豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2008年7月号月刊プリンセス連載分雑感

世代、国境を越えて語り継ぐ愛の神話
月刊 プリンセス 2008年 07月号 [雑誌]【今月ネタバレあらすじ】
エジプト王弟の声に聞き覚えがあるというプシタを問い詰めるミノス王。しかし、混乱したプシタの語りはさっぱり要領を得ないまま。業を煮やしたミノスは、プシタを家来に加える代償として、以後エジプト王弟の素性に関する情報の口外を禁ずる。大商人タルシシの養子であったという王弟の公式上の略歴と、あの王弟は奴隷の中にいたというプシタの証言の乖離の謎を解いてやろうと、ミノス王は心中密かに決意し、帰路を急ぐのだった。
その頃、エジプト王宮には順調にナイル川の水位が上昇していることを報告する各州からの使者が次々と到着し、メンフィス王はじめ重臣たちは安堵の表情。同時に、ヒッタイトに潜入させた諜者から、トラキアの王女が黒海の港に着き、ヒッタイトの城へもまもなく到着する旨の報告がもたらされた。これを小耳に挟んだ侍女テティは急いで王妃キャロルに注進に及ぶ。王子も傷がすっかり癒えて、いよいよお妃さまを迎えるのねと、キャロルの表情も晴れやか。そしてこの日、ユーフラテスの河岸の逃避行において苦楽を共にしたハサン・カレブ・ヤドナナの3人が、キャロルが健康を取り戻したのを見届け、再び旅暮らしへの日々へと去っていった。自室に逼塞していたネバメンも、脅威であったプシタが帰国したことで自信を取り戻し、神官修行に精を出す日々が始まる。
ナイルの氾濫に心躍らせるキャロルは、増水期の村人の生活をみてみたいと、お気に入りの侍女テティとともに王宮脱出を企てるが、すんでのところでメンフィス王に見つかり阻止される。その時、葦舟の下に巨大なワニの影が現れ、一同肝を冷やす。騒然となる王宮。ワニを王妃にけしかけたのは、エジプト王を誑かす魔女を調べに来たシバ王国の女王の配下の者だった。
その頃、アナトリアヒッタイト王城前に、世継ぎの王子の妃候補であるトラキアの王女が到着した。
ヒッタイト王宮にも何やら波乱の予感……


続きは、8月号へ。


【今月のお言葉】

王 タンスよりの報告です

*1




【今月定点観測録】

今月付録は王家イラストブックカバー。もちろん、王家連載ウォッチャーにして文具グッズ蒐集鬼にしてナナメ読者たる私(長ぇよ)がこれを買い逃すわけにはいかん!たとえ生涯そのブックカバーを使うことがなくても!
おおこれは〜見たことのあるイラスト〜新書サイズのカバーを裏返すと、戦闘象とシンドゥ太子(あんどデーシュ将軍)が浮遊しているぞ。はっはっはスゲーなこれわ。
来月も王家付録つきらしい。ケータイクリーナーとやら、私は一度も使ったことないが。
そうやって毎月付録で釣り続けるかわり、イラスト集情報告知がパタリと止んだのはなぜか。眼光紙背モードにて検索中、おしゃべりタイムにて「イラスト集すごくすごく遅れているのすみません」という作者コメント発見。智栄子センセーがんがれ。ワタシ楽しみに待っておりますから。
複製原画展久しぶりにあるのね〜行きたいわ〜〜
有隣堂ヨドバシAKIBA店にて6月3日〜20日マデ開催中。
http://www.yurindo.co.jp/shop/y_akiba.html


……とエールを送った掌の冷や汗も乾かぬうちにこんなこと綴るもアレだが、今月号もますます混迷の度合いを強めている印象強し。
濁るのはナイルの水ばかりじゃない。もしや世界環境デーと連携でスカ?と勘ぐってしまうような、ナイルの氾濫賛歌モードが私に生温かい感動を呼ぶのだった。
ええ、大自然の営みは偉大よ。チューリップを貪り食い続けたせいか顔が変わってしまうネバメンも、推定体長十メートルはあろうかと思われるナイルワニだって大自然の驚異。氾濫を目の当たりにしたキャロルの感激ぶりだって、わからないわけじゃない。
しかしだね。
感動の伝え方がイマイチ。氾濫レポーターのキャロルさん曰く、「ナイルの水が沃土を含んで黄褐色に…なってるわね」だの「ナイル河はビクトリア湖を水源に6400キロも流れて…エジプトにくるの」だの「この氾濫の水はエチオピア高山のモンスーンの豪雨と合流し肥沃な沃土を含んで流れてくるのよ」だの。
8月31日深夜に仕上げた夏休みの理科自由研究レポートかよと(経験者談)。
まぁ、もともと状況説明・人物紹介を全部セリフでやっちゃうのが王家デフォルトなのだが。
(例:十数年ぶりの再会での第一声が「わがヒッタイトの王位を狙い 8歳の折わたしの暗殺を謀り 発覚して逃亡したジダンタシュか!」とか)

