豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

9月になりました。
相変わらずだらだら過ごしています。
離職票が届いたので、ハローワークに行かなくちゃ〜と思いつつだらだら。
友人ネフェルちゃん(仮)が「慰問よ」とわざわざ届けてくれたミステリー小説類を読みまくっています。
仕事をしている時は、なんだか気忙しくてゆっくり小説を読む余裕もなく(しかしスマホでゴシップは読んでいた)、こんなにゆっくり本を読むのなんて久しぶりだ。前職場では読書好きの方が多かったので、日常的に本の貸し借り、読後感想が飛び交っていましたが、私はとてもとてもそんな気力はなく、皆仕事も家庭も忙しいのに時間作って読書して偉いなあと感心するばかりでした。
また先日、元同僚から手紙が届き、「今は解毒期間と思ってゆっくりして下さい」と書かれてあって、ちょうど宮部みゆきのミステリーを読んでいた時だったので、そうか!と膝を打ってしまいました。

名もなき毒 (文春文庫)

名もなき毒 (文春文庫)

去年TBSでドラマ化され、現在、続編「ペテロの葬列」が放映中です。(「ペテロ」は未読)
私は偶々両シーズン見ていますが、主人公のサラリーマン探偵杉村三郎を演じる小泉孝太郎の、いい意味での毒のなさがまさにハマり役で、いつも笑ってしまうのであった。。同僚テッシーこと手島(ムロツヨシ)と杉村さんの掛け合いがほのぼのしていて好きだー!

あらすじを説明するのはとても苦手なので端折りますが(汗)、この主人公は生来の人の良さから事件に首を突っ込まざるをえなくなり、なぜか謎解きをする羽目になる素人探偵。真面目なサラリーマンで、家庭ではよき夫、よきパパであります。
ただ彼の境遇に少し特異な点があるとすれば、恋愛結婚で結ばれた妻が、日本有数の財閥のお嬢様だったこと。
二人の結婚を認める条件として、妻の父である財閥会長から財閥広報室への転職と、今後財閥内での出世の望みを一切持たないことを提示され、彼はそれをのみました。
名もなき毒」はシリーズ2作目ですが、広報室に雇われた恐るべきトラブルメーカーの女性に振り回される杉村の苦闘と、同じ頃世間を騒がせていた無差別連続毒殺事件が並行して展開し、思わぬ形で両者は後に交差していきます。
苦味と、やりきれなさ、それでいて雲間からさす微かな希望の光を見つめたラストが、私は好きです。
ドラマでは、件のトラブルメーカー の女優さんの演技に鬼気迫るものがあり、何度も背中が粟立ちました。
いや〜身近にこの手のタイプがいたら怖すぎる。生まれついての嘘つき、常に何かに怒っているタイプ。
かといって、作中ではある人物に「今時の、もっとも普通の、正直な若い女性ですよ。正直すぎると言ってもいいくらいです」と彼女を語らせています。
これは、いまいち私の腑に落ちてこなかったのですが、後で、ああそうかと思った箇所がありました。

ひとつ私の意見を言うならと、義父は声を強めた。
「古屋明俊さんを殺した犯人も、原田いずみも、同じ種類の人間だ。極北の権力を求めて、どうしてもこらえきれずに行使してしまった人間だからな」
「権力を求める人間………………ですか」
「なぜそうなるのか、わかるか」
「私にはわかりません」
義父は一瞬、怖いような目で私を睨んだ。
「飢えているんだ。それほど深く、ひどく飢えているのだよ。その飢えが本人の魂を食い破ってしまわないように、餌を与えねばならない。だから他人を餌にするのだ」
(322ページ)



私のこの家に、汚染はなかった。家の中は清浄だった。清浄であり続けると、私は勝手に思い込んでいた。信じ込んでいた。
だがそんなことは不可能なのだ。人が住まう限り、そこには毒が入り込む。なぜなら、我々人間が毒なのだから。
原田いずみには毒があった。Aにも毒があった、Aはその毒を、外に吐き出すことで消そうとした。だが毒は消えなかった。ただ不条理に他者の命を奪い、Aの毒はむしろ強くなって、もっと酷くAを苛んだだけだった。
原田いずみはどうなのだろう。彼女の毒は、彼女自身を侵してはいないのか。彼女の毒は無限増殖し、どんなに吐き出しても枯れることはないのか。
その毒の、名前は何だ。
かつてジャングルの闇を跳梁する獣の牙の前に、ちっぽけな人間は無力だった。だがあるとき、その獣が捕らえられ、ライオンという名が与えられた時から、人間はそれを退治する術を編み出した。名付けられたことで、姿なき恐怖には形ができた。形あるものなら、捕らえることも、滅することもできる。
私は、我々の内にある毒の名前を知りたい。誰か、私には教えてほしい。我々が内包する毒の名は何というのだ。
(554ページ ; Aの部分はネタバレにつき伏字変換)

