豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

 2004年11月号プリンセス連載分雑感

【今月のネタバレあらすじ】
古代シリア、ユーフラテス河畔の商人バザルの屋敷では、キャロルが名残を惜しんで離れないフェネックの仔(パピル)をなんとか宥め、諄々と言い聞かせて外へ逃がすことに成功していた。キャロルは高熱でふらつく体を押して、ヤドナナとともに脱出を図るが、まさにその時、宿敵アッシリア王アルゴンが到着してしまった。
目の前に引き出されてきた噂の金髪の奴隷娘をひと眼見るなり、アルゴン王は素性を見抜いた。そして真相を知らぬらしいバザルに娘の買取を申し出るが、すでにバビロニア王からも同様の申し出を受けていたバザルは、ここぞとばかりに皮算用。時間稼ぎにハーレムの女たちを駆り出し、アッシリア王一行を歓待する宴を始めるのだった。
一方、いったん別部屋に戻されたキャロルは、助けにきたヤドナナの力を借りて再び逃亡を図る。裏手の険しい崖をロープ伝いに降りようとするが、途中で縄が切れてキャロルが落下してしまう。
そのころ、キャロルとヤドナナの逃亡に気づいたバザル屋敷では大騒ぎが持ち上がっていた。バザルはあわてふためき、出し抜かれたとアルゴン王は激怒する。衰弱したキャロルは河船を使うはずと読んだ奴隷番ブスルは、手下を集めて河畔へ向かう。
突如、闇夜に燃え上がった炬火の群れ。
それらのともしびは、近くのユーフラテス河畔でキャロルの捜索を続けるエジプト王メンフィスの目に留まらぬはずもなく・・・


→来月お休み。新年特大号に続く。



【今月のダラダラ】
先月号は意外に読めた回だったため、正直なところ、私は今月号の展開を密かに恐れていた。元ファンの悲しさか、予想外のヒロインの踏ん張りに、思わずアツ苦しく語っちゃったはいいが、あの変身が一夜の夢だったらど〜しよぅうううう・・・・という危惧というやつである。夢なら醒めないほうがいいなぁと気弱になってしまったりなんかして。しかし、読まないことにははじまらず、今月号はトッペンカムデンへようこその征矢さんがトッペンシリーズの読みきりを描くというので、とりあえず雑誌は買った。

ぺらっとめくってそこに見出したのは…またしても!!赤帽赤腰巻の巨漢ブズル氏ではないですかぁ!!荒縄のような素晴らしい筋肉美に拍手ぅ〜〜右手に血刀、左手に炬火、左上にはどんどん分厚くなる親爺のタラコ…。アナタぁ〜の燃える手で、アタシぃを捕まえてぇぇぇ〜〜〜♪♪いうフレーズが、あたくしの頭の中に鳴り響く。なんつーか、今回のカラーは凄すぎてノーコメントというしかない。確かにこれは細川センセにしか描けないと思うのよさ。
中身は、ひとまずホッと胸を撫で下ろし。
悪くはない。
少なくともキャロルはまだやる気ありと見た。アルゴンが(人間サマ)のなかで一番乗りっていうのは正直予想外だったけど(っていうことは、「意外な客」ってアルゴンのことなの??)
ひょっとして、これから先の展開こそは、私のかねてよりの疑問に答えてくれるんではないかという期待すら抱かせる。
ここ数回の連載で、キャロルが、「わたくしは奴隷ではありません!」ときっぱりと言うシーンが何度も出てくる。それを読むたびに私としては、じゃあ、あなたの「どこが」奴隷とは違うというのかはっきりさせてもらおうじゃないの、ええ?と思ってしまうわけ。

私は心底知りたいんだけどね、キャロルお嬢さん。
いったいあなたと彼らとではどこが違うというのか。
外国人は見つかれば死罪との布告を知りながらあなたを匿ってくれた、奴隷のセチ母子と。
あるいは、命を助けてもらったとはいえ献身的に手助けしてくれる奴隷の踊り子ヤドナナと。
もちろん、生まれながらの奴隷で、腕一本舌先三寸でいまやエジプト王弟待遇にまで成り上がったへネタス(ネバメン)でもいいわよ。あなたと同じように砂漠の盗賊にさらわれてきて、奴隷に売られてしまった商人のおかみさんたちでは?
階級制フィクション愛読者の私としては、そこのところをハッキリさせてもらいたいんだわ。まさか、ただ「私はエジプト王妃だから」っていうのが否定の根拠じゃあるまいね。

なぜって、至高の身分の人間でも、精神は奴隷並という輩は存在しうるから。ちなみに、奴隷根性というのは自らで決定する事をひたすら避け、誰かにそれをやってもらい、その結果生じたことについて何の責任も負おうとしない人間の性根のことをいうんだそうな。だとすれば、自ら危険を引き受けたセチとセフォラは、少なくとも精神上においては奴隷ではありえないやね。へネタス=ネバメンは最近怪しいけど、気概だけはある。ヤドナナは母性愛が強すぎる嫌いがあるにせよ、依存キャラではなさそう。

そうそう、それについて「トッペンカムデンへようこそ」のなかに、とてもいいセリフがあったなあ。主人公のローラ姫が、後継者争いに血道を上げている隣国の2王子を一喝したときのセリフだったと思うんだけど。

「王というのは、ひとより優れた人間のことではありません。人より多くの責任を負ったもののことを言うのです」
一見ほわわ〜んとしたお姫様がこういうことをさらっと言うのよ。あたしゃ、シビレたね。
(余談ながら、征矢さん思い出の泣けた本というのが「銀河英雄伝説」だそうである。ヤン・ウェンリーがお好きだとか。思えばさもありなん〜という気がする)

