豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2008年1月号月刊プリンセス 連載分雑感

【今月のネタバレあらすじ】
月刊 プリンセス 2008年 01月号 [雑誌]下エジプト王宮にてミノス王を迎えての祝宴の最中、海上商人タルシシの最期を知る荷頭プシタに対するメンフィス王直々の引見が始まった。王妃はじめ臣下、ミノス王らが興味深々で見守るなか、一介の船乗りにすぎないプシタは、突如引き出されたこの場の煌びやかな雰囲気にすっかり呑まれてしまっている。
一方、王から召喚を受けたネバメンは自分の過去を知るプシタ登場に動揺しつつも、この窮地を切り抜けるすべを必死に考え、一大バクチに打って出る決心をする。タルシシ殺害事件から5年も経っていることから、プシタにはまさか自分が元奴隷のヘネタスとは判別できまいという一縷の望みに賭けたネバメンは、ことさら豪奢な金ピカ衣装に身を包み、大神官に先導させて謁見の場に姿を現した。
待ちかねていたメンフィスは、弟ネバメンのために養父タルシシの最期の様子を語れとプシタに命じるが、プシタはタルシシだんなのお子にネバメンという方がいたことは聞いたことがないし、こんな立派な方にも会ったことがないと困惑顔。一同驚く。と、そこへネバメンが覆いかぶせるように自分はお前を知っているぞ、主人タルシシの船が沈んだのになぜお前は助かったのだと責め立て、更にはカプターも加勢。お偉いさん二人から糾弾されてパニックをきたしたプシタが事件当夜はタルシシの所用で使いに出ていたので、沈没の瞬間は目撃したが、原因の詳細は知らないのだと必死に釈明。ネバメンは内心安堵しつつ、悲嘆にくれながら自室に退去。王妃と王は大いに同情して見送る。引見の様子を見守ってきたイムホテップ宰相とミヌーエ将軍は、真相に繋がる事実をつかめなかったものの王弟の疑惑は依然として消えない。ミノス王は自分より年長に見える「王弟」に微かな違和感を覚える。
窮地を切り抜けたネバメンは、いまや自分は偉大なるエジプト王の弟、そして養父タルシシを悲劇的な沈没事故で失った気の毒な身という同情を集めることに成功したと満足して不敵に笑うのだった。
こうして様々な思惑のもと祝宴は終わり、手作り料理作戦が大成功であったことを王妃は無邪気に喜んでいる。一方、ミノアの王太后の親書を受け取ったメンフィス王は、ヒッタイト王が世子イズミルの妃に黒海沿岸のトラキア国の王女を迎えようと動いているらしいという最新情報を臣下に開示。思わぬ知らせにエジプト王宮にも静かな波紋が広がろうとしていた。

⇒2月号に続く。


【今月のお言葉】
そうか…ネバメンよぅ 
そんなに悲しかったのか
だからあんなにイライラしていたんだな
*1


【今月雑感】
まず、イラスト集情報がちらっと出ていた。
今月号インフォメーション欄によると「読者のみなさんから多くのお問い合わせをいただいている「王家の紋章」イラスト集は、現在収録イラスト厳選中です!発売日が決まり次第本誌でお知らせしますね〜!!」とのこと。
「厳選中」ということは、つまりある程度取捨選択がなされる、と。全作品を収録したイラスト集ってのは、採算面でやはり難しいということだろうな。王家カラーイラスト愛好者の私としては残念。まぁ、出るだけマシかということにしておくけど。
今月号、雑誌表紙を飾っている「王家の紋章」、「ネバメンの悪事は暴かれるのか!?」とのコピーも添えられている。そしてさりげなく、値上げしてる。定価380円→390円とじりじり上がり、そしてついに今月から定価400円。灯油、納豆、ちくわ、牛乳、インスタントラーメンに続き、プリンセスよお前まで。
ああ、これも小泉失政のツケか――

ついでにイラスト雑感。
月刊 プリンセス 2006年 10月号 [雑誌]月刊 プリンセス 2008年 01月号 [雑誌]王家の紋章 (19) (Princess comics)

どこがどうと言えないのだが、私はメンフィスのカラーのイラストの顔に最近違和感を覚える。確かに「女と見まごう美青年」顔で、華はあるし、一見いかにも彼らしくはあるのだが……こうして昔の絵と並べると、なんというか今の彼の顔からは覇気が感じられないのだ。キャロルに関しては昔のままなので余計にそう感じる。今のメンフィスの顔からは猛々しさ、物騒さが薄まっている。目がつりあがり気味で、顔もどこか丸顔になって、表情自体もどこか憂いを帯びて見えるせいかなぁ。昔の彼の眼は、「目が据わった」感のある平行四辺形だったから。人を寄せ付けない雰囲気があって、王らしかった。




