豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2009年8月号月刊プリンセス連載分雑感

【今月ネタバレ粗筋】
月刊 プリンセス 2009年 08月号 [雑誌]
昏睡状態から漸く目覚めたイズミル王子だったが、トラキア王女タミュリスから彼女と自分の婚姻が進められていたことを告げられ衝撃を受ける。一方、タミュリスもわが夫と心に決めたイズミルがこの縁組を全く知らされていない事実を知り、激しく動揺する。忘れて欲しいと言うイズミルに、あなたはトラキア・ヒッタイト両王が認めたわたしの夫だと泣き縋るタミュリス。そこへ王妃遭難の報に席を外していたムーラが戻り、王子の病床から侍女の姿が消え、代わりにタミュリスがいることに大いに驚く。この間、父王の元へ行うともがくイズミルの体調が急激に悪化。慌てて侍医を呼ぶムーラ、あくまでイズミルから離れようとしないタミュリス、半狂乱のタミュリスを抑えるのに必死の侍女長――病室は大混乱を来たし、父王の征服欲に利用されたことを痛感しつつイズミルの意識は再び混濁していく。
同じ頃、混迷を深めつつあるヒッタイトと対照的に、エジプト王宮は明るい華やぎに満ちていた。メンフィスの留守中代理を務める王妃キャロルは、神殿へ届けるべく侍女たち総出で一番咲きの花摘み、その後は政務を見るべく評議へ移動、と慌しく過ごしている。政務室で目を通したミノア王国の王太后からの親書には、一度メンフィスが断ったにもかかわらず再びの来訪を乞う招待が記されてあり、キャロルは困惑する。と、そこへ 姉の補佐という名目を振りかざしながら現れたネバメンが招待を聞きつけ、自分が供をするのでミノア王国へ行くよう勧める。評議の場で常に傍から離れず、日増しに態度が増長してゆくネバメンを不快に思うキャロルは、カプター大神官の使いが祭祀のためネバメンを呼びに来たチャンスに乗じ、神官として国家安泰のため祈祷を優先するよう促す。小娘と侮っていたキャロルに体よく追い払われ、ネバメンは内心激怒しつつその場を辞去。ネバメンの態度に不信を覚えたキャロルは、メンフィスの不在をことさら心細く思う。
そんなとき、キャロルの元に朗報が飛び込む。かねて宰相イムホテップに要請していた貧しい人のための国営病院建設が着工したというのだ。喜んだキャロルはイムホテップの案内で建設地へ出向く。キャロルは、かつてお忍び中に出会い今回の病院建設のきっかけを作ってくれた医師メニ、自分が命を助けた少年ゼビウに謁見し、正体を明かさないまま王妃として労りと励ましの言葉をかけるのだった。
その頃、シバ王国の港では、おろかなエジプト王を叩き潰せんとする女王の下に兵士が終結しつつあった。

まて、而して希望せず次号。

【今月のお言葉】
ムーラ……
トラキアの姫が……ムーラ
*1

【定点観測記】
1.王家コラボ 海のエジプト展ただ今開催中 
2.王家イラスト集情報⇒特に見当たらず。
3.今月付録 
   携帯クリーナー(イズミル王子&キャロル柄)たぶん描きおろし。

