2005年3月号プリンセス掲載分雑感
【今月ネタバレあらすじ】
ユーフラテス河畔にあるバルバリソッス。
誘拐された妃を探してやってきたエジプト王メンフィスと、同じく「ナイルの姫」を捜索中のアッシリア王アルゴンが鉢合わせしてしまった。2人は積年の恨みを晴らすべく剣を交えるが、なかなか決着がつかない。そのうち、メンフィスの手勢が集結してきたため、形勢不利と見たアルゴンは吹き上げる風を利用して炬火を投げつけ、焔に紛れて脱出する。一方、去り際のアルゴンの捨てゼリフで、キャロルの死を暗示する言葉を聞かされたメンフィスは動揺を隠せない。
同じ頃、直前に辛くもバルバリソッスから脱出を果たしたハサンたちは、高熱で再び意識を失ったキャロルの看病に追われていた。ヤドナナは水を汲みに谷へ降り、カレブはバルバリソッスの方角で山火事だと知らせてくる。
彼らはまだ知らなかった。
人の気配を認めて、バビロニアの女王アイシスの一行が道を尋ねんとその場へ近づきつつあることを・・・
→6月号に続く
【今月のお言葉】
「ではキャロルは宿敵アルゴン王にとらわれてわたしの足かせにならぬよう高熱に苦しみながら死を覚悟して逃げたのかっわたしのためにひいてはエジプトのために死ぬつもりで逃げたのかーっキャロルーっ」
*1
【感想】
さすがファラオ、肺活量すごいな。
「オペラ座祭り」状態だったせいか、素で発売日を忘れていた。今月は6日が日曜日だったせいで、5日には発売されていたというのに。
ていうか、忘れてたかったよ…むしろ。
何なんですか、このメンフィスVSアルゴンのチャンバラシーンの雑さは…
私だって「王家の紋章」をアクションマンガだと思ったことは一度もないが、デッサンの正確さを求める気もさらさらないが…それにしても。
よりによって吹きだし部分を剣がぶったぎって
アルゴ ↓ ン
勝負 ↓ ぞ
ってなってるのは、初めて見たね。
わたしを笑い殺す罠か?!
笑殺といえばもう一つ。
「さーーっ!」というのが卓球愛ちゃん的掛け声
「うひょぅ!」というのが庭球シャラポワ嬢
ならば、王家のエジプト王はこう。
「いでやーーーーーーーーーーーーっ!」
・・・・・・・なんですか・・・それ・・・・。
いや、どんな気合いれて剣を振り回そうがファラオのご自由です。
自由ですが、気合入れてアレかいと思うとね。「女が絡まないほうが彼らの良さが出るのではないのかなあ」などと先月雑感で期待を込めて書いちゃった、あたくしのアホ度がさらに引き立とうというもの。メンフィス VS アルゴンって 違う意味でいい勝負だということは、今回よ〜〜くわかった。
ぺらぺらぺらぺら長ゼリフ合戦場か、そこはッ!
「わが妃キャロルは わがエジプトの母なる女神の娘なれば わがエジプト国民が慕う聖なる妃ぞ 他国のいかなる王であろうとも渡しはせぬ!」
「わが城に水を引き入れ崩壊させわが腕を切り落とした恨み重なるメンフィスよ」
「このわたしを欺き鎖につなぐなぶり殺そうと謀った卑怯者めっ」
「アルゴン!逃げるかーーーーっ」
「なっなにいっ 誰が逃げるかっ 今そこへ行ってぶっ殺してやる」
もうね。アホか子供のケンカかと。
お前ら大勢の手下の前でそれやって恥ずかしくないのかと。
ぱっと見て、見開き中央で左にアルゴン、右にメンフィス、両者ガキッと剣を合わせてるか、飛びのいてキメポーズ。プラス、途切れることなくずーーっと喋り(怒鳴り)続け、ヤツらの周囲には雲霞のようなモブ。しかもモブまで伝言ゲームばりに喋りっぱなし。混乱の坩堝ってまさにこんな感じだろうなぁ〜と思ってしまう。
うるせーぞてめーらー
この怒鳴りあいがざっと26ページ。嗚呼―――疲れた。
そしてトドメに王様は絶叫するのだ。
「ではキャロルは宿敵アルゴン王にとらわれてわたしの足かせにならぬよう高熱に苦しみながら死を覚悟して逃げたのかっわたしのためにひいてはエジプトのために死ぬつもりで逃げたのかーっキャロルーっ」
だーかーら!
状況説明に状況説明を重ねる自分のセリフから妄想に入り込んで絶叫する癖はいい加減にヤメたほうがいいですよって。
「雄々しい古代の王 わたしはけっして雄々しいあなたを苦しめる足かせにはならない
生命かけて あなたを愛しているわメンフィス」
意識混濁中キャロルの上記モノローグを読みながら、アンタ、マジでこの男に賭けて後悔しない、ねえ??と揺さぶって聞き質してみたくなるからさぁ。
ここに来てやっとストーリーは面白いことになってきたのに、画面に緩急が、運命の重さが、切なさがない。
決定的に、ない。
しかも、今月は絵がまた幼い感じに戻っているし。どうしたことだ。
作者に今のところキャラを整理する(殺す)気がないのは、「王家ナビ」インタビューでも言及されていたので、アルゴンも今回死なないとは予想していた。
でも、だったら、アルゴンの卑怯者で執念深くて野蛮で残酷なキャラを魅力的に描いて欲しい。メンフィスの怒りだって、もっともっと深く抉って欲しい。愛しい女の安否すら、復讐の快感に一瞬忘れてしまうほどの激情を期待していていたのだが、メンフィスは最近腑抜けてしまったみたいで軽く流されてしまった。彼らは何よりも「王」であれと、思って読んでいるのだが、無駄な期待だったか。
そして何より、2ヵ月先の再開号で、アイシスがキャロルを見つけるのだったら、せめてアイシスにこれ以上品性を疑うような卑しいことは言わせないで欲しい。
かつて、塩の海の神殿に潜伏してキャロルを待ち受けていたときのアイシス登場シーンは、凄絶な迫力だった。
神像を背景に大階段の上から「そなたを待っていた」と微笑みながら降りてきた、あそこ。
「格調高いロマン」が読みたいのだ、私は!
*1:取り乱したメンフィスさま