さて中身。
ネバVSプシタ対決初戦は、ネバ唯一の取り得である「クソ度胸」でもってド庶民プシタにハッタリ勝ちという、ある意味最も予想された形で幕が下ろされた。
いやまあ、これはもうどーでもしてくれと申し上げておくが、読んでてこんなにメンフィス王がドアホに見えて仕方がないのは、私が根性曲がりのナナメ読者だからですね。
ファラオのお優しさにぶったまげたのもこれが初めてじゃないが、今回プシタを呼びつけてタルシシの最期を語らせた王は、ネバメンの過去調査するつもりはさらさらなく、純粋に弟のネバメンを慰めてやりたかったのね。つまり慈悲深い兄上の愛情の発露であったと……
ネバメンの嘘泣きにころっと騙された兄上はうるうる目でモノローグ。
「父か 思い出す 悲しい父上との別れ……ネバメンも養父との別れはつらかろう。しばらくはそっとしてやろう」


永遠にアナタをそっとしておいていいですかファラオ。
もうこれからは少しでも現実的なことは、ミヌーエかイムホテップあたりに任せてさ。あなたはじゃらじゃら着飾って舟遊びしたり宴会で酒飲んでお妃さまを溺愛する合間に思いついたように新都工事の指揮でもしてらしたらいいのよ。そんで、行き当たりばったりネバメンあたりに王位簒奪されりゃいい。父上との別れあたりを持ち出されると私の中の(もうそう)ボルテージが上がるので、もうこれ以上性善説論者で兄弟愛に満ち溢れた近頃のファラオ様のことは、一種のネタとしてあまり深く追求したくないというのが私の本音。今回のプシタ証言によって、私のかねてよりの疑問「荷頭のくせになんで事件当夜に別の船に乗ってたか?」ていうのはいちおう解けた。あの夜、プシタはたまたま遣いに出されて難を逃れたのだった。そしてまたタルシシの所有していた船は3隻あったということも判明。ということは、あとの二隻の行方が今後のネバメンの正体バレ展開に絡んでくるのかなぁ……んで、地道に情報収集して王弟の過去を洗ってた将軍と宰相の活動がファラオの逆鱗に触れて両者追放されたり――あるわけないのだ。
メンフィスは、愛を説くヨメにすっかり感化され、慈愛したたる青年王になって成長したという読み方をしなければ、今の王家の空気にはついてゆけない。
ということはつまり、私はOKKY(王家の空気が読めない)なひと?
たぶん私はこのマンガに対して、孤独感を心に埋め込まれた神王たる宿命を背負った若者が、時空を超えてやってきた現代娘に関わりあうことによって変わってゆく(変えられてではない)という、ビルドゥングスロマンを求めているんだと思う。だから二人はある意味好敵手でなければならない。それは少女のほうにも同様なことがいえるし、恋敵たちにも、敗れるものたちにもそれなりの血肉を感じたい。男が女に都合の良い庇護者になり、女の癒し役でよいとされる世界において「孤独」は無いものとして扱われるらしい。私はそんな教義は信じないけど。

攻撃は最大の防御であると言われるが、ネバメンがプシタを成金衣装で威圧しながら言いくるめてしまうあたりの展開はけっこう好きだ。深く考えていないくせに自信満々で己の思う通りに世が動かなければならないと信じるネバメンの異様な執念が生々しい。メンフィスやキャロルあたりの薄っぺらい愛情溢れるシーンよりも、よほど迫力がある。生まれながらの奴隷として船倉でイジメ抜かれて育ち、いまやエジプト王の弟とまでなりあがったネバメンの妄執を、お優しくお正しい王と王妃が打ち砕けるものなら砕いてみろっての。


ところで、ラストでいきなり炸裂した驚きの展開ならぬ王家ゴシップ。
イズミル王子の花嫁候補としてトラキアの王女が浮上した。
いいんじゃないか。結婚しておしまいよ、王子ぃ〜〜と私はもろ手を挙げて賛成する。
いつまでも振り向いてもらえぬ脳内嫁にべんべんと執着して、肩には銃弾、鼻には斜線、唇からは常におお〜姫よ〜のバカのなんとやら。これ以上クールな芸風と賢王子の令名を地に落とし、都合が悪くなれば頭まで悪くなる汚れキャラのままであなたは満足か。
古代ギリシア時代、バルカン半島に独自の黄金文化を開いたトラキア人の祖先がヒッタイトに嫁入りってのもなかなか面白いではないか(史実的には時間が合わないかもしれないが……まぁ王家ですからそこんとこは見逃して)。それに、ヒッタイト人はもともと黒海沿岸からアナトリアにやってきたという説もあったそうだから、意外と王子とはウマが合うかもしれないじゃないか。
と思って検索していたら、ナショナルジオグラフィック(日本版)のサイトで、ちょうどいい写真を見つけた。トラキア人って馬術に優れ、弓と槍を操る勇敢な戦士として恐れられたひとたちだったらしい。剣闘士スパルタカスもトラキア人だったなんて!トラキア王の墓から出土した女神の浮き彫りのあるすね当てとかステキ。
■特集:ブルガリアに眠るトラキアの黄金
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0612/feature05/index.shtml
遺物写真はこちら
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0612/feature05/gallery/index.shtml

願わくば、遠からず登場するトラキアの姫君とやらが、王子のせいでキャロルに一方的な敵意を募らせてみるみるうちにブスでイヤな女になったりしませんように。

*1:ドMなペルト