豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 ウェイバック -脱出6500km-

上京以来、気になりながら足を踏み入れたことがなかった映画館、銀座シネパトスで初めて観た。
ここは、なんつーか、いつも独特の(男臭い?)プログラムを組んでいるので二の足を踏んでいたのだが、関東では「ウェイバック」はここしか上映しておらず(*1)、どうしてもスクリーンで観たかったので、仕方なく。
最終上映で入った館内は予想より古く、黴臭い匂いが漂い、最近行っていない歌舞伎町のビルに点在していた小さいスクリーンの箱を思い出す雰囲気。お客は男性ばかり、10名ちょっとだったと思う。女性は私と、中年のカップルの人だけ。

でも、これは本当〜に銀座まで観に行ってよかった!
実は去年、飛行機の中でほとんど観ていたのだが、隣を気にするあまり観た気が全然しなかったので、日本公開を待ちかねていたのだ。(何しろマイラブ、エド・ハリス出演作なので)

『第2次世界大戦下、シベリアの矯正労働収容所から脱出し、6,500キロメートルにも及ぶ距離を歩き続けた兵士による手記を映画化した実録サバイバル映画』公式サイト

彼らは、歩く、歩く、歩く。ひたすら。
過酷な自然に阻まれ、仲間は次々と脱落してゆく。
それでも、彼らは歩き続ける。南へ。
出演者は少なく、全編に渡って大自然の中で、極限のやりとりが続く映画だ。
私はすっかり引きこまれ、終映後、しばらく席を立てなかった。

主人公は、ソ連占領下で逮捕され、妻の告発によりスパイ容疑でシベリアの強制収容所送りになったポーランド人男性。
彼が、どうして強制収容所より死が確実な脱走という究極の道を選んだか。
そうしてまで生きたいと思うのか、それがずっとわからなかった。
復讐か、妻に裏切られた夫の意地なのかが。
それがストンとわかるシーンがある。
もうここで死んでもいいんだと、エド演じるアメリカ人技師の気力が尽きかけたとき、吐き出された二人の心情、主人公がかける言葉の、静かな重みに心が震えた。

出演者の中では、意外に(?)コリン・ファレルが良かった。
粗野で凶悪な犯罪者を演じている。
受刑者の中でも圧倒的な暴力性と恐怖をまき散らし、刑務所内に君臨していた男が、いざ自由な世界に直面した時の選択が、あの時の彼の表情が、また何とも言えない余韻を残す。

私は果たして自由なんだろうか?、とそんなことをふと思った。

*1:公開は10月5日で終了