豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

2010年10月号月刊プリンセス連載分雑感

月刊 プリンセス 2010年 10月号 [雑誌]【今月のあらすじ】
父王よりトラキア王女タミュリスとの婚儀を挙げよと命じられたイズミル王子は、無理を押して病室から出、父王の元へ伺候する。歩けるまでに快復した息子の顔を見てことのほか喜んだ王は、更にトラキアとの同盟のための婚姻を薦めるが、イズミル王子はきっぱりとこれを断り、父の許を離れ自らの望む生き方きるため城を出ると告げる。息子の反抗的な宣言に王は激怒するが、王子の決意は揺るがない。婚約者であるタミュリスには一顧だにせず、母王妃に別れを告げると側近のハザズ将軍、乳母ムーラらとともに、幼い頃教えを受けた聖者ラバルナ師の住まうエルジャス山へと向かった。

 続きは2ヶ月先、12月発売の1月号にて。


【今月のお言葉】
王子よ・・・
王は・・・あのご気性です
逆らう者はことごとく叩きのめし――
戦で征服し・・・
何事も思いのままに生きてこられた
この後も人の心を察することはないであろう わが夫ヒッタイト王・・・
このたびのこと
そなたを苦しめる結果になったことを許しておくれ
*1

【定点観測記】

1.イラスト集続報なし
2.オリジナル図書カード(全員サービス)実施中


3.雑感
プッツンですか。敵前逃亡ですか、イズミル王子。
あやうく雑誌引き裂くところだったわ。イズミルの宿敵(?)従兄弟ジダンタシュがただの酒乱粗暴男だったと判明した回にも大いにガッカリしたけど、イズミル王子の結婚キッパリお断り宣言も超ガッカリ、マックスガッカリ、ウルトラガッカリカリカリじゃーーー(以下エンドレス)。
初読一日目は今後購読やめてやる(怒)!と本気で頭にきたが、もともと悠久の時を超えた無垢な愛とやらが至上命題とされる世界で、世継ぎの責任をどう考えているのかと眦吊り上げて憤るほうがどうかしているんだろうなぁというため息つきつつ、さあ、ゴミ出しの準備でもするか。

前々から、横暴を極める父王に対し我慢に我慢を重ね、時折「ご命令には従えぬ」と漏らすこともあった王子の堪忍袋の緒がついに切れた、といったところでしょうが、私はよくやったと思う以前に、王子が父親に叩きつけた決別の言葉になんだかなあと思ってしまうのです。
「わたくしは今日まで父上のご命令どおり、父上の望まれるままに・・・生きてまいりました・・・幼い子どものころより諸国を旅し・・・さまざまな国をめぐり・・・さまざまな情報を集めて父上のもとへ送ってまいりました」
「こののちわたくしは父上と離れ・・・わたくしの望む生き方をいたしたいと存じます」

なんと言いも言ったりという感じだが、正直今更という気もします。
世継ぎにもかかわらずイズミル王子が諸国を旅して滅多にハットウシャの王城にはいないらしいというのは、何度も描かれていましたが、私は王子自身が広い世界を見て、知識を深め、見聞を広げ、それがひいては国のためと思って自発的に旅暮らしをしていたのだろうと思っていたのです。が、今月の王子の言い草を聞いていると、まるでそれは不本意な日々であり、父親に強いられたものだったとでもいうようです。確かに偵察を兼ねた旅暮らしの日々は過酷であろうし、マッチョなヒッタイト王が、優秀な息子を密かにライバル視して口実を設けて身辺から遠ざけたということも多分にありそうな話ですが、そういうこともひっくるめてイズミル王子は旅暮らしを望むのだろうと私は考えていました。たとえ今は父王の尖兵、駒にすぎなくても、精力的な父王はいずれ老いて衰え、たった一人の世継ぎである自分の時代が来る。それまで着々と力を蓄え、王国の中で存在感を増し、その時を待てばよいと、冷静に構えていられる器量がある人だと思っていたのです(そういう意味での冷静沈着、英邁な王子だと)。
でも私はどうやら彼のキャラを読み間違えていたみたい。


王子は父王の仕打ちを心の底では恨みに思っていて、この時とばかりに愚痴り、好きな女と結婚できないのだったらあなたの命令にはもう従わないとブチきれちゃうひとだったのね。この言葉、聞きようによってはわたしの意志を無視するあなたが悪いのだともとれます。
さらに王子の決意を補強するかのような「王が常に独断で専行なさりお止めしてもとどまらぬ」とか「人の心を察することはない」などと、まるでヒッタイト王に人格的問題があるとでもいだげな母王妃の発言。そして「あとはこの母に・・ヒッタイト王国のタワナナンナシュであるわたくしに任せよ」(キリッ)と餞の言葉ともに息子を送り出す母王妃なのであった・・・。


