豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2007年3月号プリンセス連載分雑感

月刊 プリンセス 2007年 03月号 [雑誌]【今月のネタバレあらすじ】
インダス国境に異変ありとの急報を受けたシンドゥ太子は、歓迎の宴を切り上げて慌しく帰国の途につくことを決断。インダスの未来に関して頑なに口を閉ざすエジプト王妃の態度から不安に駆られた太子は、立ち去る間際も彼女に対して苛立ちを隠すことができず、もういちど問い詰めてしまう。一方、太子の動揺を目の当たりにしたキャロルは、滅亡の道をたどりつつあるインダスの現実をまざまざと感じて自分の無力さに心を痛めるのだった。太子の無礼に憤るメンフィス王であったが、心痛で体調を崩した愛妃に対しインダスの国情を探らせると約束。臣下たちの間でも、王妃の語ったインダスの不吉な未来は大いに話題となる。
それから数日後、アラビア半島南端に位置するシバ王国の港からシンドゥ太子が船出しようとしていた。
太子は友好関係にあるシバ国の女王が、傷ついたインダス兵の看護をしてくれたことに篤く礼を述べ、さらに女王から援軍の申し出を受けて感激の面持ち。全力でインダスを目指す太子は、不吉な予言を吐いたエジプト王妃に対しなおも怒りを募らせるのだった。その一方、悲壮な決意で旅立った太子を見送ったシバの女王は、エジプトの若き王とその妃についてなにやら興味を覚えた様子。
同じ頃、ハサンの薬が効果があったのか、キャロルの体調もようやく恢復。喜んだメンフィスは自ら馬を駆り、新都の建設現場へキャロルを連れて行く。キャロルも久しぶりに新都を目にして、着実に工事が進んでいることに大感激。いずれ丘の上にはアメン神を祀る大神殿を建立するつもりだと語るメンフィスの輝く顔を見て、キャロルはいつかこの地に出現するであろう都に想いを馳せる……。

⇒続きは2ヶ月先の6月号で。
(来月は超美麗マグネットとやらが付録らしい。ファラオのセクシー脇スリットをカットしたくせに美麗とはこれいかに?)


【今月のお言葉】
ナイルの姫 いま一度お尋ねする!
御身はまことに――わがインダスの未来が読めたのかっ!!
*1



【今月のだらだら】
今年の初夢らしきものは、なぜか高校時代の同級会にて皆王家コスプレのうえ誰のファンか絶叫しあい、順次胴上げされるという見事に呪われた夢だった。前夜見たリンジー主演の「ミーン・ガールズ」のせいよきっとそうよそうにちがいない。
と太子顔負けに動揺するワタシはすっかり忘れていた。ファラオってばまだどこぞに新都を作ってらしたのね。こないだの運河開通祭りもそうだったが、休載前(そして騒動勃発前の嵐の前の静けさともいう)ってこんな素晴らしい一大プロジェクトが完成しました姫さまのエジプト万歳!てなお祝いばかり見てるような気がするなぁ。おそらく王家のラストシーンは完成した新都で微笑むメンフィス王とナイルの王妃(と子どもたち)で幕になるんだろう。今月は滅びに向かういつつあるインダスと、興隆の絶頂期を迎えようとしているエジプトの明暗がくっきり分かれて描かれていたが、原作者抱負「主人公たちを歴史の大きなうねりのなかに放り込みたい」って、それはもしやこの先は地中海世界の環境激変とそれに翻弄されるキャロルたちの話になるってか?こりゃまた壮大長大遠大なプロジェクトっすね。
んで、久しぶりに正統ラブラブシーンが入っているところをみると、おそらく、またメンフィスとキャロルは引き離されるんだろうから、それまで胸ヤケするほどラブラブしておくがよいのじゃ!!でもって、ネウロイ人に続く即退場キャラ、シンドウ太子の役割はラブラブエジプトの当て馬みたいなものか?久しぶりのクール美形キャラと期待されながら、魔性の女萌え&逆ギレ&毒吐き退場という美男キャラとしては最上級の恥ずかしい消え方をさせられる羽目になった太子殿下はまことにご愁傷様というほかない。

