豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2010年6月号月刊プリンセス連載分雑感

月刊 プリンセス 2010年 06月号 [雑誌]
【今月のねたばれあらすじ】
シバの王城では、女王が主催するエジプト王歓迎の宴が始まる。
サメの海に誘い込んで殺害を謀ったことなどおくびにも出さず、宴の席で急接近を図ろうとする女王の態度は、メンフィスの不審と困惑を誘う。女王の臣下たちも、いつもの女王の気まぐれが始まったかとヒヤヒヤしながら事態を見守る。
女王は、若く美しいエジプト王に間近に接し、何とか靡かせようと色香をふりまきあれこれ誘いかけるが、メンフィスはあくまで乳香の約定を結びたいとの主張を譲らない。
これを侮辱と受取った女王は内心激怒しつつそしらぬ顔で約定準備と断り奥へ引っ込み、インダス太子から贈られた獣に王を食い殺させよと臣下に命令。驚愕した臣下は必死で女王を諫めるが、事故で片付けられると強気の女王は、聞き入れぬことなく広間へとって返し、メンフィスを庭園の先にある館へ誘い出した。何もしらぬメンフィスは、カリビル大臣に先導されるまま森に囲まれた館へ進む。が、その時、木々の陰に獣の影を見咎めた侍女たちが騒ぎ始め、一行の注意を引いた瞬間、メンフィスの頭上から獣が襲いかかり、たちまち乱闘となる。
喰われてしまえとほくそ笑むシバの女王、王宮内で国賓に一大事あれば王国の威信が地に堕ちると焦るカリビル大臣の見守るなか、手負いの怪獣と対峙するメンフィスの運命やいかに!?

続きは7月号にて。

【今月のお言葉】
な な なに〜〜〜〜〜〜ぞ
この王の威圧感!!
この女のごとき若い王は蒼黒の海での襲撃がわたくしとはしらぬはずぞ
なのに――――
*1


【定点観測記】
1.新刊情報→6月16日(水)55巻

2.雑感

華麗に34部スタート。
いつもにましておいおいおいおいおい…の連続だったが、今回の一連の女王渾身の粉かけ作戦を読みながら、笑うより何より、シンドゥ太子はこの女王にあれほど(→太子を侮辱した魔性の女の亭主をサメの餌にしたいくらいと思わせるくらい)気にいられていたってことは、彼がどういう外交くりひろげていたのか想像がつこうというもの、と考えてしまうのは勘ぐりすぎか?
女の色香でメンフィスを篭絡しようとするのがケシカラヌ!などというつもりは毛頭なく、単に女王の色香の使い方がいちいち頭が悪そうなので、萎えるよ〜〜
例えば、女王が宴席でエジプト王に酒盃を勧めたところ、毒殺を危惧するミヌーエ将軍が代わりに受けようとするシーンがある。ああこれはアッシリア編でもあったな〜と読者なら思う箇所で、ファンへの一種の目配的シチュ。
私もあのシーンは好きだ(単にメンフィスがいたぶられるのが好きともいう。はっはっは!)。
アルゴンの挑発的な言動に怒り心頭ながら、人質に取られた(と思っている)キャロルの安否を気遣い、王の誇りにかけて侮辱に耐える若き少年王というシチュエーションが萌えどころではないか。バイセクシャルっぽい雰囲気のアルゴンの怪しげな物言いや残酷さも、二人の王の個性を引き立たせていたと思う。
対する今回のシバの女王は、ミヌーエに無礼な臣下めと逆上し、酒盃を叩きつけてブチキレ。そこへついと割って入ったメンフィスが「わたくしは、御身の招きを受けて貴国へ来る海路で大いなる危難に遭遇した」とさらっと牽制しつつ、自ら酒盃を空けて臣下の無礼を謝罪し、女王を怯ませるのである。昨今、キャロルの子守かと見まごうファラオの珍しい大人びた女あしらいで興味深いシーンなのだが(どちらかというと、この手の煙に巻くやり方はイズミル王子がやりそうだ)、女王はファラオに自分の魅力が通じないことにイラつき、ついには、シンドゥ太子の置き土産の獣とやらに食い殺させて、事故死にみせかければよいとか白昼夢のようなことを言い出すのである。
カリビル大臣曰く「一時のお腹立ちは未来の大望を潰しまするぞ まことにご気性激しく こうなられては手がつけられぬ」という女王の性格らしい。
気性が激しいという点ではメンフィスだって負けてはいないし、気まぐれというのなら、他に気まぐれなキャラは大勢いる。気まぐれでここまで押し切る細川マンガはスゲーですわ。

でももにょるのよ。
もし、シバの王が女でなく、男王だったら、こういうやりとりであっても、ここまでもにょっとした気分にはならなかったかもしれない。
ヒロイン・キャロルの造形が、外見からしてちっぽけな少女のままで、優しくて、無邪気で、愛らしく、善良で…と口を極めて周囲が絶賛するような女性の美点をかき集めてつくられているのに対し、悪役であるシバの女王は、女の嫌なところをかき集めた描き方をされることが、私は納得できない。
そりゃあ、私もシバの女王を応援する気はないが、それはメンフィスをサメにきっちり喰い殺させる作戦が立てられない女王の不甲斐なさにがっかりなのであり、ましてそのお粗末さを勘違い気味の女の色香でどうにか出来ると考えるバカさ加減に腹が立つのである。
キャロルの無垢で善良な少女性を引き立たせるために、この先も、シバの女王はスタイルも物言いも成熟した(しずぎた)女性にされ、加えて暴力的なところや、残酷さや、気まぐれさを強調されるしかないのだろうか?女性はキャロルのように永遠の少女であるべきというメッセージが垂れ流されるのだろうか?
私はそれはある意味危険なメッセージだとしか思えない。だって、女を特定の型に入れ込んで、それ以外は悪と言っているのに等しいじゃないか。私のような出来損ないはどうすりゃいいのだ。

ふっと、想像してみる。

もし――もし、シバの女王
キャロルか、ミタムン王女かミラのような華奢な外見で、
いや、逆にカーフラ並でもいいが
キャラとしてアイシスのような情熱でシンドゥ太子を愛したがゆえに、
アルゴンのような愛嬌でもって、
全盛期のイズミル王子並の優雅さと理性を駆使し、
時にはラガシュのように狡猾、
アマゾネス女王のように剛毅
そういうシバの女王が、メンフィスと丁々発止のやりとりを繰り広げたってよいではないか――と。

いかが?

*1:シバの女王@かなり動揺中