豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 マンガを読む幸福

後宮 4 (4)先週「後宮」4巻 (海野つなみ)が発売された。今度の表紙は誰だろ〜?とワクワクしながら新刊売り場をのぞいてみたらば、あらん、御所様(後深草院)やないの!?背景はおめでたい松、ご本人は衣冠束帯でキメてはる。1〜4巻まで並べて眺めていて気付いたのだが、どうもこのシリーズはイラスト背景もタイトルのカラーもカバーイラストのキャラクターに合わせてあるようで、しかもさりげなく四季に対応させてるのかも。例えば、1巻題字背景色は弁柄色、カバーイラストは二条と藤、2巻題字は冴えた浅葱色で西園寺実兼と蓮の表紙、3巻題字は黄土色でカバーは性助法親王と葡萄――ときて、この4巻題字が利休鼠色でイラストは後深草院と松、となっている。4巻あとがきによると、5巻で完結するそうなので、次は誰を持ってくるかな。春夏秋冬と順調に来たので、最後は出家した二条と桜ってのはどうかしら(西行法師のイメージで)。な〜んて、久しぶりにツボなマンガに出会った幸福(字義通り)を味わっている。いやはや、自分はもう恋愛マンガなんて背中痒くて読めねぇですよ…とか思っていたのだけれど、幸か不幸かまだ恋に感情移入することはできるらしい。ヨカッタヨカッタ。この4巻は、あとで冷静になって思い返すと、けっこうエグいエピソード続きだ。海野さんのこの乾いた絵柄のせいで、そのエグさはいくらか軽減されてはいるが、その分、哀しみとか、孤独感とかやるせなさとかが心に沁みてくる。ほんとうに、人の心はどうして変わってしまうんでしょうねぇ、吾子さん……。自分でも驚いたことに、私はあの3人のなかでどの人が一番って選びかねている(笑)。4巻で表紙を飾った御所様のヒネくれっぷりがまたまた素晴らしくて、ああ、こういうワルくてどこか悲しい帝王キャラって好きなのよぉぉ〜とこれまた幸せ感に浸っている(まぁ、なんといっても王朝貴族物語なので、いい年の男でもやたらと涙をこぼして泣くのは大目にみよう…)。二条の恋愛遍歴に関しては、単に男にだらしがないだけという批判もありえるだろうけど、ワタシにはなぜかあなたがそれぞれ心を通わせる、西園寺実兼後深草院・性助法親王への切ない気持ちもわかるような気がするんだな〜なんて、思えてしまったのがこのマンガを読んでの一番驚き、というか、嬉しかったことかな。
昔、古典の先生が、紫式部が「源氏物語」であんなにもたくさんのタイプの女性を描いたのは、彼女が女の幸せの形というものをずっと探し続けたひとだったからじゃないかしらと仰ったのを覚えているが、そのテーマは「とはずがたり」も同じだと思う。だとすれば少女マンガだってその系譜を継いでいるはず。古今東西、ワタシの居場所はどこにあるのだろうと女たちは問い続け、そしていまだに明確な答えは出てない。いや、答えはそもそも探すものであって、正解はないのかもしれないな。……つ、つかれる(笑)
 そんなわけで、最近になって海野作品をぼちぼち集め始めた。なかでも「回転銀河」の1巻を読んでみて、驚いたことに、数年前に偶々one more kiss誌を読んだとき、ああこの話は好きだな〜と思った短編を描いていたのが海野さんだった(男の子の片思いの話)。まためぐり合えてなんか嬉しい。ワタシは昔から一つの作品が気に入ると、同じ作者の過去作を遡り、それでこの作者とは波長が合いそうだなと判断すると、以後はよほどの駄作でも読まされないかぎり(もしくは途中で作風が顕著に変わって興醒めしたとかしないかぎり)リアルタイムではないものの追っかけて読む傾向がある。加えてもともと好みのジャンルが時代物少女マンガに偏っているのでイマドキの性女マンガは受信しづらく(例:「○感フレーズ」は脳が溶けそうになって2巻途中で投げた)、好きな作品は繰り返し読んで飽きないオメデタさ、さらには新規開拓心というものがあまりなく、恐ろしいことに年々スレてきているので特にヒロインの人物像には自分棚上げのチェックを入れずにいられない――つまりただ偏屈なだけか。そんなわけで当然愛読書にもあまり広がりは望めそうにないのだが、それでもこれ読んで良かった〜と思える作品をいつも探している。ついでのようで申し訳ないが、この場を借りていつも快くマンガを貸してくれ、新しい世界に触れさせてくれる心優しき友人たちにも熱烈感謝。