わたしは先月号末にてシンドゥ太子は帰路につかれたものとばかり思っていたので、今月号でいきなりキャロルに食ってかかる冒頭部分を読まされて、なんだか数コマぶん時間が巻き戻された感じだ。思えば、太子のバストショット初披露字時、私はなぜかパッと見で「ミノスにターバン被せて黒くしたようなヒトだわ……」てなかんじを受けたのだが、太子はあの元病弱忘恩少年王と中身も似てるかもなぁ。あの、強がりだけは一人前のヘタレ坊ンって雰囲気が。
いやいや、そうではなく、帰路立ち寄ったシバ王国の女王とはやけに懇ろに別れを惜しんでいるところを見ると、太子殿下は単に熟女(なのか?シルエットだけで判断してみたが…)好みなんじゃなかろうかという気がする。勿論、友好国であるシバの女王には自分がエジプトに行っている間、負傷兵の面倒を見てもらっていたという恩義もあるし、女王は更に太子に対して援軍の申し出をしているから好意もいっそう増して当然だろう。だけどなんだか女王と太子の関係は、したたかな年上女首長の手玉に取られている若いツバメ太子に見えるざます。女王相手にエジプト王妃の魔性の女っぷりを長々愚痴って、慰めてもらったんじゃないだろうなぁ。
先月はキャロルの浮かれた態度や増長っぷりに激怒してしまった私だが、相手がこうまで聞く耳持たない若者だと、そもそも対話にならなかったかも。今回、私が一番げんなりさせられたのは、太子の被害者意識の強さだろう。帰路にあってもなお逆ギレ中の太子が「魔性の女にダマされたボク。でも負けないぞ〜いまに見てろ〜(意訳)」って海上で吼えてるのをみると、どうぞそのままアラビア海の季節風で難破して下されとか思っちゃうのだな。ふぅ。男の必死の強がりにしても幼稚すぎやせんか。太子のあの様子では、帰っても行く先々で「魔性の女に危うく騙さそうになったボク」話を吹聴するんだろう。ええい、何ゆえあの世界はどこもかしこもトンでもな王位継承者しかおらんのじゃ!!くっそう、溢れる涙でPC画面が見えぬ。
太子御付のデーシュ将軍(=イズミル王子におけるハザス将軍みたいな子守爺)が「しかしながらわが太子よ どうか姫君が申されたこともお考え下さい 東にも目を向けましょうぞ」とか涙目で訴えているのだが(盲目的君主崇拝側近がはびこるなか、これはこれで近年稀に見る大人なフォローだったが……あ、でもデーシュすらキャロル派なだけかも?)、嫌なことは見なかったことにするダチョウ太子に聞こえてるのか疑わしい。
たぶん、ああしてインダス王国は、熱意空回り気味の統率者に導かれナイルの娘の「予言」とおり滅びるのだろう(イヤなオチだなぁ)。一寸先は闇な世界に生きる古代人にとって自国が将来滅ぶという「予言」は大変なショックなんだろうけど、あくまで架空物語として読むならば、シンドゥ太子に関しては、予言に縋る父王とは正反対な気概の持ち主だとか、厳しい宿命に負けまいとするふてぶてしさとか、状況や情報を収集分析しようとする冷静さとか、生き残りを賭けての緻密な戦略眼とか、交渉に臨むに際して粘り腰を見せて欲しかったざます〜〜なんて、だらしのない自分のことはすっかり棚に上げ、フィクションの他人(特に王族階級)には要求厳しいのが虚しい。

