豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 メトロポリタン美術館にて


NHKの世界遺産番組とやらで、またもエジプト編を放映していた。レポーターの女性の驚きっぷりがいちいちドラマチックで観ている私もドキドキしてしまったとはいうまい。旅は人間を童心に返らせますからね。
思い返せば3月某日メトロポリタン美術館で私の口は開きっぱなしだったに違いない。まず入り口でセキュリティスタッフにカバンを開けてみせたらちらりと見えた紙袋を見咎められ、「What is this?」とキラッと目を光らせて質問されたことに始まる。私はごく正直に「パ…え〜とブレッド」と答えた。すると「捨てて来い」と彼は言う。
は?である。ちょっと待て、この投げれば鴨を撲殺できそうな丸パンをわたしは一口も齧ってないんすよ?さっき朝市で買ったばかりだもん。いやいや。分かった。わかりましたよ。館内では食べないから、カバンはそこのクロークに預ける。OK?と嘆願したけど、答えはノー。入り口の扉のすぐ傍にゴミ箱があるからそこへ捨てて来いとにべもない。私は食べ物を粗末にするのはどうしても嫌だったのだが、捨てなきゃ入れてくれないというのじゃ仕方ない。その紙袋をカバンから引っ張り出した。すると…コロンとリンゴが一緒に飛び出し、ピカピカに磨かれた美術館の床をころころと転がってゆく。しかもそのリンゴにはバッチリ私の歯型が。来る途中、あんまり美味しそうなので地下鉄の中で齧っちゃったのをすっかり忘れていた。恐る恐る彼のほうを見上げると、世にも冷たい視線で「それも捨ててきな」と言っている!穴があったら埋めて欲しかった。そろそろ後ろに並んでいる入館街待ち客の視線も痛くなってきたので、私はリンゴ(歯型つき)とパンの入った紙袋を提げて脱兎の如く外へ出た。とすると、ゴミ箱の脇にも警備員さんが立っている。私はかれに引きつった笑いでもって「このパンは朝買ったばかりで一口も食べていないんだが、中のひとに捨てて来いと言われたの〜あなた要らない?」とまことに失礼な提案をしてみたのだが、彼もちらっと笑って「捨てるんだよお嬢さん」。初っ端から赤っ恥をかいて、私の憧れの美術館の初訪問は忘れたくても忘れられない思い出になってしまった。
それはさておき、メトロポリタンの古代エジプトコーナー、そこはまるで倉庫のようだった。護符にウシャブティにその他もろもろ、全部観てくれとばかりに太っ腹な陳列がしてある。それもいいけど、だいたい私はこのデンドール神殿の柱に触りたくて太平洋を渡ってやってきたというのに、夕方から会員制のパーティーがあるとかでセッティング中につきご覧のとおり立ち入り禁止だとぅ!おのぼりさんの私は堀の向こうで地団駄踏み、再会を祈願して5セント硬貨を投げ込んできた。仕方ないので、愛しのホルエムヘブの書記姿坐像の太ももをでれでれと撫で回していたら、館内スタッフに注意されてしまった。更には、楽しみしていた「白いハトちゃん」(=胸があるので有名なハトシェプスト女王の彫像)には展示区画がなぜか閉鎖中でお目通り叶わなかった。ええ”−−と「地球の歩き方」を握って嘆いていたら、件のスタッフさんが「こっちに同じ女王の顔したスフィンクスがあるよ」と連れて行ってくれたのだった。おなじ顔なのに、なぜこうライオンの着グルミ(?)きただけで笑えるのでしょうね、ハトちゃんや。