豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

第二章 帰京 編(1巻)

1.母の病

母倒る、との知らせで急遽帰国した朝子は直ちに病院に駆けつける。お母さんは働きすぎで全身が衰弱し、心臓も弱っており、このままではキケンだと医師からは無情の宣告。母に無理をさせたのは自分だと朝子は打ちのめされるのだった。と、そこへまたしても追い討ち。入院費用として105,300円を病院側から請求され、期限までに支払いがなければ退去してもらうと通告される朝子たち。費用を工面するため、朝子は家財道具を売り払い、もっと安いアパートへ引越しすることを決意する。朝子としげるは便利屋と交渉を重ね4万円を確保、貯金を合わせてなんとか当座の入院費用は捻出する。それほどのピンチにあっても、朝子はジュリオからもらったペンダントだけはどうしても売ることができない。

朝子としげる姉弟は住み慣れた家を引っ越して新生活を始める。朝子は高校を退学してレストランのウェイトレスとして働き始め、夜はミシンの内職を掛け持ちして母の入院費を工面。まだ小学生のしげるも新聞配達をして姉を助けるのだった。

そうして3ヶ月が経ち、朝子とともにローマへ旅立った学生たちの留学生活もまた終わろうとしていた。ローマから東京へ発つ日本人留学生たち一行の様子を、背後からこっそり伺うサングラスの男がひとり…もちろんオーストリイ王国の皇太子ジュリオ殿下である。
「あの留学生たちと一緒にいけば…朝子のいどころがわかる」
朝子!朝子!と、愛しいひとの名を呼ぶたび皇太子の胸は高鳴るのだった。一方、朝子をいじめぬいた同級生山田亜季は、いちはやくお忍び姿のジュリオ皇太子が同じ機内にいることに気づき、もしや朝子に会いに来たのかと愕然とする。
そうこうするうちに一行は無事東京へ到着。朝子がいる地を踏みしめ、奮い立つ皇太子であった。

「朝子 今どこにいるんだ ぼくは ぼくは今やっと国をぬけだして君に会いに来たよ!!」

同じ頃、当のオーストリイ王国では蜂の巣をつついたような大騒ぎである。国王のアメリカ親善訪問中に日本へ出奔するという世継ぎの皇太子の行動に、臣下から非難集中、王妃がひとり矢面に立たされていた。皇太子の資質にも疑問の声があがる。臣下のひとりマリウス公にいたっては、ジュリオ皇太子は到底王の器ではなく、皇太子を廃して自らが養育している王の遠縁レナンドさまこそ王に相応しいとまで言い放つ。激怒した王妃は、来月自ら息子を連れ戻しにゆくと宣言してマリウス公に退出を命ずる。腹の虫がおさまらないマリウス公は、ひみつ部員を招集し、皇太子暗殺を指令するのだった。このマリウス公こそ、反国王派の頭目であり、なんとしても養い子のレナンドを王位につけ、自分が王国の実権を握らんとする野望に燃えている人物だった……。

ジュリオ危うし!

⇒「恋する皇太子」へ続く