さてさて、翻ってエジプトの王さまはどうか。
「わたしとそなたの都ぞ」と嫁に念押してるところは思わず笑っちゃったが、たいした男女同権主義者になってしまったわな。未来に向かって輝くメンフィス王の顔っていうのが今月後半の決めシーン。そらも〜キラキラトーンでテカリまくってるのを見るにつけ、障子紙大の油とり紙を差し上げたいくらい輝いている。暗黒の未来に怯える太子に逆ギレされてしまったキャロルは、彼の苦境を慮って「心が痛い」とかお優しいことを言っているが、そういうオメデタくも乙女な感傷に耽溺していれば、健気なキツネとか分をわきまえないテティとかすぐ体温が上がるメンフィスとか、専属便利屋ハサンとか、彼女を慰めてくれるひとが大勢いるのを見るにつけ、キャロルの悲嘆もいい気なものに見えて仕方ない。ワタシは安易な同情で心をあたためるヒロインなんて見たくないよぅ。
その他、今月も出てきた新キャラ。シルエットだけで登場していたシバの女王さまはグラマラス美女だといいな(うっとり)。あるいはキルケーみたいな年下好み妖女だったりして(げんなり)。正式顔見世は80巻くらいになるだろうか(しょんぼり)。太子を見送った後、シバの女王「香木の交易ルートを押さえているわが国がエジプトへの輸出を止めたらあの国では神殿の祭儀ができなくて困るだろう(大意)」とか含み笑いしてらっしゃる。ん〜?でも、シバ王国ってたぶん交易で食べてる国でしょう?お金持ちのエジプトは上得意客じゃないのかね。そんな大事な取引先を、嫌がらせで怒らせてこの先女王様のお国は大丈夫なのかしら、とか思っちゃうのですが。アレクサンダー大王だって東征先で欲しがった香木だもの、エジプトがどうしても香が欲しけりゃ別のルートで調達するだろう。海上ルートなら対岸のプント王国経由とか、陸上なら北周りの例えばディルムン(シュワーム親分の根城かな?)→ユーフラテス経由の砂漠横断ルートとかあるでしょう。どこから香木を買うのが一番効率がいいのかしら。うん、このへん考えるのは楽しいな(笑)
シバの女王というと、旧約聖書「列王記」に出てくるソロモン王と知恵比べした女王がモデルなんだろう。謎のプント王国もシバ王国のことじゃないかとか言われているらしいが、王家の世界では別の国に設定したようだなぁ。とか、いろいろ想像しながら寝転がって読むには面白い展開だけど、文明ならぬ物語の力の有為転変を見てやると決めたところで、この先展開ますますわけわからん。

そんなわけで、ここからはちょいとアラビア湾を渡って歴史散歩をしてみませう。


【インダス太子の足跡を追ってみたりして……】

先月号で、キャロルが「ハークラー川が涸れる」云々と口走るシーンを読んで、そりはなんの話デスカ?と思った私は、レンタルビデオでNHK特集「四大文明 インダス 謎の民は海を渡った」を借りてきた。インダス文明って学校の授業では必ず習ったんだが、なんだかジミーな先入観があって、しかもモヘンジョダロハラッパー遺跡の名前とインダス文字はいまだ未解読とかさらっと覚えればOKだったし、正直なところインダスには全然興味が無かった。でも、俄かのインダス王国シンドゥ太子の登場で、あそこはいったいどんな文明だったのかなぁとちらと興味が沸いたりする。これも、あちこち破綻しつつ歴史ロマンとやらを振りまく「王家」を読む醍醐味だろうか。あるいは横道にでも逸れなきゃつきあいきれないともいうけど。

B00005HM5O四大文明 第三集「インダス〜謎の民は海を渡った〜」
喜多郎 森田美由紀 近藤英夫
ジェネオン エンタテインメント 2000-09-22

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このDVDを見て私がへぇ〜と思ったことはいろいろあるが、
・インダスと交流があったのは、エジプトよりもむしろメソポタミアのほうである。
・その交易も紀元前1800年ごろにはもうインダスとオリエントの交流はなくなっていたと思われること。
・インダスでは階級差があまりなかったらしいこと(だとすると統一王国の王太子っていう設定はビミョウなのかも?)

