豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 「天は赤い河のほとり」外伝小説?

天は赤い河のほとり外伝―魔が時代の黎明天は赤い河のほとり外伝―魔が時代の黎明
篠原 千絵

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こんなん出てた。24日創刊のルルル文庫小学館の少女向けライトノベル専門文庫)からの発売だそうなので、きのう出たばっかりか?カイルの少年時代の話らしい。篠原氏は小説も書く方だったのか〜全然知らなんだ。さくさくと展開、堂々完結、着々と文庫版コミックス化も完遂、ついには公式番外編が活字世界で読めるだなんていいよなぁぁぁとか思うぞ。やっぱり。


お昼休みにこの外伝を立ち読みしてきた。文庫といえどかなり薄めの本、それこそ160頁くらいなのでそれなりに集中すれば一気読みも可能な分量だ。驚いたことにラストで「つづく」となっていて、こりゃ続きものだったんかーー!と本を取り落としかける。文体はあのマンガがそのまま文章になったような感じ。話はカイルの母上(ヒンティ皇后)が毒死した直後からスタートし、のほほんとしたザナンザ皇子の一人称で犯人探しとか周囲の諸々の事件人物関係が語られてゆく。ワタシはこの作品を完結後に一気読みして以来とんとご無沙汰しているので、山のように出てくる兄弟姉妹とか皇帝の側室の名前に混乱してしまった。んが、そもそも皇后暗殺犯が誰かなんて読むほうも最初からわかっているのだし、ふりまかれる噂話など気にせずサクサクと読み進むのである。おいおい、イルって大貴族のお坊ちゃん(元老院議長の息子らしい)だったのかよとか、いくらなんでも兄弟混浴サービスシーンは生暖かすぎるだろとか、この作者は絶対君主の寵をめぐっての女の権力闘争話になると俄然イキイキしてくるよなとか、それになんで遊び人カイルの濡れ場になると途中から三人称になるんだろうやっぱ臨場感重視?とか昼休みにこんな集中力使ってる場合かオノレは!続きは読む気なし。これならマンガで読んだほうが面白そうだもの。何より語り手が「世間知らず」の自称通り可愛らしすぎ…表紙はてっきり女の子かと思った。



曠野の舞姫ヒッタイトが舞台のライトノベルというと「曠野の舞姫」(映島巡)という作品もある。こちらはもうちょい時代が下がって、海の民が出てくるころのヒッタイト滅亡前夜の話。メインは恋愛じゃないのでけっこう血なまぐさい系。謀略のネタにジャレド・ダイヤモンドの「銃・鉄・病原菌」の家畜と伝染病に関する仮説をうまく盛り込んであったり、アマゾネスの正体に関する設定などが個人的に面白かった。実は本筋はあまり覚えてなくて、このヒロインの子が(成育史の影響もあるんだが)あまりにも気丈で腕っ節も強すぎたってのがワタシ的にネックだったか。

こちらは新バビロニアネブカドネザル2世統治下のバビロンが舞台の「イシュタルの子」(篠田真由美)。明らかに続きがありそうな終わり方だったので、続きを探したのに、どうやら作者が書く気がなくてこれで終わりらしい。しかもすでに本も絶版。ストーリーは半人半獣の不思議な子どもがでてきたり、超能力者とか超古代文明ネタが展開する伝奇小説。いやそこまでブッとばなくていいですぅ〜とはいいつつ、ユダヤ民族の受難やエラム人と通じるバビロンの大富豪の暗躍など読みどころはたくさんあった。ま、一番萌えどころというと、滅びゆく王国と壊れつつある大王を必死に支えるアミティス王妃と、彼女に想いを寄せるエジプト系の大臣のやりとりが好きで読んでいたワタシなのだが。

そういえば、去年図書館でステキな古代エジプト風のイラスト表紙に魅かれて借りた小説が、もろBLものでたまげた(気付けよ自分!)。青年エジプト考古学者がアクエンアテン王の統治下にタイムトリップしてしまい、金髪で白い肌の兄想いの王弟(もちろん美男子)に「王のために未来を教えろ」と自白剤かわりの媚薬盛られて××されるの……まぁ、結局二人は恋に落ちちゃうんだけど。あーそうですか不幸中の幸いですねで終了。

耽美よりは幻想的なほうが好きなので、面白かったといえばコレ。
中島敦最もうっとりしたのは「中島敦全集」に収録されていた「木乃伊」「文字禍」。どちらも古代オリエントを下敷きにしている。中島敦というと、国語の教科書に載っていた「山月記」の作者ねってイメージだったのだが、彼の作品には中国が舞台の小説の他にもあるとこの年になって初めて知る。なかでも「文字禍」が忘れがたい(これは昭和17年に書かれたものというのも驚き⇒青空文庫で読む)。太古人間は無意識に生きており、文字を発明したことにより神の声が聞こえなくなり意識を得た、というある学者の説を想起してしまった。「李陵」にも感動。これは昔読んだときはあんまりピンとこなかったのだけど。このちくま文庫版はコンパクトな割には読み応えあり、ちょっと得したきぶんになれた全集だった。

かように凸凹寄り道しつつ、どこかに面白い古代オリエントっぽい歴史小説がないものかと今日も懲りずに探求は続く。