だとすれば、キャロル、あなたは奴隷ではないどころか、ひとより多くの責任を負った人間ということになる。好むと好まざるとにかかわらず、メンフィスのヨメになると決めたときにその道を選んだことになるね。その意味を知ろうとせずあなたが「奴隷ではない」というなら度し難いバカ王妃というしかないのだが、「メンフィスの足かせにはならない」という決意にわずかに希望はある…のだったらいいのだけどなぁ。これまであまりに愛されて当たり前、崇拝されて当たり前、何かしてもらって当たり前のフザケタ境遇で浮かれているキャロルにはうんざりしてたのだ。もっとはっきりいうなら、キャロルの鼻持ちならないならない独善家ぶりに愛想が尽き、完全に見放していた。

だから、先月・今月あたりになって、キャロルがパピルに縋らなかったことに驚いたし、ついてこようとするヤドナナを巻き添えにしてはと押し止め、「あなたの親切は忘れません。生きて逃げられればきっとあなたに会いに行きます」とお礼を口にするに至っては驚天動地。

『血止めの布を差し出されたら、せめて「ありがとう」ぐらい言ったらどうか』、と以前の感想でキャロルの無礼に憤慨してしまった私としては、小さいシーンでもキャロルが感謝と思いやりを知る人間であることが描かれていたので、ひとまずホッとしてしまった。(うぇ〜これじゃ、まるで説教ババアのようじゃないか)。

逆にいえば、生きて帰れないかも、と思うくらい現在の体調がよくないのかもしれない。しかしーーー私としては、馬鹿ップルの片割れor幸せボケ王妃の汚名にまみれて腐り果てるキャロルを見せられるくらいなら、孤軍奮闘の健気な奴隷娘として砂漠の露と消えられるほうがなんぼかマシ。私はこのド少女マンガ愛読者のくせして、メンフィス(イズミル王子)&キャロルラブラブには全く興味がない。メンフィスとキャロルの二人が何らかの事情で引き裂かれ、両者が頭と体力を振り絞って困難を乗り越え出来れば再びめぐり合う〜というパターンな話を読んでスッキリできれば至極満足する。(なので、キャラ投票なんか全く興味がないんだわ、秋田書店サマ。何回やったら気が済むんですか、つーかそれ最終回早期実現に向かって役立ててくれるんですか??)

そうはいっても「メンフィスを苦しめる足手まといにはならない」と頑張るキャロルを見ていると、途中で命を落としたりしたら、それこそメンフィスにとっての永遠の責苦が完成しちゃうのだから、やっぱキャロルには這ってでもエジプトに帰還してもらわないといかんのか?と思いなおす。いや〜つくづく王様ってのは因果な役回りだ。勿論、その厳しさゆえの葛藤とか孤独とか喜怒哀楽とか、そのへんの諸々のドラマに私は執着しているから、毎度ブツブツ言いながら読んでしまうんであろう。

にしても、王様といえば、久々に日の当る場所に登場したアルゴン王の詰めの甘さこそどうなんだ。積年の恨みより、目の前の美女の巨乳に気をとられるとは情けない。キャロルの手を取って復讐の時来たりと舌なめずりするシーンなんて、もっともっとゾクゾクさせる「絵」になるはずなのに…おいおいまた宴会になだれ込むのか、キサマ、このバカチンはぁ(呆)。女に弱いお調子者キャラであるってことは、アルゴン王にとって決してマイナス点ではないと思うけれど、なんかこう…う〜ん、つまり近頃始終浮ついてるからバカ以外の何者でもなく見えちゃうのがとっても残念なのよね。そのバカさ加減も、智栄子センセーの手にかかると独特の「おバカ」な味わいで妙に可愛らしいんだが。でもそれじゃ困る。昔は確かに感じたあった「血に飢えた獰猛なアッシリア人」風の怖ろしさが全然ないんだもの。キャロルは絶対にアルゴンと目を合わせようとしなかったけど、私はあそこで見たかったなぁ。せっかくあれだけ派手な過去の因縁があるんだから、アルゴンとキャロルの息詰めてしまうようなやりとりを見てみたいってのは、そんなに無理なお願いなのだろうか。キャロルが所詮助けられキャラでしかないのは寂しい。

「久しいな、"黄金の麗しき貴重なる娘”。俺がそなたに再びあいまみえるこの日をどれほど待ったかわかるか?ゆるゆるとその身に知らしめてやろうよ」
「お久しゅう。世に並びなき卑怯者なるアルゴン王よ。このたび新城落成と伺い、慶賀の念にたえませぬ」

なーんちゃって。先走りすぎたか。
オソロシイといえば、恐ろしく職務熱心な奴隷番ブズルがステキだわーーー!
「アルゴン王だって美女と騒いでたのに」「それって八つ当たり」「なんちゅう御執心!疲れますナ」とボケたギャラリーのツッコミを尻目に、いち早く逃亡奴隷の探索に乗り出し、女たちの先回りしようと手下を指揮しちゃう。子供の頃「安寿と厨子王」読んで、恐ろしさにドキドキした山椒大夫の奴隷監督を思い出した。「ふてえ奴隷だ!追え〜!!」のあたりはヤツの銅鑼声が聞こえるような良い場面だと思う。

現時点で、パルバリソッス河港方面に向ってメンフィス・バザル・アルゴン・キャロルとひとつのグループが集中しつつあるから、今度は一騎打ち再び〜〜で誰か(全員でもいい)ユーフラテス河の藻屑と消えてくれるとスッキリするんだけど。