4.雑感
自分でも驚いたことに今月の苦悩するイズミル王子に少々モエ〜てしまった。
まぁ、さすがにムーラ助けて(脳内補足)発言はどうよと思うが、「誠に申し訳ないがトラキアの姫よ この話はわたくしのまったく知らぬこと どうかどうかお忘れいただきたい」とタミュリスに苦しい息の下から頼むコマとか、素直に好みよ。
何しろあの余裕綽綽高ピー王子が!女相手に!!申し訳ないと!謝って!!わたしを忘れてくれと!懇願しておるですじゃ!!ハァハァ言いながら!!!(違)
長らくこの雑感記中で、イズミル王子の昨今著しいヘタレポエマーっぷりをボロクソにこき下ろしてきた自覚のある私だが、苦悩する美青年が嫌いなわけではない(いやいや、嫌いなわけがない!)。
私が忌避するのはナルシスティックな苦悩、これだけは駄目だ。どんな美青年でも途端に醒めてしまう。自虐ネタでやっているのなら(客観的観点があるので)許しもしようが、恐ろしいことに王子はド本気。だから肩から血を流しながらお空を眺めて「なぜ私の看護をせぬー」とか、体感気温急降下させる炸裂発言も度々。
要するに、これまでの王子の苦悩というものは、幸か不幸か彼の頭の中で完結出来る代物だった。愛し合っているのに引き裂かれた二人、わが妃は女神の思し召しにより運命で結ばれている、とかなんとか。加えて周囲にポエマー絶賛人口高いため、現実と向き合う必要がなかった。
そこへ振って湧いたこの政略結婚話である。私はこのトラキア―ヒッタイト婚姻同盟という展開はとても興味深く見ているし、ストーリー的にも面白い要素が詰まっていると思っている。そらもう、行け行けヒッタイト王どんと行け、とか歌ってしまいそうな勢いである。
なぜこれほど期待してしまうのか、つらつら考えるに、今度の王子の苦悩には実がある。「実がある苦悩」っていうのはヘンだが、ポエマー王子でも目を背けられない現実が、ででんと彼の前に居る。彼に苦悩をもたらしてきた「ナイルの姫」は、究極の場面ではするりと逃がされるお約束である以上、結局イズミルの想いと交わることも判り合うこともなく、彼は自分の想いを一方的にぶつけ、幻想に逃げ込めばよかった。絵になるし。
しかし、国同士の思惑が絡んだこの結婚話はそうはいかない。弱りきった体に迫りくる強大な外圧。怜悧英明を謳われた彼がわが身ひとつ自由に出来ない。今の事態をイズミルがどうやって切り開いていくのか、出来れば彼が苦悩を乗り越えどう変わっていくのか、私はその部分をこそ読みたい。タミュリスは、横死を遂げたミタムンのように、都合よく脳内から消え去ったりしない。タミュリスが言う「あなたはヒッタイト王とわが父トラキアの王が認めたわたくしの夫」というのはあの舞台では極めて正論で、その意味ではタミュリスはイズミルと対等なポジションにいる。今まで王家世界にはキャロル以外にイズミルと対等な女性はいなかった(イズミルの愛情においてはキャロルとタミュリスには天地の格差があるが、さしものイズミルも無視できない背景をもつ女性という意味では、タミュリスはイズミルと対等だ)。身分と因縁でいえば、他にアイシスがいるが、ミタムンのことがあれほど綺麗に消去された昨今、しかも対エジプト戦略上、バビロニアヒッタイトが微妙な友好関係にある現状ではイズミルとアイシスの間に再戦の可能性は薄い(バルバリソッスでもすれ違いだったし)。だから私はタミュリスにわたしの(勝手な)夢を見るのだ。かつてヌビアの王女に夢見たように。ヒーローの魂と切り結び、精神的に追い詰めて覚醒させる女というのが私の好みである。彼は目覚めるのであって塗り替えられるのではない。わが妃の唱える「愛と信頼と誠実」主義をダウンロードしたのか、父王が領土拡大の征服欲の道具に自分を使ったとショックのあまりまたしても瀕死へまっさかさまの今月王子なんざ、はっきりいって論外である。別に主義を変えたっていいが、人間一匹、主義を変えるならそれなりの苦闘とかあるはずではないか。あなたかつて征服の道具に人の愛情逆手に取ることに何の躊躇いも感じなかったでしょ。父王の仕打ちにショック受けている場合か?王子の場合、自分の脳内で嫁に同化するあまり主義まで代わったのか?と思わされるのに失望しちゃうのよ。だからタミュリスにはあなたがイズミルを目覚めさせて、と言いたい。本当ならこれはキャロルに振られるべき役割なのだろうが、キャラ的瀕死状態にある王子が別の女性によって大逆転ホームランをかっ飛ばしたっていいじゃないの。この路線でいくと、彼がキャロルと結ばれる類のハッピーエンドとは随分違ったものになるかもしれないが、まぁ、ここのだらだら雑感を読んでくださる方には、私がそんなもの毛ほども興味ないことはとっくにお察しであろう。
残念ながら、細川マンガで悪役を振られる宿命の彼女の人間性は、この先ますます権高で偏執的な悪女として描かれ嫉妬に狂って品性も壊されていくのだろうなという予想は容易に立つが、そうだとしても、今月号でタミュリスが「わたしはあなたを愛してしまったのです」と王子に泣き縋るシーンはいつまでも私の中で、しみじみとした哀しみとして余韻を残すだろう。
そうよ、誰かを愛することって悲しいほうが多いじゃない。
そんなわけで、イズミル王子とタミュリス姫の未来についてのモエ語り、終わり。

*1:あなたでも困った時の乳母頼み@イズミル王子