豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 年々歳々

桜がそろそろ咲き始めた。今週はやけに気温の波があるように思うけど、ぽかぽか陽気になるとあっというまに花が咲いて、もう満開の木も見かける。
しかし今年は、桜をながめていても写真に撮ろうという気持ちになれない。
きれいだなあと感動する以前に、苦痛を覚えてしまうから。
去年の今頃、私はほけほけと川べりの桜並木を歩いていて、何気なく目に留まった満開の桜の木を携帯カメラで一枚撮影して彼女に送った。「桜が咲いてるよ〜」と、それだけ書いた。
あの時の私は、この先一緒に桜を眺めることは二度とないなどとは露にも想像せず
美しい桜がこんなにも残酷だとは、思いもしなかった。

同じ日、桜並木の突き当たりにあった公園のベンチで休息していると、「お隣いいかしら?」と小柄な老婦人に話しかけられた。近くの施設からお散歩がてら花見に来たという80代と思しきその老婦人と私は、池のほとりのベンチに並んで腰掛け、とりとめない話をした。といっても、二人とも池のほとりに影を落とす見事な桜を見上げて、きれいですね〜きれいねぇ〜と繰り返すばかりだったが。
あの老婦人が「桜って、どうしてこんなにきれいなんでしょう?」と吐息のように言ったのが忘れられない。
ああ。桜には、おばあちゃんが一番似合う。これはおばあちゃんのために咲く花だ。
私はそのときしみじみ思ったのだった。


思い出のなかで咲く桜はひどく優しい。