豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2007年10月号プリンセス連載分雑感

台風直撃で、ただいま家が揺れてる。
なんかの怒りじゃないと思いたい。


月刊 プリンセス 2007年 10月号 [雑誌]【今月のネタバレあらすじ】
下エジプト王宮。まもなくミノア王一行到着との知らせを受けて、キャロルたちは歓迎準備に余念がない。
ほどなく、思慕してやまない女性との再会に胸震わせるミノアの若き王を乗せた舟が王宮前に到着した。メンフィス王は愛妃とともに揃ってミノス王を出迎える。キャロルはすっかり健康を取り戻した少年王を目にして、懐かしさと喜びを隠せない。広間に案内されたミノス王は、王太后よりの親書をメンフィス王に差し出しながら、過日、エジプト王妃より受けた看護の恩を深く謝した。対するメンフィスも少年王を寿ぎ、この先両国の友好関係をますます深めたいと返答。キャロルは一国の王らしく堂々としたミノスの受け答えに、彼の成長を感じ取り目を細める。そして手づからミノスのために吟味した飲み物や軽食を薦めては、偏食を克服した彼に安堵し、顔色も良く背も伸びられて見違えるほどだと手放しで喜ぶのだった。
一方、憧れの女性からこれほどまでに細やかな心づかいと無邪気な好意を示されて、ミノスの心はますますキャロルに傾倒していく。かつて、兄アトラスのために彼女との一夜を邪魔された思い出がミノスの心の中に苦く蘇る。ふたたびこうして触れられるほど傍近くに来られたとはいえ、ナイルの姫が愛しい夫を見つめる眼差しを目の当たりにすれば、自分の実力は未だ彼に心身ともに及ばないこともよく判っている。ミノスは心から強くなりたいと願うのだった。かの王に負けぬ強い王となり、そして――と。
その頃、祝宴の舞台裏では、ミノス王が伴ってきた証人が誰なのか気が気でないネバメンが大荒れ。何も知らずに世話を焼きたがるペルトは、ネバメンに殴られてへそを曲げてしまう。必死のネバメンは、もしかのときはこいつを…と短剣を握り締めて何やら物騒な形相。そんなネバメンの焦りを余所に、義父遭難の手がかりを知らせてやりたいメンフィスは自らプシタを引見すべく、宰相に手配するよう命じる。
傍でメンフィスと宰相の会話を漏れ聞いたキャロルは、気懸かりな現実に引き戻され不安げな顔。王妃の異変に気付いたミノス王は、今回エジプト側に要請されたプシタの捜索依頼が最近公になったエジプト王弟に関連すると察し、俄かに興味を持つ。
御座舟で待機していたプシタは、エジプト王が自分に会いたがっていると聞かされ仰天。ユクタス将軍とエジプトの宰相に先導され、おっかなびっくり煌びやかな王宮に足を踏み入れ、ついにはエジプト王そのひとと対面して目も眩む想い。
自室に閉じこもっていたネバメンは、タルシシの荷頭プシタがこの場に来ているとの呼び出しを聞き、あいつは船と沈んだはずと顔面蒼白。
嗚呼ネバメン、万事休すか?

