豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2010年9月号月刊プリンセス連載分雑感

月刊 プリンセス 2010年 09月号 [雑誌]
【今月のあらすじ】
エジプト王一行は、シバ王国を旅立った。すっかりエジプト王に心奪われたシバの女王は、自らに目もくれずに去っていった王を恨み、獣から受けた怪我に苦しみながら思いを募らせる。
一方、順調に紅海を北上するメンフィスたちに、宰相イムホテップからの便りがもたらされる。トラキア王国の王女とヒッタイトの世継ぎの王子の婚姻は、エーゲ海諸国にも緊迫を広げているとの報告を受け、警戒を強めたメンフィスは帰路を急がせる。そしてその動きは対岸のアビシニア王国の者の目にも留まり、青の王子へ知らせるべく使者が発つ。
エジプト王宮では、メンフィスの帰国を待ちかねたキャロルが、一日も早い帰国を祈願するため神殿に詣でていたが、そこへ一部隊を引き連れたネバメンが通りかかり、視察に行くと挨拶もそこそこに駆け去っていく。いつのまにかネバメンが軍を動かしていることに驚くキャロルの心は穏やかではない。
 その時、ヒッタイト王宮では、いつまでも婚儀を挙げようとしない息子に苛立ったヒッタイト王が、挙式を強行させようとしていた。病床にある王子の容態が芳しくないと言い立てる臣下や王妃からの陳情にも全く耳を貸そうとしない。息子の身をを案じる王妃は心を痛める。回復の兆しが見えてきたとはいえ、依然としてイズミル王子は重篤な容態が続いていたため、病室から閉め出されて不満を募らせるタミュリスにも更なる衝撃がもたらされた。イズミル王子にはすでに愛する女性がおり、しかもそれはエジプトのナイルの姫だと侍女長から聞かされたタミュリスは、婚約者が自分を拒否するのはその姫ゆえかと青ざめるのだった。そしてとうとう、イズミル王子の体調がやや回復を見せたことを知った王から、嵐の神殿でタミュリス王女と婚儀を挙げるよう王子に命令が下された―――。
続報は9月にて。

【今月のお言葉】
王子たる者!
何よりも国の繁栄を願わねばならぬ
父の命令じゃ 王子に申せい 一日も早く婚儀をあげよとな!
タミュリス姫がこれ以上婚儀を待てぬと申しておるのじゃ

*1

【定点観測記】
1.イラスト集 続報なし
2.オリジナル図書カード:9−10−11月号いずれか購入(+1,000円定額小為替)で応募可能。イラストは去年の海のエジプト展の描き下ろしのなかの一枚。


3.雑感
久しぶりに投票を作ってみた。
日々サイレントな王家ファンをしているせいか、一般的な王家ファンのご意見を聞いてみたいな〜などと思い立ち、とりあえず4択をひねり出してはみましたが、希望あればコメントでも受けます。この記事がお目に留まった王家ファンの方、宜しければぽちっと集計にご協力下さいまし。




長らくこの雑感をお読みの方はお察しと思うが、私が選択するなら「2」だ。
ヒッタイト王国編の本格始動を待っていたので、今月は比較的目が滑ることもなくまあまあ読めた。美青年好き女王に振り回されるシバ王国の末路とか、ハッタリ王弟をのさばらせるユルユルエジプト王国の姫様話なんざ、はっきりいってどうでもいいので、イズミル王子結婚騒動の顛末をこそ読ませて欲しいんである。もっといえば、智栄子センセがこのイズミル王子結婚騒動の落としどころをどこに持って行くのか、王子を夢から醒ます気があるのかどうか、私が興味があるのはそこだ。同じことは妊娠した(らしい)アイシスにも言えるが、アイシスの消息はここ何年も聞かないので、せめて今後のイズミル王子に望みを託したい。
意に染まぬ結婚を親に強いられる王子様の苦悩というやつは、「記憶喪失ウマー」とか「一服盛って妖かし婚」と並んで細川マンガではわりとメジャーなネタだが、イズミル王子をそのままジュリオやアラン路線にスライドさせるのは、いくらなんでも無茶だろう。イズミルが一国の世継ぎの責任と引き換えにするのが、白昼夢のような我が妃への愛だというのは、何かの悪い冗談なのだろうか。もしや王子は結ばれぬ恋に苦しむ自分に陶酔したいだけじゃないのか、という邪推も涌こうというものだ。
イズミルの考えでは、神の娘と名高いエジプト王妃を略奪してきて自分の妻にすることがヒッタイトの国益に叶うというのならば、父王が進めるトラキアとの同盟のための婚姻政策はそれより劣るというだけの根拠を示さねば、父王の説得は難しかろうと思う。体調のよくない王子を案じるヒッタイト王妃や乳母の言動は心情としては十分理解できるが、この場合はどうしても感情的擁護論になりがちで、ヒッタイト王に鼻で笑われたら最後である。怜悧英邁を謳われたイズミルの最後の頼みの綱は、乳母や母の涙の応援のみというのはいかにも悲しい。この際屁理屈だろうが詭弁だろうが、父王に堂々と反論する姿を見せて欲しいものだ。
そこでおそらく次回登場するタミュリスの兄がキーマンになってくるのかなぁという気がする。仮にその兄が粗暴で無礼な態度をとってヒッタイト王の不興を買うとかすれば、トラキアとの同盟も見直される余地が出てきて嫁取れ外圧は薄まるかもしれないが、それって結局王子にとってはタナボタだしなぁ。王子は子どもの頃の旅の夢に耽るだけ、周りがオロオロしていたら何となくこの結婚話も相手方の自爆でうやむやになっちゃいました的展開だけはご勘弁。
思えば、王子が病床につく様になって随分経つ。血のにじんだ肩の包帯はもう彼のトレードマークになっているし、隙あればベットの上で湯気立つお椀から何やら呑んでる青白い人みたいになってしまった。今じゃ、王子=病人。
肩の負傷後、キャロルと何度も遭遇しているにもかかわらずこうまで引っ張る展開を見ていると、健康体のイズミル王子はもう描かれないんじゃないかと思ってしまう。語弊のある言い方かもしれないが、あの影のある感じが王子の色気で魅力ポイントなの〜という認定なら、この先王子はもうずっと流血しているしかない。作者としては、もしや王子をずっと流血キャラにしておきたい、いわゆる<萌え>でもあるのだろうか。
そういう萌えがあって悪いわけではないが、王家ワールドで描かれる「病」はナルシスティック全開で、インモラルな香りも薄いせいか私には惹かれるものがない。(そして度々口にされる割には「神」への祈りはエゴイスティック)。
私はここ数年家族の病気等で何度か病院の付き添いを体験したが、肉親が病院で衰弱する様を見続けなければいけないというのは、正直かなりのダメージだ。今でも病院に入ると特有の匂いのせいか、嫌な記憶がフラッシュバックするときがある。そうすると王子をずっと看病してきたムーラやヒッタイト王妃の悲しみはいかばかりかと思う。
例えフィクションのキャラでも病室に縛り付けておきたい、というのは正直よくわからないが、もしや愛する男性が体調不良で具合悪そうにしている様子ってセクシーだわという不埒な乙女心の暴走版なのだろうか。
男に対する目線と肉親に対する目線が混在しているせいか、このへんがよくわからないのよねぇ。
いまはただただ王子をあの病室から解放して欲しい。
そして心の牢獄から。