母子そろって寝言は寝て言えと言いたい。
王様なんて、まして古代世界に覇をとなえる帝王ならばあんな父親、ごくごく普通でしょう。イズミル王子が父親とソリが合わず何かにつけ横車を押されて苦労するという点が、若くして一国の頂点に立ち(そして基本的に家族愛に恵まれた)メンフィスとの違いで、王子の個性と思うところなのですが、イズミル王子が今回選んだ道というのがこれかというのは失望以外の何者でもない。
ひとは、とりわけ、王家の者は、自らが望む生き方などできない。それを望んだときは必ず破滅が待っている。傍からどんな順調に見えてもメンフィスにはメンフィスの苦悩があって、イズミル王子の苦悩とは関係のないこと。イズミル王子は優しい夢に逃げ込まず、苦悩のなかで、自分の運命を受け止め王国に対する責任も果たす道を探して欲しいと思うのです。そうして毅然と歩いてゆくあなたを見たいのだ。歴史もの愛好者としては。

世継ぎの王子が父王に反抗するということはつまり、王国を二つに割るということですが、異国の王の妃を得るためにそれも已む無しというこのスイーツ発言を、一般臣民が支持するとは到底思えない。
王子はそれがわからないし、たとえわかっていてもついてこないやつは自分の王国から切り捨てるということなんでしょう。
そもそも、最近の展開で全く言及されていなので設定に入れていいのか迷うけど、イズミル王子はすでにキャロルと「結婚」していますわね。
両親臨席のもと、嵐の神の神前で誓いを交わしたことはヒッタイト首脳部には周知の事実で、イズミル王子はケツシ将軍&補佐ザルプワに妃であるキャロルをエジプトから拉致させて、成功と聞くと父母の留守中に着飾って出迎えに行ったり(そして、キャロルからまた激しく拒絶され、怨敵従兄弟の手に落ちて大怪我する羽目になって今に至るわけですが)。
あの「結婚」はヒッタイトではどういう扱いになっているのだろうと首を傾げてしまう。もしあの結婚が有効なら、タミュリスは第二夫人(というのか、第二の王太子妃というのかわからないけど)になってしまうのでは?
しかし、そういうことは見事なまでに綺麗サッパリ誰も言わない。イズミル王子自身も「わたくしの妃は・・・わたくしの意思でえらびまする!父上はわたくしの心をご存知のはず!」と啖呵きってますが、「わたくしの妃は既に選んでおります。妃はナイルの姫ただ1人!」とは言わないのがとても不思議。せっかくドリーム叶ったのに、忘れたのかい?
ヒッタイト王もトラキアの銅に目が眩んだのかダンマリ。いやもしや床入り前に逃げられてしまったというのが両親・臣下にまで知れ渡っていて、おいたわしくて結婚自体が無かったことにされているとかじゃないのかなあ・・・とか相変わらず摩訶不思議な世界が繰り広げられている今月王家なのでした。
王子が快復したと聞かされて結婚式だとはしゃいでいるタミュリスが、今月はけっこう綺麗に描かれていたせいか、王子に呼びかけても追いすがっても一顧だにされず置き去りにされる泣き顔がとても哀れで、さすがに可哀想だったなぁ。ミラも王妃と柱の隙間にシミのような小ささで顔を見せていましたが、乳母を押しのけてでもついていこうと出来ないところが彼女の彼女たるゆえん。でも今くらい頑張ってみてもいいのでは。
とかいいつつ、これからの展開で、トラキアの王子がやってきて妹の婚約者が逃げたと聞かされ、それならいっそタミュリスをヒッタイト王の妻にという話を出したりしたら面白いのにな〜とか鬼のようなことも考えてしまうのです。
ヒッタイトの王位継承法(「テリピヌシュ告示」)では、「王は第一王子がなるべし。第一王子なくば、第二王子がなるべし。男子の王位継承者なくば、第一王女と結婚した男子が王になるべし」と定められているので、タミュリスから第二王子もしくは第二王女が生まれれば、第一王子イズミルの地位を揺るがす事態にも繋がりかねない。まぁ、そこにはヒッタイト独特の女性最高権力者タワナンナシュ(イズミルの母)が介入してぐちゃぐちゃするんだろうなと言う気がするが。ああそこにウリアとかジダンタシュがもう一度噛んでもいいし、全然描かれないヒッタイト王の諮問機関バンクシュを巻き込んでも、いいですわ。王家とは全然別話になっちゃうけど(どっちかというと天河ぽいかしら)。
でも、一番のネックは、この展開に(メンフィスとラブラブの)キャロルが絡まねばならない必然性が弱いことかしらん。絡ませても「卑怯者ーーーイヤーー」で喚かれて終わりって哀れすぎるしなぁ。どうすりゃいいんでしょうね。

さて、2ヶ月後の驚愕展開に供えてじっくり頭を冷やしておきまする。