⇒続きは、2ヶ月先の1月号で。



【今月のお言葉】
ネバメンも育ての親の死を――
あれほど悲しんでいるのだ
一刻も早く知りたいであろう
すぐにネバメンに知らせてやれい
*1


【今月雑感】
今月のカラーイラストはとても好みだ。
黄金の王妃の手をとり、そっと口づけする海洋王国の若き君主の図。あれを見ていると、本編のドタバタ効果音も、頭痛を招く数々の言動もすうっとどこかに消え、二人とも再会できてよかったねと思えてくるから不思議だわ。全面支持というわけではないが、迷走キャラが多い中、とりあえずミノスは数少ないポジティブ成長の後を見せてくれるようだ。
そして中をめくればまたしても王家名物、休載突入前のお約束大宴会。
今月号より連載32年目に突入したらしい。女でいうところの前厄。それにしてはもう厄払いも何もかも遅すぎるような気がする…。私は伏線回収はおろか、最終回があることにすら期待していない惰性読者だ。じゃあなんで読むのかというと、カラーイラストが好きだから――という与太はさておき、どんな形にせよ公式な「完」宣告を見ないと生理的にキモチワルイからでしかないような気がする。ある作品の輝きというものは、どうやって生まれ、どうやって終るのか、それを見届けたい。作品の賞味期限はいづくにありや、人間の創造力の軌跡はいかなる線を描くかを見てみたい。宣伝と実質ってどこまでかけ離れられるのか…とか。我ながら身も蓋もない答えだ。
それに、ある種の好奇心めいたものもなくはない。
作者が心願を込めたという物語が私の目の前に展開されるとき、なんというか、へぇ〜ほぅ〜そう来るか!という驚きを味わえる。わたしもいままで気の向くまま色んな小説や映画やマンガを読んできたが、己の無知蒙昧は棚に上げても、昨今の王家ウキウキ王宮物語くらい「へ?!」と思う演出はあまり遭遇しない気がする。いちおう時代物ジャンルであるせいか、何らかの違和感を覚えたときの脳内液化度ときたらすごいものがあるんだな。
小さなことをあげればきりがないが、例えばいくら大事な証人とはいえ漁夫プシタをわざわざ船倉まで迎えに行くお偉いエジプト宰相さまとか、そうそう、ミノス王が母后よりの親書を王に差し出し口上を述べたあと、メンフィスがそれを読み始めるシーンとか。
メンフィスが(コマの片隅でひっそりと)書簡を広げるのを尻目に、キャロルはミノスに飲めや食べろの饗応を始める。もちろんビタミンCだのミネラルだのありがた〜い栄養解説つきで、だ。
しかし――おいコラちょっと待てや、お二人さん。メンフィスは下読み係かそれともナイルの姫さまの秘書なのか?!
いかに気さくになられたとはいえエジプトの国主はメンフィスでありましょう?
王母からの公の書状を彼はまだ読んでいる途中である以上、儀式は途中でしょうよ。元首の最後のお言葉を聞かんでいいのか。
ミノス王、おん母君、ミノアの王太后さまはご健勝であられるか。はい、お陰様にて。そうかそれは重畳でござるな。ではここでミノス王のご健康、並びにミノア・エジプトの友好と発展を願って乾杯の音頭をそれがしが――とかになって、一定の〆があり、その後やっとキャロルが直にミノスの接待相手をつとめる、という流れでは、姫さまの博識と思いやり深さの見せ場が少なくなるから省略されたのかしら。
でも、私にはそういう公の部分の省略というか、上下関係描写のアバウトさが、この大げさ舞台背景をもつ物語の雰囲気を壊す大きな要因だと思えて仕方がない。
場の序列をきっちり意識した上でなされるやりとりってのは、たとえ傍目にはどんなに空々しくとも、それ自体は争いを避けるため考え出された先人の知恵だ。いかにご都合主義気味の少女マンガだろうと公の関係を取り扱う場合、一定の上下関係の枠は軽視すべきでないと私は思う。枠が強固であればあるほど、その中で生きる人間の感情の揺れとか繋がりを感じられるのだし。であればこそ、昨今のファラオの砕けすぎた言葉遣いにうるさく文句を言う(対して、キャロルが時にわたくし王妃モードに切り替わるのはあんまり気にならない。TPOに叶っていればむしろ歓迎)。だから、今月号でエジプト王妃が王より前に出て客人を出迎えるのもどうかと思う(懐かしいのはわかるが、国家元首が挨拶する間くらい我慢できんのかと)。そのせいで「姫君のうしろにはいつもファラオがいる」とかミノスに言われてしまうのねきっと(笑)。せめてメンフィスの立ち居地くらい王妃の傍らくらいには戻さないと、あそこはますますナイルの姫さま神聖王国になってしまうぅぅ〜焦ったわたしは、今月の神聖ナイルの姫さま王国臣民の声をピックアップしてみたですよ。


「誠に悦ばしいこと!すべてキャロルさまのご看護のおかげです!!」
「キャロルさまは…苦しんでいる者には心をこめて手を差しのべられる。人を信じて疑わないキャロルさま」
「ナイルの王妃さまが心を込めて助けられたお方か 」
「姫さまが一生懸命に心をこめて看護をなさったからあんなにお元気になったのよ 」
「姫さまが苦心して心配りされたお料理を広間へおはこびしなさい」


