オシリス星追跡
王家ファンだと告白した時点で露見していると思われるが、私は実にショーもないことにしつこい性格である。
土曜とはいえ睡眠時間を削ってショーもない仮説を立て喜んでいる。我ながら軽く絶望しそうだ。
今月号巻頭モノローグで言及されていた「天空にセプデト(オシリス星)現れ」とは何のこと?
う〜む気になって眠れない。
古代エジプト神話関連の本をひも解いてみると、「セプデト星」とは、「シリウス」のことだと書かれてある。古代エジプト人はこの星の化身を女神と考えたらしい。それが、セプデト女神である。この女神はのちにオリオン座として知られることになる南天の星座を擬人化した神サァフ(Sah)を夫とし、息子である下エジプトの東の砂漠を司る神ソプドゥとともに三柱神を構成する。
そして女神の夫であるサァフ神は、「オシリスの光輝ある魂」と呼ばれていたそうだ。
ピラミッドテキストには、星への信仰をあらわす呪文が数多く存在するが、そのなかでオシリス神をサァフ(オリオン座)と同一視し、「死した王はサァフとなる」とか「サァフの住人となる」というフレーズがみられるそうだ。
つまり、古代エジプト人が「オシリスの星」と考えていたのは、オリオン座だったのね。
そして、セプデト女神は「イシスの魂」とも呼ばれていたという。
そうすると、この星神話においては、サァフ(オリオン)=セプデト(シリウス)/オシリス=イシスというふうに、二重の対称性を持つことになるのが面白いな。
古代エジプト人にとって「セプデト星」がどのようなものであったかについては、この本に詳しい。
シリウスは月以外の星のなかでもっとも明るく輝き、古代から人々はこの星に注目していました。シリウスという名はギリシア語のセイオリス(意:焼き焦がすもの)に由来します。ヨーロッパでは、おおいぬ座のアルファ星、つまりイヌの眼にたとえられ、中国でも天狼星と呼ばれていました。古代エジプト語のセペデトもその明るい輝きから「鋭い」「目立つ」「印象的」を意味するセペドが語源になっています。冬の星座とされるおおいぬ座のシリウスは、春に太陽と時を同じくして西の地平線に沈んでしまうと70日間ほど夜空では観測できなくなります。そして暑さ、乾燥がピークになる現在の暦で7月26日ごろ、日の出直前の東の空にシリウスが見られるようになり(ヘリカル・ライジング現象)、それとほぼ同じ頃にナイル川の増水期に入ったのでした。このことから、シリウスは増水の兆候、増水を知らせてくれる星として注目され、その神ソティス(セぺデト)は新年とナイルの増水をもたらせてくれる神として崇拝されたのです。
そしてソティスはナイルの増水をつかさどるサティス女神と同一視されるようになりました。また、オシリス神話のイシス女神と同一視されるようになり、イシス=ソティスとしても崇拝されていました。
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――ナイルの氾濫を告げる「星々の王女」セプデトこそは、時の女神であり、死者が天に昇るのを助ける死者の守護神である。
こちらも読み応えがある神話本。イラストがきれいで大好きだ。
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しかし、星座といえば、小中学時代の理科で習っていらいとんと御無沙汰な私である。
「オリオン座」ぐらいはさすがに知っているが(なにぶん田舎の冬の夜空ではひどく目立つ)、「おおいぬ座」ってどこよ?両者どういうポジジョンなの?接近してるの?
そもそも「ヘリカル・ライジング現象」って具体的にどういう光景になるわけ??
で、調べた。
すると、「オリオン座」と「おおいぬ座」はともに冬の星座で、けっこう近い位置に見える、ということが判明。
すごく大雑把な言い方をすれば、オリオン座の左下あたりにおおいぬ座のシリウスが輝いている、という感じになる。
星空を調べたのはこちらのサイト。
■Stella Theater web⇒ http://www.stellatheater.com/index.html
特に、ここにあるフリー天文・プラネタリウムソフト(「Stella Theater Lite」※3か月無料)が素晴らしいッ!!
- 観測地:エジプト・カイロ
- 視点 :東ー東南
- 日時 :紀元前1366年7月26日
- 時刻 :午前1時30分〜5時10分(日の出)頃
と指定すると、PC画面上で星空の移り変わりを再現してくれるのだ〜
深夜1時半ころ、東南の地平線に現れたオリオン座は時間がたつにつれ空に上がってゆき、3時頃、とうとうシリウスが地平線に現れた。シリウスはオリオンを追いかけ、5時ころ東の空から太陽が昇り始める……という光景が確認できる。
ほぉぉ〜である。私にはムラサキの薔薇のひともいないから、プラネタリウムには縁もなし。まさに小学校以来の感激。
なんちゃって古代人になった気がした。なにぶんお試し中につき、画像は引用できなくて残念だ。
古代エジプトの暦は閏年がなかったのでズレが生じるため、新年とシリウスの出現が毎年必ずしも一致するわけではなかったらしい。それでもピタッと一致する年が約1507年毎(笑)に巡ってくる。古代エジプトの新王国時代でいうと、それが紀元前1366年頃(「物語 古代エジプト人」松本弥/文春新書)。アクエンアテン時代の少し前あたりか。
ビミョーに王家っぽい年代やね。
そういうわけで、今月号の熱狂するあのエジプト民草の方々は、めでたく新年を迎え、夜中の1時半頃オリオン座(オシリス星)が現れ、続いてシリウス(セプデト星)が東の空から天空へ昇ってゆくのを見、その間夜明けまでのほぼ4時間くらい、松明振り回して大喜びしてたのかなぁ……などともうそう。
でもま、ひょっとして 「シリ違い」?という気がしないでもないけどな。
【5/11追記】
太陽とシリウスがほぼ平行に並ぶ、という意味で言うと
より「ヘリカル・ライジング現象」らしいのは、もう1か月前の紀元前1366年6月26日あたりと思われる。空の移り変わりを確認するべく、「自動モード」に切り替えてみてさらに感動。
「おお見よーーーー天空にシリウス星があらわれたぞーーわーーーー」とかアリポーズしかねない。
(↓イメージ図)