豆の山

クールなハゲと美女愛好家。家事育児パートに疲弊しつつ時の過ぎゆくままなる日々雑感をだらだら書いています。ナナメな王家ファン。

再演王家の紋章 雑感まとめ(1)

困りました。
ゴールデンウィークが終わり、東京公演も終わり、いつもの日常が戻ってきたというのに、ずーっと頭の中で王家ミュージカルの音楽が鳴っています。ソロナンバーだけでなく、アンサンブルの歌まで途切れなく。今日も仕事中電卓叩きながら鼻歌出そうになり深呼吸咳払い。今なら歌詞書き起こしできるかもしれない、なんてことはない。スタジオ録音版CD是非出してほ…欲しい!脳内大阪遠征計画立て始めたり、自分がどんどんダメな人間になっていくのがわかる。なんと呪われしわが身よ。。。

『王家の紋章』5/7(日)帝劇千穐楽カーテンコール

だってですね、私もこの東京千穐楽を見てきたのですが、キャスト挨拶で大阪来るよね?の流れキッツーーーーナイルの激流並み。

しばらく頭を冷やします。



今回の再演版で、私が最も目を見張ったのは、メンフィス(浦井さん)のキャラクターが生き生きと鮮やかに立ち上がってきたことでした。初演で一番キャラがぼやけて掴みきれなかったと感じたメンフィスでしたが、今回は納得のメンフィスでした。
私はそこまで熱烈なメンフィスファンではないと自分では思っているのですが(笑)、今回の再演版ミュージカルを見て、改めてメンフィスを語りたくなるくらい楽しかったのは確か。もちろん、他のキャラも語れますが(ルカとか!)、初演メンフィスにガタガタ言ってしまった分、期待以上で嬉しかったのですね。
再演で幾つかのシーンが整理されて話がすっきりし、幸いにも舞台にかなり近い席で2回も見られたので、キャストの表情や細かい芝居まで楽しめたことが大きかったと思います。私は近眼のくせに、普段面倒くさくてオペラグラスを使わないのですが、半径2メートル圏内の目の前にメンフィスが立った時は、ファラオのあまりの目力に畏れ多くて目を逸らしてしまった。赤面侍女かっつーの。キャー。
煌びやかな衣装をまとい、女のように美しいと評される風貌のメンフィスは近くで改めてみると、腕も脚も胴回りも堂々たる男性。そこが、マンガの絵と違ってリアルで好ましいと、私は感じます。美女の男装ではダメなのですよ、メンフィスは!
浦井メンフィスの歌も、今回はいくつかの曲がキーを下げていたこともあり、王として喋るセリフは低く低くと意識しているようでした(力を込めすぎたのか、途中少し苦しげに聞こえる時がありましたが)。


メンフィスがキャロルに「お前は何を言っているんだ?(お前の言うことはわからぬ)」と言うシーンが3回あります。
同じセリフなのに、意味も、彼の心情もがらりと変わっていくのを目の当たりにして、毎度楽しかったなあ。


1度目が墓泥棒を自ら処刑した後、現代人のキャロルから面と向かって激しく糾弾されて、理解できないという風に。
2度目は現代へ帰りたい、ライアン兄さんに会いたいと心細さで泣きじゃくるキャロルを前に、苛立ち気味に声を荒げて。
3度目はヒッタイト戦のさ中、潜入した砦の中でやっと会えたキャロルがメンフィスを逃がそうとして「私も戦うわ」と言い出したことに動揺を隠せず、叫ぶように。

1度目は、ああ彼はキャロルの現代的価値観が全く理解できないのだ、と思わせる古代の王の乾いた声。彼が好き好んで人を斬ったわけでないことは、処刑後、剣を従者に渡しながら、手についた血を振リ落そうとする仕草からも明白です。反面、いい運動だったと余裕ありげに肩を回してみたり。メンフィスは「決められた裁きだ」とさらりと流すものの、キャロルになおも糾弾されて、「こやつ、わたしに意見するか!」と大激怒する落差が余計に怖い。
2度目は、悲しみ混乱しているキャロルの嘆きに、自分の心までかき乱されることに驚き、そんな自分に苛立っている声音。苛立ちはつまり、恋の始まり。「泣くな」という命令もどこか懇願じみて聞こえてくる。
3度目は、キャロルの命を惜しみ、失われることを心底怖れている実に人間臭い若者の叫び。ウナスや兵士に押しとどめられたメンフィスの手が、無念さでぎゅっと握られていくところがとても好き。
この後、痛恨の極みのメンフィスが、お前を失ったら私も生きていない、と歌うところが初演時からどうも私には受け入れがたかったのですが、再演2度目の鑑賞でやっとわかりました。ああこの曲のテーマは最後の「共に帰ろう」なのだと。だからこそ、共に生きて、いつまでもお前の傍にいようと、ラストでキャロルに誓うのですよね。


30年王家ファンをしておりますが、そろそろ愛も擦り切れかけた今頃になって、こんな「おお!」という気づきを味わえて嬉しかったのでした。忘れないうちに書いておきたいと思ってつい夜更かししてしまいました。明日も仕事だ。もう寝よう。