばせたカエルが飛び出し寮内は大騒動に。それみたことかと亜季は先頭に立って朝子をいじめる。しかし、そんな亜季も夜遊びで羽目を外し過ぎたか成績悪化。一方、亜季たちの意地悪のせいで学校中から爪弾きにされていた朝子は、一念発起して勉強に専念したことで成績優秀者となり、かえって周囲から見直されるようになる。しかし、これがまた亜季の嫉みを買い、ある日教師から成績のことで叱責を受けた亜季は告げ口をしたわねと逆に朝子を詰るのだった。事実無根の濡れ衣で非難された朝子は、頭にきて思わず「朝子にだってボーイフレンドくらい…」と口走ってしまう。だが亜季は信じない。とうとう、今からトレビの泉で合う約束になっているのなら、そこで会わせろと亜季に迫られ証明せざるをえない事態に陥る。
亜季たちにトレビの泉前まで連れてこられ、追い詰められた朝子は、丁度その場を自動車で通りかかった青年を思わず呼び止める。
「おおアントニオ迎えに来て下さったのねっ!」
驚く運転席の青年に対し、目顔で必死に頼み込んだ朝子はなんとかその場を取り繕って亜季たちの前から逃れる。朝子に恥をかかせる目論見が失敗し、しかもそのボーイフレンドが美青年だったことに悔しがる亜季。
一方、朝子はすぐに車を止めてもらい、詫びて立ち去ろうとする。だが、そのとき青年が朝子の手を取って呼び止めた。わけを教えてくれなきゃ離さないよ笑う彼に優しく促され、さきほどの突飛な行動の理由を説明した朝子だったが、破顔一笑した青年は、改めて彼女にデートを申し込むのだった。
「ぼく作曲家になるため勉強しているジュリオです。今、愛の泉をテーマに作曲しているんです」
「まぁ…。わたし、藤井朝子。日本から来た留学生です」
こうして二人は出会った。
トレビの泉、この泉に後ろ向きにコインを投げ入れると、再びローマを訪れることができるという…ロマンチックな伝説がある。
そして、泉の水に手を触れれば泉の神さまが美しい恋を授けてくださるという…。

伝説の愛の泉の前で出会った朝子とジュリオ。この日は丸一日、ジュリオの案内で朝子は、ローマを見物してまわった。映画「ローマの休日」でヘップバーンが王女になって歩いたスペイン階段。聖アンジェロ城など。
「ミス朝子 今日はきみが王女さまだよ」
二人は互いに好意を抱き、またデートしようねとの約束をして別れたのだった。
幸せそうな朝子の帰還を見て、同室の亜季が暗い嫉妬の目を向けていることもしらず…。


⇒2.ジュリオの秘密 に続く。