私たちは皆、身の内に毒を飼っている。確かに。
毒、悪意、攻撃性、八つ当たり?、つける名はなんとでも。

前にも少し書きましたが、私の前職場にひどいパワハラ上司がいました。
その人物の怒りスイッチが入ると、それはもうフロア中に響き渡る声で罵詈叱責が始まる。そしていつも長い。
これは指導だ、お前が心底情けないから言っているんだ、お前はいつも同じミスを繰り返す、本当に腹が立つ、と言いながら、もうそれは人格否定どころか抹殺級の罵詈を延々と。相手が女性だったら立派なセクハラになるような下品な言葉も多々あり。
そんなに怒鳴りまくっても同じミスが続くということは、貴方の指導に問題があるんじゃないの、とは誰も言えず。
ああ、また始まったよ、こっちに火の粉が飛ばないようにしようと社内一同首を竦めている。
私でも気づいたことに、その人物はいつも同じタイプの人をそうやって自分の感情のままに叱責するのでした。
要するに、性格が優しくて、おとなしめでハキハキ言い返して来ないタイプ(多少弁明したとしても、100倍になって口撃されるため皆黙ってしまうのですが)。機嫌のいい時は、からかいモードでなんだかんだと話しかけますが、大抵が自分の自慢話に賛同させるためか、相手の僅かな無知を見つけて手酷く侮辱するため。まさに玩具以外の何物でもありませんでした。さらに今時飲みニケーション信奉者で、疲れている妻子持ち部下を残業後引っ張り出し、行きつけの飲み屋でくだをまきつつまた深夜まで説教、というパワハラの見本のような人物でした。耐えきれずにその人が辞めても、次にまたそういうタイプをうまく見つけてきてそばに置き、同じことを繰り返す。

私も時々その嵐を被ることがありましたが、ある時、あまりにも理不尽な指摘に少々抗弁したところ、顔を真っ赤にして怒鳴り出し、よく見れば手がぶるぶる震えているのに気づいて、なんだか拍子抜けしてしまったのでした。
あ、この人は、自分のコンプレックスを隠そうとして、自分を大きく見せたいだけなのだ。
何とか自分を認めて欲しくてたまらない人なんだ。
だから、少しでも攻撃される前にこんなにも激しく攻撃するんだな、という風に。

それから、どんなにその人が怒鳴っていても、もう煩いというより、その人の根深いコンプレックスが透けて見えて息が詰まりそうでした。
誰にでもコンプレックスはあると思うのです。というか、コンプレックスがあってこそ人は強くも優しくも美しくもなれるのではないか。
ひどいパワハラをするその人物もですらも、裏を返せば飽くなき向上心、愛すべき単純さの持ち主でもありました。
ただ、私が嫌だったのは、その人物が、自分のコンプレックスゆえの痛みを他者への攻撃で慰めようとしているあさましさ。
禍々しく、生臭い飢餓感。
まさしく臭うような、毒々しい悪意。

そして、私は当時そこから逃げられないと思っていたのです。世間には色々な人がいるのだし、仕事上だけのつきあいだし、直接関わり合いはほとんどないから我慢すればいいんだと。
でも、そうはいいながら私は心の底で怒っていました。
その人物にも、というより、さっさと逃げ出さない自分の不甲斐なさに。
友だちにもネタにしながら毎度愚痴っていたし、帰宅すればまたOTTOをつかまえグチグチ。
日に日に怒りが自分のお腹の中で真っ黒に育って行くのがわかるような気がしました。
朝、エレベータが開く一瞬前、北島マヤばりに「さあ私は女優」と呪文をかけても、怒りは消えず蓄積されてゆく。
そのうちパワハラ上司も、同僚のささいな言動も嫌で嫌でたまらなくなっていきました。
何度、朝の乗り換え駅のホームで座り込みそうになったことか。

結局、色々なことがあってプツンと切れて退職してしまったわけですが、腹の中に溜め込んだ怒りを放出する機会はありませんでした。
薄まるのをただ待つだけ。それを同じくプツンと切れて退職した元同僚は「解毒」と称したのでしょう。
私は終始周囲に愛想良く応対し、無理難題言われながらも引き継ぎに邁進し、件のパワハラ上司にも懇ろにお礼とお別れの挨拶をし、記念の寄せ書きと記念品まで受け取り、朗らかに笑顔で退職しました。
そして退社する帰路、携帯から職場の履歴をすべて消去しました。

私の中のこの毒がいつ消えるのか、消せるのか、私にはわかりません。
第三者から見れば悩むほどのこともない、ささいな濁りでしかないのかもしれない。
小さく狭い世界でみた、よくある雑音で、囚われる方がおかしいのだと。

今はただ、あの丘を越えて、ちいさな希望を探しに行こうと思います。


。。。。。ああ、たまには読書感想でも書こうと思っていたのに、単なるキモチワルイ自分語りになってしまった。。。。

ドラマ「ペテロの葬列」も佳境に入ってきました。未読なので、ラストがどうなるのかはらはらしています。
友人ネフェルちゃん(仮)によると「サイテー」とのことなので、チョット不安なのであります。
(最後まで見るけどね!)