豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 もっと遠くへ

実は久しぶりに「王家の紋章」のファンフィクションなぞ書いていたりする。
そしてこれで最後にするつもり。三ヶ月強かかったが、最近やっと書き終えてさっぱりしたところである。ごくごくたまに、ぼけ〜っと考えていて、あ、これは最後までいけそう?ってピピピンと来るときがある。もう隙間話に凝るのは飽きたとホザいた舌の根も乾かぬある日、おや?という調子でアウトラインが思い浮かび、続いてありゃりゃ?てな感じでタイトルと小題が決まった。そうなれば、あとはキーを叩くしかない。とはいえ、今度の話は予想以上に重たく長くなり、吐き出すまで今までになく苦労したのは、ネタ帳のメモをブチ込みすぎたせいかもしれない。

数年前の某巨匠来日コンサートで見たフィリッパ・ジョ○ダーノのパフォーマンスと、今は湖の底に沈んだ亡国の女性を映した一枚の写真が、今回のイメージの根っこにあるような気がする。あとは、ごじゃごじゃ考えてきたこととかいろいろ。その割にはあんま進歩も発展もない仕上がりなのが泣けるが。まあいいや。とにかく、はっはっは〜〜やったね、ヤツらを始末したわよ!という解放感で先日など風呂で溺れそうになったわけで。

かくして私はファンフィクションからはこれで完全に足を洗い、以後はたぶんプリ誌連載ウォッチャー雑感だけ書くことになると思われ。
なぜもうファンフィクションを書く気がないかというと、ひとつは、去年のインタビュー二本を読んで、本編はこの作者のものなのだから私が期待してもお門違いだと完全に見切りをつけたことと、もうひとつは、私のなかになぜか碇のように沈んでいる個人的掟(基本的に既定展開のifバージョンは書かない、現在進行中の展開から著しく見込みのない私的予想は捨てる。等)に従うと、あの世界で夢見ることができるギリギリの妥協部分を使い終わってしまったからである。
それに、ファンフィクションというものは、私にとって構成と展開を考えて書き出す過程自体はすごく楽しめるのだが、いざ実際に書き上げるとなると、文字通り疲労困憊してしまうものなんだこれが。それでもこんなに賛否両論ありながらも、ネット上にファンフィクションが増幅し続けているのは、特定の作品の世界を借りてする自己表現というものは、とっつきやすいわりに書く方も自己を解放するという充実感があり、読むほうも「萌え」を共有できるという醍醐味があるからには違いない。だから、ひとさまにもどんどん文でも絵でも何でもお書きになれば面白い経験ができますよと私はお勧めするのである(もちろん著作権が絡む領域であるから相応の節度も欲しいが)。

まあ、ついでにもっとミモフタモナイ本音の部分を告白すれば、私はファンフィクションというものを書いた後にヘンな葛藤が出てくるので、もうやめるってのもある。
王家の展開について、あーだこーだと毎月文句タラタラ書かずにいられない未練がましい連載ウォッチャーでありながらファンフィクションなんぞ書いてるワタシは、自分の願望を一方的に投射するあまり、他者の世界に個人的鬱憤を注ぎ込み、好きなように弄繰り回して悦にいっている大馬鹿者だ、という自己嫌悪で死にたくなるのだ(大袈裟)。このへん、どう言えば伝えられるのかいつも言葉に苦しむのだけど、私は王家ファンのつもりではいるが、だからといって同じファンでしょ!○○はいいよね!と明るくまとめられるとビミョ〜に拒否反応を覚える人間だったりする。
あなたの「萌え」とやらで<私>を読み解いて欲しくない。私は自分の「萌え」とやらをうまく説明できないのに、あなたにはそれがわかるのだろうか。なのにいくら商業作品とはいえ、己の萌えで他人を読み解いてどうするのだぁーーー!な〜んてね。
ものすごく傲慢なことを言ってしまうが、私が王家にみた夢に共感してくれるひとはあまり多くないだろうなと思っている。でもそれでいいのだとも思っている。所詮は私の独りよがりにすぎないのだから。でも、ひょっとしたら誰かにわたしの夢がちゃんと伝わるかもしれないと思うからこそ、だらだら書いているわけだが。わたしはこのような人たちの、このような感情を愛しいと思うのだが、あなたはどうだろうかという薄暗い呟きを。
ついでに、昨今巷で「〜って思うのはわたしだけ?」と問いたがる人の多いことにも驚いている。この手のなんとも奇妙な反語に遭遇するたび、私はいつも居心地の悪さを覚えてしまう。ええあなただけでしょうね、と言うと逆ギレされるんだろうか〜?
自分を多数派だと思いたがる人間こそが少しずつ世界を窒息させてゆくのだ。あなたとわたしは当然違うものという認識が冷たい拒絶ではなく、軟らかい連帯となるような世の中になればいい。「昔は良かったのに今のは面白くないよね。ホントどうしようもないね」という自虐的共感のみで私は他者と繋がりたいとは思わないし、まして結局オチは自分語りで一斉思考停止してしまうのは嫌なのだ。
自分でも大いに矛盾しているとは思うが、私は王家ワールドの底に流れるロマンチックな夢を偏愛している。そして、そんな夢を見ていながら、同時に目と頭と舌が冴え渡る孤独な世界のほうをより恋しく思っていたりする。この世を遠く離れたところにあり、行き着けそうにないところを。

まぁ、こんなこっ恥ずかしいことをグダグダ考えてしまうだけでも、隙間話を書いた甲斐があるのかもしれん。


私の書いたもの。
http://d.hatena.ne.jp/mao-masakana/20070501