豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2010年7月号 月刊プリンセス連載分雑感

月刊 プリンセス 2010年 07月号 [雑誌]

月刊 プリンセス 2010年 07月号 [雑誌]


【今月のあらすじ】
 シバの女王の宮殿奥深く誘い込まれたエジプト王メンフィスを、突如黒い巨獣が襲う。 仕掛けたのはシバの女王。自らに靡かぬ男に立腹のあまり、かつてインダスの太子が贈った獣をけしかけたのだった。女王から手出し無用と厳命された臣下たちは、この異常事態をはらはらしながら見守るしかない。メンフィス及びエジプト兵は一丸となって獣に立ち向かい、辛くもこれを退ける。ところが、一転して手負いの獣が女王に襲い掛かり、悲鳴を聞いたメンフィスは思わず獣に止めを刺し、結果的に自分の命を狙った女王の命を救ってしまう。 大混乱の王宮をさっさと退出し、帰船して手当てを受けるメンフィスは、臣下たちから口々になぜ女王を助けたのかと問われるが、自らも心を図りかねてイライラするばかり。皆を遠ざけたメンフィスは、傷ついた身を横たえながら、故国に残してきた愛妃に想いを馳せるのだった・・・

続きは8月号にて〜

【今月のお言葉】

わが妃キャロルは・・・
心やさしい・・・・
人を信じて・・・・・・疑わぬ・・・・
――いつも夢を追って――・・・・・
人の善意を信じる・・・・・・
キャロルが愛しい!
キャロルを抱きしめたい
*1


【定点観測記】
55巻発売中。
王家の紋章 第55巻 (プリンセスコミックス)
引越しを挟んだりして、まとめる時間がなかなかとれず、もう今月はいいやとも考えたのだが、引越し前に雑誌は買って(そして引越し荷物に紛れ込ませて持ってきた)やっと書けたのであげてみる。
この雑感は、当初から私の個人的趣味でやってきているものなので、中断するのも、止めるのも簡単なのだが、やっぱり連載を読むとモロモロ語りたい(というほど立派な代物では毛頭ない)、自分のなかで渦巻くモヤモヤを整理したい、というかんじ。

さて、引越し前のドサクサにまぎれてチェックした初回は、はっきりいって読み通すのがかなり苦痛だった。カーテン(というか毎度舞台装置として生い茂るあの草原)の隙間から、ああっやめてそのへんでもう・・・と目をパチパチ。メンフィスの八面六臂の活躍(?)を楽もうと思えど、王家のアクションシーンにただよう温いテイストがファラオのカッコよさ(今回は黒パンツはいてないしね)をお笑い風味に変えてしまうのではないか。そもそも、あの「獣」って何なんだろう。細川風味強すぎ造形のせいか、正体がよくわからない。フゥ〜のネウロイ人並奇種に見える。インダスの太子が贈ったってことはあっちの産なのか?黒豹とか、熊とか、縞なし虎とか・・・。
まぁ、ともかく卑劣な女王が放った怪獣をメンフィスが見事討ち取り、女王は自業自得で背中に大怪我(でも顔は無事だし、臣下を罵倒する元気はある)で今回は幕。女王の命の恩人メンフィスが乳香通商協定をとりつけ、あとは地下室に監禁されたりする前にとっととずらかればよいのよ。サブキャラ(敵方)とはいえ、エコ意識漲る王家ゆえ滅多に殺されたりはしないから、若干権威を落としたとはいえ女王は今まで通り小山の大将で君臨できよう。アルゴン然り、ラガシュ然り。
彼らは忘れられた頃に登場し、相変わらずの言動をさらして読者を呆れさせ、奴らは執念深くて邪悪でナルシストで、対する主人公達がいかにお正しくお優しく愛と誠実に輝いているか、ということを喧伝されるために生かされ続ける。
そして今回、自分を殺そうとした女王の命すら(無意識にせよ)惜しむほどに成長を遂げたメンフィスが描かれるが、裏を返せば、彼をそこまで進化(?)させたキャロルの愛のすばらしさ、ということなんであろう。女王に幻滅したメンフィスは、キャロルの夢を壊すことになると心痛める。おそらく、メンフィスはキャロルから女王の印象を問われても率直に「インダスの太子に惚れて、太子を侮辱したお前を妻にしている私の命を狙ったかとおもえば、面会したとたん色仕掛けでたぶらかそうとしてきたわけわからん女」とは語らないだろう。キャロルを傷つけまいとして、幾分ぼやかして答える(嘘が下手そうだから、バレる確率が高いが、キャロルが嫉妬すればそれで愛い奴ハッピーエンドに持ち込める)
こうして、誰もが彼女の優しさを愛し、守ろうとする。
その繭に包まれて、キャロルは無邪気に夢の世界に浸ることができるのだ。
結局のところ、キャロルに一体化しないとこの物語を読むのはかなり辛いものがあるわね。
私は人の善意への信頼というものが、単なる勘違いか価値観の押し付けだったりすることもあるという危惧を抱いている。また、優しさは、たとえ相手に裏切られても変わらないという強さがあってこそ価値があるのであって、今の独善気味のキャロルにはそういう意味の優しさは滅多に感じられないので、メンフィス王とはだいぶ意見が異なる。ナナメ読者としては、女王に対するメンフィスの嫌悪と、キャロルへの思慕を並列に語らせるのは、キャロルへの賛美がすぎてあざとく感じるし、キャロルを称える言葉も(メンフィスからすれば本心だろうが)ストレートすぎて、神聖ナイルの姫様王国化を憂う白けた気分しかない。メンフィスが政治的な人間でないのは重々判っているが、シバの女王と会談し乳香協定を結んで帰れば我が妃が喜ぶというくらいの認識しか伺えない。
ラストシーンで半裸で寝台に身を横たえ、キャロルのことを悶々と想うメンフィスという、いかにもなカットがあるが、キャーともふ〜ん思えない私は一体何のためにこの連載を読んでるのだろうな〜といつもの空しさに襲われる。
ここで「何のために」を考えると答えが出ないので、「とりあえず続きがまだ読みたいから」とだけ結論しておき、それ以上は考えないことにしたい。

*1:メンフィス王@煩悶中(→テレパシー付)