凄ぇ。
きっと彼らは、日が西に沈むのも、キツネがケーンと鳴くのも、ポストが赤いのも、みぃ〜んなナイルの姫さまのおかげだというに違いない。
確かに、人間の心の動きには、何かを「賛美する快感」とでもいうべきものがあるとは思う。いかなひねくれ者の私でも、素ン晴らしい芸術に触れたときなどは賛美しまくって幸せになりたいぞ。
しかし。
昨今の神聖ナイルの姫王国を覆うあの多幸感に、私は大いなる危惧しか感じない。彼らの振りまく賛美感情は、全員が皆ナイルの姫さま大好きなはずという薄っぺらい思考で塗り固められたマジョリティの暴力とでもいうべきものだ。あの異様なエネルギーは、彼らの頭の中にあるナイルの姫さま像に異を唱えるものがいれば、どんな形にせよその声を抹殺に向かわないと誰が言えるのか。遠くで眺めるだけの他人の本質をそれほどまでに判ったつもりになれる彼らは、もし仮にキャロルが何らかの災厄の化身であると思い込めば、何のためらいもなく彼女に石を投げるだろうという予感がしてならない。いつの時代だって、絶対権力者が善意を尽くしても、誰かを不幸にしてしまう事態は必ず起こりうるのだから。
真価を問われるのは、王がそんな事態に対してどういうフォローをとるかだと思うのだが、シンドゥ太子を泣いて帰らせた優しいキャロルとか、ネバメン放置の優しいメンフィスがその任に堪えられるとは思えない。
それに、権力者キャロルに対する賛美は、口にするものの保身と表裏一体でもある。姫さまのお優しさ、純粋さを賛美する姫さまシンパたちは、彼女の美点が理解できる自分もまた優しく純粋だと思いたいのじゃないか。ミノス王をかわいいと誉めそやす侍女たちは、いかにナイルの姫が少年の命の恩人とはいえ、彼が生まれてきたときから傍で闘病生活を見守り続け、ナイルの姫が去った後も心を込めて彼の世話をし健康を取り戻すのに尽力した人がいるかもしれない、なんてことを想像することはないのだろうか。彼らの無意識の傲慢さ、いや怠惰が私は怖くてたまらない。
だから、彼らの捧げる賞賛を謙遜のカケラもなく受け容れ、さりげなく上から目線ではしゃぐキャロルを見ていて、なんともいえない腹立たしさもある。だが、一歩引いてみると気の毒になるというか、いろんな人から勝手に期待されて神の娘も大変だねぇと思ったりするのである。ま、キャロル自身は一種の天然ちゃんで、内輪の仲良しごっこが大好きだから、さらさらそんな自覚もなさそうでこんなのは大きなお世話だろうが。
そういう妻に感化されたのか、すっかり親身になってネバメンを励ましてやろうと思っているらしいお優しいメンフィス王に幸あれかし。そして、今の今までミノア王が誰を連れて来るのかの情報もつかめず、オロオロしているナサケナー野心家ネバメンの未来明るきように。もーね、あんたら正真正銘の兄弟でいいよホント。


7月の52巻&ファンブック同時発売時の忙しさ懲りたのか、イラスト集準備のためか今度は2ヶ月休載らしい。連載の続きはどーでもいいから(え?)、永久保存版イラスト集めざして頑張って下さりませい〜


【その他】
王家以外の連載が面白い。征矢さんの新連載「サンエヴリンの魔女」開始。初回44ページにして、これで一本の読みきりかと思えるほど話に起伏がありきっちりまとめているのが見事。やっぱ好きだな☆カリカリと地道に描き込んだ線が好き。続きが楽しみだ。

そうそう。青池保子さんのぬりえ本が9月20日発売されるそうだ。
タイトルはずばり「エロイカぬりえ」
エロイカぬりえ


青池保子が自らの手で描きおこした、世界一おもしろくて美しいぬりえ。4つの代表作「エロイカより愛をこめて」「アルカサール -王城- 」「エル・アルコン -鷹- 」「イブの息子たち」の名場面より華麗なカラーイラストを厳選してお手本に。2大人気キャラ「少佐と伯爵」の着せ替えつき!人気キャラ23人のコメントなど、贅沢で豪華な1冊です。
http://book.magazine.co.jp/action/detail.do?seizoBumonCd=YB&seizoGosu=15
さっすがぁ〜わかってらっしゃるなぁ(笑)


アルカサル13巻(完結)は9月14日発売。嬉しいな、やっと読める。
アルカサル-王城- 13 完
アルカサル-王城- 13 完

*1:あとでとっちめてやryメンフィス王