豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2008年9月号月刊プリンセス連載分雑感

月刊 プリンセス 2008年 09月号 [雑誌]【今月号ネタばれあらすじ】
世継ぎの王子イズミルの花嫁としてハットウシャにやってきたトラキアの王女タミュリスは、一目で未来の夫に心奪われた。ヒッタイト王はかくして婚姻による同盟成立と満足顔。
その頃、ナイルの増水に浮き立つエジプトでは、王妃キャロルの好奇心がうずきだしていた。以前お忍びの最中に助けた奴隷の少年ゼビウの消息が突如気になり始めたキャロルは、侍女テティとルカを引き連れ再び王宮を抜け出した。ゼビウを預けた医師メニの家を訪ねた三人は、すっかり更地になっていることに驚く。近隣住民から、大勢の役人が奴隷の少年を捜しにやってきて医院を打ち壊してしまったとの事情を聞き、キャロルはゼビウの元主人、書記プワフが少年を奪い返しに来たと知る。ゼビウの安否が心配でならないキャロルは書記プワフの屋敷を捜しあて、忍び込んだ邸内で水汲み奴隷としてゼビウが虐待されてる姿を目撃。怒りに震えるキルは思わずその場に飛び出し、屋敷の召使たちに対して、書記プワフには以前自分がゼビウの代価を払い、プワフも確かにそれを受け取ったのだからゼビウは奴隷ではないと言い放ち、ゼビウを連れて帰ってしまう。帰宅したプワフは事態を知り激怒する。さては、あの時楯ついたあの小娘の仕業に違いないと復讐を誓うのだった。
衰弱しきっていたゼビウは医師メニの仮設医院へ運び込まれる。自分を自由の民にしてくれた「ハピさま」を信じ続けてきた少年は、またもや救い出してくれた恩人との再会に涙を流す。キャロルは少年を抱きしめ、行政官から彼が自由の民であることを証明する文書を発行してもらうからと励ます。キャロルの行為の一部始終を見届けたルカは、一命を賭けて守るに値する方と深く感動するのだった。王宮に帰還したキャロルは、国事に忙殺されている宰相イムホテップを密かに呼びとめ、1通の文書を差し出す。医師メニの打ち壊された医院の再建と、彼の許で庇護されている少年ゼビウに自由民の身分証明を発行を請願する内容を一読した宰相は、王妃のとりなしを聞き入れ、会議に諮ったのち医院の再建を約束する。喜ぶキャロル。請願書から王妃のお忍び行を察した宰相は危険すぎると警告するものの、王妃から内密にと嘆願されてはそれ以上強い制止はできかねた。溜息をつきつつ、王妃の初めて希望を叶えたい宰相は更なる調査を心に期する。
その頃、はるかな紅海に面したシバ王国では乳香や香木を催促するエジプトからの使者を、軽くあしらう女王の姿。魔性の女に惑わされている美しきファラオ、女のごとき美しき若者をうんとじらせて困らせておやりと余裕綽綽。さてさて、謎めいた女王の意図やいかに。
10月号へ続く。


【今月のお言葉】
トラキアの父上のご命令でこの同盟による婚儀を受けて
心たゆといながらはるばるこの…
ヒッタイトへ来たが なんと噂よりもはるかに
すてきな王子!
嬉しくて胸の鼓動がとまらないわ
*1


【よみがえる黄金文明展ブルガリアに眠る古代トラキアの秘宝トラキア展情報補足】
 公式サイト  http://www.htb.co.jp/thracian/index.html

本気で秋に北海道に観に行こうかなと考えたが、来年関東も巡回するとの情報をキャッチ。
北海道⇒石川⇒新潟⇒東京⇒広島⇒静岡⇒福岡と回るらしいと、ほっと安心。

巡回情報↓
2009年1月29(木)〜 2月15日(日) 大丸ミュージアム東京
その他についてはコチラ参照。

イズミル王子の婚約者(!)タミュリス姫は早くも今月カラー扉に登場している。
北魏様式釈迦三尊みたいな硬直顔がちとホラーだが、公式カラーによると彼女は黒髪で目は灰色のようだ。人物としては、絵もやや落ち着いてきた感じなので、このまましばらくテキパキ美女でいて欲しいと切実に思う。しかし「タミュリス」というのはどうも男性名らしいのだ。自分の才能に慢心のあまり芸術の女神に挑み、酷い目にあったトラキアの詩人の名前だってがちょっとひっかかるなあ……ま、考えすぎよね。



【定点観測録】
北に子を思いて憂う国母あり。
さらには、一国を背負い未来の夫の看護に心砕かんと決意する姫あり。

となれば、常に身をもって民の幸せを願う心優しき南の神の御娘もここは一発活躍せねばなるまい……というのはわからんでもないが(わかりたくないが)、なぜにそれが全編まるまるルカくさんとテティべえを連れた越後のちりめん問屋のご隠居ならぬ黒髪変装姫さまの猪突猛進人助け話になるんだろう。菓子作りに飽きたら次は世直しがしたくなったとかですか。45巻を見てね(はぁと)と言われても、あたしゃ生憎持ってないし、あのへんのエピソードの記憶もかなり怪しい身としては今月展開には正直魂消た。
いくら永遠のワンパターン漫画の令名をほしいままにしているからって、一話のうちに大団円まで持ち込んであっけらかんとその路線を踏襲しちゃうところが細川マンガの凄み(あるいは開き直りか)。
しかしどう考えてもこれは美談ではない。
お忍び途中の一国の王妃が、身に着けていた腕輪を差し出して可哀想な少年奴隷を買い取った――そんなものは感傷にかられたただの「買い物」でしかない。キャロルの懐は少しも痛むまい(しがないサラリーマンの僻みですよええ)。ひと時、正義感を高揚させ、善人気分を味わえる極上の、同時にとても罪深い「ごっこ遊び」ではないか。彼女の好意如何によって天国から地獄へ、あるいは地獄から天国へ弄ばれる身はたまったものじゃなかろう。腕輪で救えるなら、なぜその他大勢のゼビウは救わない?結果的に、このシーンでは不公平感だけがフラストレーションとして残る。
何の罪もない無力な少年が悲惨な境遇に落ちていたところ、偶然、神の如き最高権力者によって救い出されるという展開は、メンフィスとウナスの出会いのエピソードを彷彿とさせるけれども、あの時のメンフィスはウナスを哀れんでなどいなかった。お前は命を賭けて真実を口にする人間か、とメンフィスはウナスに質し、ウナスは命を賭けて諾と応えた。あの一瞬、二人は奴隷と王子という立場を超えて全く対等だったし、更にメンフィスはウナスを助けた後も決して甘やかしはしなかっただろうに。
今月号を読了後真っ先に思ったことは心優しきナイルの姫さまを崇める楽園エジプトにも、強欲書記プワフのようなどーしよーもない悪党が跋扈し、進物を届ける輩もいる!悪党も州を跨げば役人の捜査が及ばないってどうなのよファラオ。
来月宣伝コピーを眺めていると、ナイルの増水がどうも変なことになるらしい。もしや水位が上がりすぎて疫病が蔓延したり、水が赤く染まったり、イナゴの被害が出たりするんだろうか。切実にあのぬるい世界を揺り動かす一大カタストロフが見たいわ。こんなことにワクワクしている我が心既に朽たり。はぁ。イラスト集ホント出るのかいな。

*1:タミュリス王女@鼓動が止まったらフツーに生きてないと思います。