豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 さちみん流古代エジプト風ラブロマンス

そんなわけで、僅かに気力が残っている今の隙に、ぱこぱこ打っておくことにしよう。

優しいおばけたちが織り成す「夢やしきへようこそ」シリーズでファンになったさちみりほさんが、このたび古代エジプトものを描いたというので、新刊を買った。ジャンルでいうと、ハーレクイン/ヒストリカルロマンス。こういうジャンルはどうしても小説のイメージが強いが、ここ数年はコミックでもバンバン出ているみたい。「銀のヴァレキュリアス」完結以降、さちみんはロマンス路線にも積極的に進出しているのは知っていたが、あのピンク背表紙コーナーに立ち入りにくくて、買ったのはこれが初めてだ。
原作つきのも多かったが、この「砂上に誓う恋」はさちみんのオリジナル。
「ナイルの果てに」と「ナイルの誓い」の2篇を収録している。

砂上に誓う恋 (エメラルドコミックス ロマンスコミックス)

砂上に誓う恋 (エメラルドコミックス ロマンスコミックス)


古代エジプト、悠久の時の中で紡がれた身分違いロマンス」と帯文句にある、まんまの話だった。
ごくシンプルなラブロマンスでラストもハッピーエンドなので現実逃避用のレベルは楽々クリアしている。そこに健気なチビっことか、ハンサムなのにボケ男、冷酷なはずなのに惚れた娘の前ではミョーに素直な男とか、まっとうな感性の凛々しい庶民女子とか、おぱーい美女とかの諸々さちみん風味が加わるので、キラキラしい王朝ラブロマンスだけを期待して読むと困惑されないのかしらとか心配。
「ナイルの果てに」は世継ぎの王女が、捕虜として連れてこられたヌビア人奴隷(でもクレタ系なので色白、淡色髪、碧眼)に一目ぼれするお話。「ナイルの誓い」は後日談で、王女の子孫の話。さちみんあとがき曰く、前者は奴隷萌え人向け、後者は王様萌え向けとのこと。
あとがきでちらと言及される編集裏話が面白い。一目ぼれの相手方は実はどこかの王子様だったことにして、ラストはヒロインをお妃さまに、と指定されたらしいし、抵抗の末なんとか譲歩を引き出しても「せめてラストは裕福に」とか言われたそうだ。表紙も「エジプトはなじみが薄いから」と「ナイル」のタイトルが使えなかったとか。
徹底したロマンス設定も恐れ入るが、11歳の頃より某少女漫画界の聖書とやらにどっぷり漬かった私なんぞからすると、「砂上に誓う〜」だと、どこの砂漠もの?と思ってしまうけど。

さちみんには、じっくり腰をすえた歴史長編を書いてもらいたいなあ。すでに「泣かせ」の上手さは定評がある方だが、構想をまとめ切れない内に走り出してしまうというか、ここ数年特にまとめを急ぎすぎて勿体無い感じがする。物語の芯に力がある漫画家さんなので、変化は変化としてまったり応援していきたい。


夢やしきへようこそ (13) (プリンセスコミックス)

夢やしきへようこそ (13) (プリンセスコミックス)