豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2011年 2月号 月刊プリンセス連載分雑感

月刊 プリンセス 2011年 02月号 [雑誌]【今月あらすじ】
婚約者イズミルに去られた傷心のタミュリスが兄シタルケスに連れられて故国トラキアへ帰国の途についていた頃、エジプト王宮では王妃キャロルが、手料理の特訓に励んでいた。
古代の料理をマスターしメンフィスに食べさせたいとはしゃぐ無邪気なキャロルも、自ら将軍に就任したネバメンが視察の挨拶に顔を見せると何やら胸騒ぎがする。そこへイムホテップがやってきてキャロルから頼まれた国内教育機関に関する資料を見せながら、ヒッタイト王国で起こった大事件――イズミル王子の拒絶・出奔により婚姻同盟が決裂し、今やヒッタイトとトラキアの間に戦争が勃発するかどうか諸外国も固唾を呑んで成り行きを注視している――と報告したため、キャロルは予想外の事態に驚き、メンフィスの帰国を待ち望むのだった。
 その頃、エジプトへ帰国途中のメンフィスの船はアビシニア沖の紅海上にあった。
 メンフィスはシバの女王に翻弄された乳香取引への反省から、新たな交易ルートを開拓すると宣言。ミヌーエ将軍がシバの港で商人たちから聞きこんだ噂によれば、アトバラの奥地に大商人ゲブレなる豪族がいて様々な香を交易しているという。アビシニア国境で紅海に注ぐ河を遡ってアトバラへ入れると聞いたメンフィスは、直ちにアトバラへ向かうことを決定し、アビシニアへ進路を向けた。
 一方、アビシニア沿岸にファラオの船を伺うエレニーの姿があった。かつてメンフィスに辱められた主人マシャリキの仇を討つ好機到来と大いに奮い立つ・・・

以下、3月号に続く。
 
【今月のお言葉】
21世紀のママや兄さんたちにもたべさせたいな
古代のお料理!
自然にある材料だけで化学調味料なんか一切使わない古代のお料理!
 
*1



【定点観測記】
1.イラスト集・・・続報なし
2.付録情報
・フルカラーイラスト入りマグカップ(柄は54巻表紙イラスト)プレゼント
 ・4月号、チェーン付パスケース
 ・5〜7月号、姫・王・王子イラスト入りチャーム(パスケースに装着可能)


3.雑感
今月号読了後呟き第一声。
「エレニー、次号必ず本懐を遂げてくれ・・・」
本心からそう思った。
基本的にメンフィスが死ぬ目にあう話が好物な私だが、今度ばかりはそれでは足りぬ。オデュッセイアの昔から(設定的には王家のほうが昔だが)戦争に出て行った男達が、そのまま冒険に出てしまい、妻を忘れてなかなか故郷に帰ってこないなんてよくある話。エレニーの復讐がダメなら、魔女に豚にされるなり、美声怪鳥に頭から喰われるなり、アビシニア奥地の大商人某とやらにインダスに売り飛ばされるなりして、もぉ正直言って、君ら帰ってこないほうがいいんじゃないか?だって、メンフィスが苦労して香を入手して帰ってきても、待ち受けているのは無邪気な妻の恐るべき手料理と、自称王弟将軍野放しのなんちゃって王国と、それを取り巻く諸国は、他国の王妃に横恋慕中の敵国王子が父親に楯突いたせいで戦争起こりそうな世界って、どうよ。


特に辟易させられたのが冒頭シーン。
お嬢様育ちのキャロルが例によって苦手な料理に一生懸命取り組む図=純愛、とでも言いたげな、薄っぺらいドタバタ喜劇がまたしても執拗に繰り広げられている。なかでも「やっぱ古代の調味料はハチミツよねっ」と匙を加えたキャロルの口元からハチミツがたらり垂れているコマは、ちょっと耐え難い破壊力。
古びやすい今風口語「やっぱ」だけでも辟易するが、あのコマはキャロルの愛嬌を描こうとして、却って品のなさを印象づけているとしか思えない。細川マンガのカラーイラストに漂うあの何ともいえない品(清楚な色気)こそ、昔の私が愛したものだったのだが、近年大いに怪しい。近頃ではネバメンの育ちの悪さを強調したいのか、やたらボロボロ食べこぼしが描きこまれているあたりもあざとくて私は好きではないのだが、まぁネバは男だし、小粒とはいえ悪役だし、細川演出的に仕方ないかなと諦める余地はある。
が、それを乙女の心を熱く揺さぶる少女漫画(?)のヒロインにやらせないで欲しいんだ。ホント、泣けてしまう。こんなことが気になるなんて、私がおばさんになった証拠か。
だいたい、王妃が何で手料理ができにゃならんのか理解不能だ。王妃なら、国一番の調理人に腕を振るわせ、日々彼らを監督して王の食事を提供し、それで王の健康を守ることができるのならば十分立派だと思うのだが。キャロルが何が何でも手料理できなくちゃと拘る姿勢を発信し続けることは、女たるもの手料理すべき!という一種のファシズムに通じると思うのは被害妄想ですか。女は料理できなきゃそんなにダメですか。お掃除の方が、あるいはお裁縫の方が得意、料理はちょっと苦手・・・でも愛すべき女性はいくらでもいるのに。

さらに「古代の料理は化学調味料なんか一切使わない」とか、無化調絶賛なキャロルの発言も何だかなあと思う。どこかのテレビか健康雑誌の読みすぎか、キャロルさん。
古代人は「化学調味料なんか使わない」じゃなくて「使えない」の。存在を知らないから。選択肢が与えられれば使ったかもしれないじゃないよ。その前提をごちゃまぜにして素朴な古代人を持ち上げても、それは結局のところ自分の価値観から相手を値踏みしているだけでしょ、もっと言うなら歪んだ優越感の裏返し。そういう嫌らしさを、私はあなたの発言に感じてしまう。
実際に農作業をしてみるわけでもなく、高級食材を湯水の如く使い、侍女を動員してお料理の練習に夢中な王妃は、勝手に将軍を僭称しているネバメンを疎ましく思うだけで何の対処もしない。いずれ身分階級に囚われず門戸を開く学校を作りたいと語る王妃の夢が本当に実現すれば、彼女の足元から世界は崩れるだろう。

キャロルは自分の見たいものしか見ない。
キャロルはイズミル王子出奔の報に驚き、王子のケガに責任を感じると言いはするものの、王子にそうさせた動機(自分への恋心)を綺麗に無視して、表面的な同情の言葉を吐いて優しい自分に浸ってみせる。そんなヒロインが語る物語が、誰の心に届くだろう。
正月から憂鬱なエピソードだった。

*1:王妃キャロルさん