豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 2005年6月号プリンセス連載分雑感

●今月のネタバレあらすじ

様々な思惑が絡み合う深夜のユーフラテス河畔。因縁の宿敵同士、アッシリアのアルゴン王とエジプトのメンフィス王が火花を散らす。形勢不利とみたアルゴンは、風上に立つメンフィスに向かって炬火を投げつけ、たちまち辺りは火の海となる。炎と煙に巻かれ窮地に立ったエジプト軍だったが、メンフィスの指示のもと辛うじて河にたどり着き、難を逃れる。一方、高熱を発し意識不明となったキャロルを連れたハサンは、近くの洞窟に身を潜めていた。そこに何も知らずに、アイシス一行が近づく。バビロニアの王妃の出現に驚きつつも、何とかその場をやりすごそうとしたハサンだったが、水を汲みに出たヤドナナを捕えた奴隷番ブズルの登場により、アイシスにキャロルの存在を気づかれてしまう。アイシスは憎いキャロルをここで殺すよう、部下に命じるが――

以下、7月号に続く


●今月のお言葉
恨み重なるメンフィス王よ 炎に巻かれて死んじまえ―――っ
*1


●つらつら。
恒例の2ヶ月休載期間が開け、今月からは第29部、巻頭カラー4Pつきの40ページでスタート。月刊プリンセスの連載陣でも、デジタルのカラー塗りをする作家さんがだんだんと増えてきてる気がするが、私は昔ながらの(?)細川センセの手塗りカラーイラストがやっぱり好きだ。装飾その他が細かくて、何より肌の色とかなんともいえず綺麗だから。キャロルの金髪が最近緑ががかったヘンな色なのは気になるけどな。今月表紙は、古代エジプトっぽい人物壁画モチーフがバックにあって、色合いもなかなかステキである。ポピーだろうか、あのキャロルの花柄のドレスも好きだなぁ。そして珍しくメンフィスの腰布が短め。近年珍しいあのビミョーな透け具合は、春のサービスか?

内容。
あるようで、ない。ないようである。
なにしろ連載なのだから、一号に必ず山場はあって欲しい。そして「次は?」で引っ張って欲しい…欲しいのだが。山場が火責めに遭うメンフィスたち、そしてアイシスがキャロルを殺そうとしている、次はどうなる!?ってな構成はわかるけど。
この見せ方はどうにかならんものか。
「左の木が燃え落ちるぞ」と警告が飛べばその通り木が落ちてくる。
「おお、谷間ぞーーっ」と叫べば、そこには文字通りの谷間。
「おお炎がーーー」と叫べば、ボォーーーと例の手書き文字つきで炎が噴出し
「あっあっ すべるー」といいながら滑っているファラオ。

―――な〜んか疲れるワ…
「王家」の絵は、散々古い古いと言われているが、それでも読めば、川を船で渡るイメージとか、灼熱の砂漠を渡るイメージ、都を埋める群集のどよめき、騎馬とともに舞い上がる砂埃、地中海を船で旅するイメージ、風が吹くイメージがあの独特の画面から感じられたのに。だからこそワタシは読んでトリップしたのだ。

しかしながら、最近の連載ではほとんどダメ。全編にわたってコマがごちゃごちゃしていて、しかもモブまでギャーギャーわめき散らすから、うるさくってたまらん。しかもほとんど状況説明セリフで被りまくり。もうちょっとセリフとコマを削って、キメのシーンを印象的に見せるのに回してもらいたい。
例えば今月のラスト。
すぐそこに、憎っくきキャロルが病臥しているのに、気づかない女王アイシス。女王はこのまま行き過ぎてしまうのか〜とドキドキするところなのに、見破るシーンがたった2コマですごくあっさりでがっくり。「白目で杯叩き割り=判った」って、演出古すぎないか。そして「おおお、キャロル!!キャロルではないか… そなた なんと・なんとこのようなところにいたとは―――っ」と驚愕する女王さま、微妙にマヌケなポーズである。

つまり、マンガのマも描けないわたしが偉そうにこんなこと言うのもなんだが、
思うに画面上にリズムがないのだよ。
緩急というか、ここはこれ、というキメの「絵」が無くなってると思う。絵のウマイヘタの話じゃなく、はっとページをめくる手を止めさせて見入っちゃうようなポイントがない。ギョッとするようなのは多々あるが。大半がだらだらわーわーと流れるだけ。だから、読んでいて疲れるの。

そして、時々ぎょっとするような言葉もあったりする。
先日、上野の東京国立博物館にて開催中の「ベルリンの至宝展」で、アッシリア王アッシュール・ナシルパルの宮殿を飾っていた荘重な浮き彫りにいたく感動した私としては、アッシリア王の「死んじまえーーーーーー!」チンピラ風発言はちと笑う。まぁ、言ったのが既に負け犬で遠吠えしかさせてもらえないアルゴンだが。
そして、そんなアルゴンに感化されたか「こんなところでくたばってたまるか」と言い出す砕けたファラオにも笑。彼がゴキブリみたいに嫌ってるユクタス将軍風アンダーパンツ履いてるのにも笑。それに「トーガ」はラテン語でそ?

予想はしてたが、今月の女王さまは「おおキャロル そなたのためにわたくしはこの長き年月どれほどに苦しんできたか 下エジプトの女王たる愛するエジプトを追われ 我がメンフィスには憎まれ、バビロニアに嫁がされ…」と100%被害者風発言を機関銃のように撒き散らし、私を完膚なきまでに撃ち殺して下さったのだった。「メンフィスはあなたを憎んではいないわ」とキャロルが言っても、女王サマは聴く耳ナッシング。そこで出るのが例の定説「おおキャロルさえ死ねば 幼き日より愛しんできたメンフィスがわたくしの胸にかえる」
そんなアイシスは何しにここへきたのだっけ?と、前の号を遡れば「奴隷に落ちたみじめなキャロルを見たい」からだった。

王家の悪役キャラは、かくもキテレツに破壊されてゆく。
同情も共感も拒否して、ただただ、自己憐憫と一方的な悪意を撒き散らす。
もうアイシスもそうなるしか生き残る道はないのか。あ〜あ。
それで、次こそ、白馬のお助けマンで例の王子が来るんだろうなぁ。




「ベルリンの至宝展」
古代エジプトのアマルナ関連ものは素晴らしかったが(特に、ティイ王妃頭像とネフェルティティ王妃or王女のつくりかけ彫像は忘れがたい)、メソポタミア美術も意外と充実していて楽しめる。左図は東京展しか出品されないという、アッシリア王宮の浮き彫りである。アッシュール・ナシルパル王と後ろの羽根男氏は守護精霊だとか。中央部分に幅40センチくらいで楔形文字が彫り込まれていた。両者の男っぽい手足の質感と、身に纏ったケープの重々しい感じがいい♪

*1:byアッシリア王アルゴン陛下