フィクションの演出における事実の散りばめ方っていろいろあると思うが、例えば、メンフィスのお仕事シーンでちらほら出てきた地名「イマウ州の監督官よりの報告です。ナイルの氾濫は緩やかに増水し〜」「ナイルの氾濫はペルウアジェト州の海岸に達しました」「ケメヌ州よりも報告が入りましたぞ」あたりは、読んでいてそれがどこのことだかさっぱり判らなくても、ああたぶん下エジプトのどこかの州にもナイルの氾濫が達したんだな、という雰囲気さえつかめれば、あのシーンは十分成立するだろう。無粋を承知で書くなら、イマウ州は下エジプト20の州(ノモス)のうちの最西端にある第3ノモス、ケメヌはその隣の第7州にある都市ヘルモポリス・ハルヴァ、さらにペルウアジェトはデルタ中央部あたりにあった古都ブトのことらしい。だが、そういう「史実」なんぞ、摩訶不思議王家ワールドにとっては背景にもならない。あえて言えばBGMくらい。だから、音量メリハリには注意して欲しいなと思うんである。
で、話は音声発信元に戻るが、解説者のキャロルさんときたら、いつも以上にアサハカと言うも虚しいくらいのグレイトなアサハカさを披露してくださっているのだからして、余計ああした懇切丁寧な解説もすべって見える。何しろ「メンフィスは氾濫で大忙しだし」と、ポチ侍女と村の祭りをこっそり見に行こうとはしゃぎまくりな王妃たち。ワタシがあんたらをナイル河に蹴り込む前に、船が転覆してくれてまことに幸い。ま、それでも落ちたのは侍女だけで「大丈夫かっ テティ」とあのメンフィス王からご心配いただいているんだが、そっちこそ大丈夫かっ!ての。
愛の力によるフレンドリーな王様化…という以前に、皆からナメられてるとしか思えないのだが。
「今後そなたが逃げ出したらそなたが仕える召使ルカもナフテラも含めて全員死罪にしてやる。そなたが無力な者を殺す原因をつくらぬことだ よいな」と恫喝した王の権威は、今や見る影もない。
それでもファラオの心配事はたくさんあるわけで、遊びたい盛りのヨメのお守りもしなきゃいけないし、またヨメがさらわれたら即行救出にいかなけりゃいけないし、スタイリストも探さなきゃなるまいし、収穫の重要指標となるナイルの水位にもはらはら、ヒッタイトがトラキアと結ぶ成り行きになれば銅の入手ルートを確保しておかなければならない。ヘンな義侠心に駆られた女王の君臨するシバ王国からは乳香の輸出がストップしてるし、これもゆくゆくは問題になってくるのかしら。このままいけば、暗殺されなくてもファラオはきっと早死する。結婚話が対岸の諸外国まで知れ渡っているというのに、当の本人は蚊帳の外なイズミル王子の平穏な(?)日々が羨ましかったりしてとか思う今月号。
そうそう。ファラオといえば思い出したどーでもいいこと!
クドくて状況説明過多な王家セリフには慣れっこである私も、近年頻発する砕けセリフには頭が痛い。今回は「そういえばやたら氾濫に感動しておったナ」とファラオが言うのに大脱力。「そなたの相手をしている暇はないワ」という某スパイの笑激の捨て台詞に通じる。
ネームにどういった凝り具合を入れるかは、全くの作者の領域だし、そこに遊び心を散りばめられたって、私はそこそこ楽しみますよ。だけど、そのキャラが、そういう喋り方をするキャラクターだったかどうか、一度実際口にして確認してほしいと私は心底思うんだな。言葉は生き物だし、セリフといういうものは如実にそのひとの人間性を浮き彫りにする。「ガラスの仮面」で、北島マヤが一人芝居の脚本を、書かれたセリフと口にするセリフは違うと言って練り直すシーンがあるが、まさにああいう繊細さが私は好き。

さて、来月とうとうご登場となるトラキアの王女サマはどんなキャラかおののきつつ、津軽三味線のBGMにのせて今宵はこれにてお開き。

*1:おそらくタニス(19巻でエジプト王夫妻の新婚旅行兼視察が行われた都市)からの使者か。