豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

宝塚:花組「太王四神記」in 東京宝塚劇場


ほぼ一年ぶりに、東京宝塚劇場にて鑑賞。演目は、ヨン様主演で話題になった韓国ドラマ「太王四神記」(参照)である。

公式サイト⇒http://kageki.hankyu.co.jp/taiou/

初めての1階席(かなり後方)ということで、去年から楽しみにしていた舞台である。だいたいひとり鑑賞な私にしては珍しく今回同行者があり、あーさん、べーさん、つぇーさんのお三方と一緒に観た。実を申せば、あーさんのお知り合いのお知り合いのお嬢さんがこの舞台に出ているので(下級生だからまだまだ端役だが)、早めにチケット押さえることができたそうで、回りまわってわたしにまでお声をかけていただいたわけである。あーさんは3回目、べーさんは2回目とヅカ舞台鑑賞暦は比較的浅いが、つぇーさんはずば抜けてヅカ歴長め、ただ生舞台を観るのは2年ぶりということであった。この面子に、3階席で数回観てきた程度のわたしが加わるわけである。

原作ドラマのほうは全く見ていない。いや、1回くらいは見たかもしれない(3回め?ヨン様初登場の回だったと思う。謀反人叔母の断末魔な表情があまりにもオソロしく、恐怖でスイッチ切っちゃったし)。舞台鑑賞にあたり、韓国ドラマファンの知人から事前に「太王四神記」特集切抜きファイルなど貸していただき、おおまかなキャスト&あらすじ程度は予習してきた。読んでびっくりしたのは、ヨン様の相手役でムン・ソリが出演していたこと。「大統領の理髪師」とかに出演していた女優さんで、私のなかではわりと庶民的な(?)イメージがあったのだが、このドラマでは悲運の美女。一回くらいちゃんと見とけばよかったな。

どんな話かいちいち説明するのは省くが、かの国の建国神話等を下敷きにしてはいるらしいが、かなりファンタジーが入っている。なにしろ、神話の英雄の転生である真の王を誕生させるためにスーパーパワーを宿すアイテムを集めなければならかったり、そのアイテムを守る部族がぞろぞろいたり、出生の秘密だの前世の宿縁だのが絡んでくるのでややこしい。高句麗の国のお話なのに、敵は外国勢力ではなく、齢2000年を超える魔法使いを親玉に頂く謎の秘密結社であったりするあたりとか。24話あるドラマ版を2時間にまとめているので、かなりさささーっと話が進む。舞台版演出は小池修一郎氏(「エリザベート」のといったほうが有名かも)が手がけているので、周り舞台を使った場面転換のたびにおお〜っと思う。スクリーン背景も含めた空間の使い方に広がりがあって、とても面白かった。衣装もドラマのあのアースカラーというか、銀のこしのような色合いを取り入れている。基調は黒と銀と赤か。

とはいえ、予習していなかったら、確実に「はぁ???」だったことだろう。そんな力技陰謀で王位転覆できると踏む発想ってどうよという疑問が脳裏を過ぎるのは編集の都合か、元がそうなのかは追求しないのがよさそうだ。
何より印象に残ったのは、ラストの脚色(改変?)。
つまり、スーパーハッピーエンドだったんである。そりゃもー、超弩級ハッピーエンド。
これにわたしはしみじみ感動してしまった。ヅカ版エリザベートの熱狂的ファンであるつぇーさんの解説によると、正しいヅカ的ラストはハッピーエンドか、さもなくば愛のために死ぬかどちらかだそうである。
原作のラストはそういう意味では悲劇であるから、このラストはまさにヅカ的正しいハッピーエンドなんであろう。
だって、男は真の王となることより、国が滅ぼうと愛しい女を救う道を最終的に選ぶのですよ。(で、結果的には愛の力ですべて救われる、と)。空中を浮遊しながら微笑む至高の一対をボーゼンと見上げながら、わたしはこりゃなんて美しい、でもなんて遠く儚い夢なんだろうかと涙が出そうになったのであった。


キャスト的には生まれて初めて見た花組なので、わりとどの方にも思い入れなくフラットに観たが、強いてあげるなら主役の運命の相手であるキハを演じていた娘役トップさんの、赤い衣装がお似合いで鳥がすべるような身ごなし、ほっそりした首、鳥が羽ばたくが如き二の腕の動きがとても美しかった。男性陣では秘密結社の親玉氏の手指の、わきゃわきゃしている怪しさとか、赤マントのドレープ波打たせたクッサイ翻し方とか、しゃべり方もキザったらしくて実に良い。主役のトップさんは、綺麗事を吐くセリフ回しが滑らかかつ品があって、タムドクという夢々しい男性に、ある程度説得力を与えることに成功していたんじゃないかなと思う。タムドクと敵対することになる従兄弟のヨン・ホゲ(彼だけいつもフルネームで呼ばれるのはなぜ?)は、影を背負った敵役という美味しい役どころなのだけど、まぁ、これは私の個人的な声質だけの好みもあるが、歌に溜めというか、凄みがもう少しあればよかったかなという気がする。武人らしさは伺えるがちょっと雑に感じる部分があったので。トップと二番で、どちらも陰を背負った役ではあるが、タムドクの愛にほの明るさを見るならば、王の夢に幻惑されて破滅するホゲには衣装の紫色に相応しいある種の毒気、堕ちた色気が見たい。それでこそ少年時代の友情、誓いの言葉が輝くだろう。ヅカの悪役には底の底に女の夢というか、甘さがある。そこが私が物足りないと思う箇所でもあるし、なければならないと信じるヅカ悪役の美点でもあったりする。しゃくにさわるではないですか。女の幻想を必要としない男なんて(笑)

本編が長いので、レビューは短めだったが、わたしはレビューが観たくて行っているようなものなので、ラストで弾けてくれて嬉しいのだった。

あ、件の知り合いの知り合いの知り合い(?)であるジェンヌさんは、幸い舞台上でしっかり確認することができた。初々しくキビキビとしたお嬢さんであった。端役とはいえ、各自衣装がどこかしら違うことに今回初めて気が付いた。たとえ群集の1人であっても、ちょっとした目印があるらしい。そういう視点でお目当ての出演者を探しながら見るのも楽しかった。そんで、うっとり4人乙女は、次はセリフもらえるようになったらいいね〜と言い合いながら帰ったのでした。