などなど。まぁ、作者自ら所詮ファンタジーですから、と宣言している作品だから、時代背景的にはあちこちごちゃまぜだと思えばよいのであるな。

なんでも、インダス文明には権力のシンボルとなるような豪華な出土品はあまり見当たらないらしい。出土する武器も簡単なものだけで、遺跡からは戦争や破壊の痕跡は一切見つかっていないそうだ。総じて、インダス文明の特徴は王の墓や神殿、権力者のモニュメントがないこと。人々は平均的中間クラスで構成され、身分や階級の違いがあまりなく皆同じ立場で暮らしていたのだろうとみられている。インダスの人々は高度な都市文明を生み出しながら、それはエジプトやメソポタミア、中国とは全く異なっている。あるインド人の学者は、インダス文明の都市において王のような政治的権力者が一人で統治していたのではなく、何人かのリーダー、それは例えば経済面での有力者や文化面での有力者たちが連携・協力しあって統治していたのではないかという説を唱えている。

四千五百年前、インダス河流域に一大文明が栄えた。なかでもかつて四万人近い人が暮らしていたモヘンジョ・ダロ(現パキスタン)は、高度に計画整備された都市であり、上下水道まで完備されていた。やがてインダスの人々は巧みに船を操り、大海原へと乗り出す。インドの古い文献には、かつてインド亜大陸には三つの大きな河が流れていたと記されている。ひとつはインダス、ふたつ目はガンジス、そして三つめが現存しない河サラスバティ。またの名をガッガル・ハークラー川という。衛星写真で見ると、砂漠の中に見える緑のラインを繋いで川の痕跡を辛うじてたどることができる。その幻の川は、雨季だけ気まぐれに姿を現すことがある。また、近年になって地下水脈が見つかり、砂漠を再び耕地化することに成功しているところもあるらしい。
四千数百年前、遥か二千キロ離れたメソポタミアとインダスの間では、ペルシャ湾を介して海上交易が行われ、メソポタミアの人々はインダスのことを「メルッハ」と呼んだ。インダスの特産品である紅玉髄(カーネリアン)を加工したビーズの首飾りや、コブのある牛を描いた壷、インダス文字が刻まれた印章などが、アラブ首長国連邦バーレーン、更にはウル(現イラク)の遺跡からも出土している。特に、メソポタミアとインダスの海上交易における中継地であり、両文明を繋いでいたバーレーン(ディルムン)の遺跡の発掘では、インダス文字を解明する手がかりが得られるのではないかと期待されている。インダスからは木材や紅玉髄、メソポタミアからは毛織物が輸出された。謎の文明インダス、それはペルシャ湾岸地域やメソポタミアとの交易によって栄えた文明だった。
しかし、紀元前1800年頃、メソポタミアの粘土板文書からメルッハの痕跡が忽然と消える。いつしかインダス河は流れを変え、ガッガル・ハークラー河も涸れてしまったため、河によって結びついていたインダスの諸都市は繋がりを失って衰退、やがて都市は放棄された。
インダスの都市遺跡の中心には大沐浴場がある。インダスの民にとって沐浴は聖なる儀式だった。文明が滅んだあともインダスの人々の水への信仰は、インド文化の底流に流れ続けている。
4500年前、インダスの人々は水のほとりに都市を築き、水が涸れたとき都市を捨てた。失われた文明の記憶を秘めて、インダスは今も流れる……。

え〜大雑把にまとめると、だいたいこんな流れの特番になっていた。
あとは、途中で紹介される、近年発掘が進むインド南西岸にあるドーラビーラー遺跡の再現CGが素晴らしかった!キャロルが太子から紅玉髄の首飾りを贈られて、古代の海上貿易に想いを馳せるシーンなんかは、まさにこのNHK特集のイメージだろうな。インダス入門編として格好の番組。展覧会に行っておけばよかったなあ……と後悔役に立たず。インドを旅行した友だちは、すごく良かったよ〜あれぞカルチャーショック!一生に一度は行くべきよ!と勧めてくれる。そうねぇ、私もタージマハールとかガンジス川のほとりに立って見たいもんだわ(沐浴はしないけど)。

*1:インダスのシンドゥ王太子 ナイルの姫に逆ギレして。あの世界でここまで姫にツッこんだひとは初ではあるまいか