豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 「恋ひうた」2巻

【送料無料】恋ひうた(2) [ 江平洋巳 ]
新刊コーナーをのぞいていたら、お!恋うた続きがでてる〜と喜び勇んで買ってしまった。
この表紙のおっさん誰?弾正宮さんってこんなにごつかったかしらん??と不審に思うも、当然別人だった。やはり表紙はイマイチな気がする。後ろに御所車を描けだの花を背負わせろだのは言わないが、もうちっと、こぅ、なんつーか、衣装も含めて華麗さが足らんのではないか。まぁ、この2人は別に親王だの大臣家の姫だのというご大層な身分ではないらしいのだが、せっかく王朝ものですのに。
とはいえ、お話は期待どおり面白かった。
和泉式部が、少女時代からの恋の思い出話を女主人である中宮彰子に請われて語っている、という構成になっているので、時間が過去と現在を行き来する。昔語りが現在に近づくにつれ、今、式部の周りを取り巻いているリアルな政治がらみの生臭い話が絡んできて、なかなか面白くなってきた感じ。
回想編では許子さん(和泉式部の本名)は、女たらしの弾正宮との辛い初恋の思い出を振り切り、見知らぬ男のところへお嫁にいくあたりに入った。そのお相手が表紙のごついおっさん、橘道貞氏である。実直さの下に静かな熱を隠した男性で、ストレートに私好みな展開でございますでへへ。絵に描いたような貴公子に恋をしたかとおもえば、その正反対なおっさんの良さもわかる許子さんがいじらしく、かわいくて宜し。小式部内侍は彼との間にできた娘だったのだね。その他、同時代人(というか同職場か)なので、清少納言や紫式部も登場し、彼女たちと式部のやりとりの対比も面白く、3巻が楽しみになってきた。式部の語りによって、世にもおっとりと無垢に見える彰子中宮が、どんな世界を知り、どういう心情にたどり着くのか、とても興味がある。

和泉式部の歌で私が知っているものといえば、百人一首に入っている

 あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびの逢うこともがな

くらいしかない。ずっと昔に叔母が田辺聖子さんの百人一首エッセイ本
田辺聖子の小倉百人一首 (角川文庫)
をプレゼントしてくれたのがきっかけで、一年間だけ学校の百人一首クラブに入っていたことがある。が、クラブ時間内でも、顧問の老先生が黄昏ているのをいいことに専ら田辺さんの本ばかり読み、カルタはちょこっとしか触らなかったし、試合は2回戦で敗退してしまった不真面目学生だった。
そんな私は「むかし・あけぼの」のラストシーンで、老いた清少納言が流す涙にいつも泣かされている。
むかし・あけぼの―小説枕草子〈上〉 (角川文庫)むかし・あけぼの―小説枕草子〈下〉 (角川文庫)