豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

映画「トリスタンとイゾルデ」

Tristan and Isolde (Widescreen Edition)監督:ケビン・レイノルズ
出演:ジェームス・フランコ
   ソフィア・マイルズ
   ルーファス・シーウェルほか
2006年アメリカ映画
上映時間 2時間5分
原題:Tristan + Isolde ⇒公式サイト


この流れなら書けるわ〜!
というわけで、中世西洋が舞台の騎士とお姫さまの恋物語、バリバリのヒストリカルロマンス「トリスタンとイゾルデ」観たのである。劇場入り口で、まぁ秋だからさ…人恋しいのよね…と遠い目をしながら入る私。古典的ロマンスそのうえド悲恋も甚だしい、まさに伝説の超弩級悲恋ロマンスといってもよい物語である。ワーグナーがオペラにしたのでも有名らしいが、私はクラッシックに昏いのでそっちはほとんど知らない。確か、惚れ薬を誤って飲んだ飲まないのエピソードがあったと記憶しているのだが、この映画では出てこなかった。


クレジット観て知ったのだが、この映画、製作総指揮がリドリー・スコットなのだ。そして監督がケビン・レイノルズ。そうです、「ロビン・フット」とか「モンテ・クリスト」の監督さん。文芸コスプレアクションものに手堅い手腕を発揮する印象アリ。そもそもこの人はリドリーの「決闘者」を見て監督になろうと思ったそうだから、今回のコンビも仕上がりもナルホドと思うような映画だった。なんとなくリドさまっぽい幻想的で美しい画面(がんばってるな〜というかんじではある…本人ならもっとスゴイでしょう)、凝った中世風衣装も素晴らしいし、アクションも役者もストーリーもまずまず。アイルランドやコーンウォール(なんだろうきっと。行った事ないが)の荒涼たる画面が麗しかった。全体的に青くくすんだ画面に、深い森のモスグリーン、黒尽くめの騎士たちのうごめくシルエット。ゾクゾクするほどカッコイイ。そこに、輝くような金髪で、トルコブルーのドレスを纏った美女イゾルデが登場すると、とても鮮やかだった。
ついでに、私はイゾルデ役の女優さんのことををずっとソフィア ジュリア・スタイルズ(「セイブ・ザ・ラストダンス」「O 」とか)だと思って観ていて、やけに顎が逞しくなったわね?老けた?とか訝しく思っていたのだが、そうではなく、あの女優さんはソフィア・マイルズという別人だった。バカである(しかも名前まで間違えていた)。ジェームス・フランコは「スパイダーマン2」で良いなと思ったのだが、このトリスタンはどうなんだろう。巻き毛と騎士姿はりりしいが、くしゃくしゃっと泣き顔になって哀願されるのも、最初のうちはカワイイけれど、そればかりだとだんだん腹が立ってくるのである。このストーリーは端的に言うと、不倫の話である。若い二人は悲恋の運命にうっとり、こっちはこっちで勝手にすれば?と醒めた気分で終わらせなかったのは、トリスタンの養父にして主君、のちにイゾルデの夫になるマーク王(ルーファス・シーウェル)やその甥っ子(「モンテ・クリスト伯」にも出ていた)がなかなか魅力的に描かれていたからだろうと思う。ルーファスは観るたびに恰幅(特に腹周り)が良くなっていて複雑な気分なのだが、わたしゃこの人の顔はけっこう好きなのだ。毎度、横恋慕強欲男とか卑劣男の役ばかりでは…とか悲しかったのだが、今回は、義に篤く、温厚な名君の役。ステキ。彼はあまり気乗りせずに二度目の妻を迎えるのだが、やってきたイゾルデを一目みて恋してしまうのである。私はついついニヤニヤしつつ観てしまった。そのせいで、間男トリスタンには少々点が辛いのである。二人の男に揺れるイゾルデの気持ちは、わからないでもない。女の気持ちは流されやすいのだよ、トリスタン。
怪我から快復したトリスタンが帰国するとき、一緒に行こうと言われたイゾルデはこれを拒んだ。王女の義務から自由になりたいと言いながら、彼女はその義務から逃げなかった。あの瞬間だけは、彼女は王女ではなく彼も敵国の騎士ではなく、二人はただの恋人同士だったのに。あの時、二人の運命はすでに別れてしまっていたのだろう。その後の悲喜劇はすべて、あの選択の延長に起こるべくして起こった出来事だった気がするなぁ。

というわけで、これは照れずに映画館で観るべし。